10月17日付 NIH(米国国立衛生研究所)のサイトで、
「NIH傘下の米国国立アレルギー感染症研究所(NIAID)の研究者らが、めまいや立ちくらみ、皮膚の紅潮やかゆみ、胃腸障害、慢性疼痛、骨・関節の問題を含む複数の不快で治療困難な症状を特徴とする症候群の遺伝的な説明を同定した」
と発表されました。
この発表によると、
・めまいや立ちくらみ、皮膚の紅潮やかゆみ、胃腸障害、慢性疼痛、骨・関節の問題を含む多様愁訴は血中の基礎トリプターゼ値高値に関連することが報告されていた
※トリプターゼ:免疫応答の一環として産生されるタンパク質
・αトリプターゼをコードする遺伝子(TPSAB1)の多重コピーが、トリプターゼ値上昇に寄与する
・遺伝子コピー数が多いほど、症状が強い(多い)
ということがわかったそうです。
---------------------
NIHの記事はこちら: Monday, October 17, 2016
NIH scientists uncover genetic explanation for frustrating syndrome
Previously unexplained symptoms found associated with multiple copies of a single gene.
https://www.nih.gov/news-events/news-releases/nih-scientists-uncover-genetic-explanation-frustrating-syndrome
Nature Geneticsの論文はこちら: Nature Genetics (2016) doi:10.1038/ng.3696 17 October 2016
Elevated basal serum tryptase identifies a multisystem disorder associated with increased TPSAB1 copy number
血清基礎トリプターゼ値の上昇がTPSAB1のコピー数増加に関連した多臓器障害を識別する
http://www.nature.com/ng/journal/vaop/ncurrent/full/ng.3696.html
---------------------
NIHのサイトおよび、Nature Genetics掲載の元論文の概要の中では、この研究と筋痛性能脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)との関連は明確には述べられていないようです。
が、研究機関を有するアメリカのME/CFS患者団体「Solve ME/CFS Initiative」の10月19日付記事では、「米国国立アレルギー感染症研究所(NIAID)の科学者が、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の多くの症状と関連する潜在的な遺伝子異常を同定した」として、大きくこの研究を取り上げています。
特に、POTS(体位性起立性頻拍症候群)と血中トリプターゼ値の関連に注目しているようです。
"Most notably for patients with ME/CFS, patients and family members with postural orothostatic tachycardia syndrome (POTS) also had high tryptase levels."
(ME/CFS患者が注目すべき点として、POTS(体位性起立性頻拍症候群)の患者やその家族もまた、高血清トリプターゼ値を有するのである)
Solve ME/CFS Initiativeの記事はこちら
https://www.nih.gov/news-events/news-releases/nih-scientists-uncover-genetic-explanation-frustrating-syndrome
---------------------
記事中には
「αトリプターゼをブロックする方法を考案することができるならば、トリプターゼ値上昇に関連する症状の一部またはすべてを軽減することができるかもしれない。」
とあります。
トリプターゼとは血液中のタンパク質の一種で、アナフィラキシー(急性の全身性かつ重度なI型アレルギー反応の一つ)をはじめとしたアレルギー反応と関連があるそうです。
論文中では筋痛性能脊髄炎/慢性疲労症候群との関与については明記されていませんでしたが、過敏性腸症候群(IBS)は、ME/CFSとの併発が多いことで知られる疾患です。
また、その他症状もME/CFS患者にも非常に多く見られる症状ばかりです。
今後の研究動向に注目したいと思います。