今日からゴールデンウィーク、9連休という人も多いようだ


新入社員はもちろん、新年度忙しいサラリーマンのみなさんとっては、やっと一息できる大型連休
心と体をしっかり休めて欲しい


さて、サラリーマンと会社の関係は徐々に変わりつつあり、かつては当たり前のように行われていたパワハラやサービス残業などは減って来ている


しかしながら、サラリーマンと会社は、雇われる側と雇う側という関係にあり、日本のサラリーマンの立場は弱い


仕事中に労働事故でケガをする人や、仕事が原因で過労死、過労自殺を追い込まれる人は残念なことに、後を絶たない


平成25年の政府労災保険の受給者は60万人を超え、
特にメンタル疾患が原因の労災は
H25年度請求件数で1409件、認定は436件と増加している


それだけサラリーマンが仕事をするうえで、身体の危険だけではなく、心も危険に晒されているということだ


そこで政府は、サラリーマンが安心して仕事に取り組めるように
「企業は労働者の生命および健康等を危険から保護するよう配慮するべき」という安全配慮義務を定めている


これを守らない企業はブラックと呼んでいいだろう


安全配慮義務については業務中の事故・災害などの身体的な安全から
うつ病等の心身の健康へとその内容は拡大してきている


サラリーマンとして働くからには、安全配慮義務について理解しておいた方がいい


安全配慮義務については判例によって形成されてきた概念だが
H20年3月に労働契約法で明文化された


安全配慮義務については概ね次のとおり分類できる


①物理的な危険から労働者を守る義務

作業施設や設備、機械器具などの物理的な危険から守る

H2年 熊本地裁の判例

「工事現場で建設機械が横転し下敷きとなって負傷した事案」で企業の安全配慮義務違反を認めた


②業務に起因する疾病から労働者を守る義務

作業環境や作業負担に起因して疾病を発症することを予見する

H1 横浜地裁の判例

「保育園の保母が頸肩腕障害になったことに対して疲労の蓄積にて健康障害を発症する蓋然性が高いが予見しなかった」として安全配慮義務違反を認めた


③長時間・過重労働から労働者を守る義務

過重労働に起因して脳・心疾患を発症し死亡に至ったり、うつ病を発症して自殺した場合には安全配慮義務違反が問われる

H12 最高裁判例(電通事件)

「過重業務に起因してうつ病を発症し自殺した事件」で過労や心理的負担が過度に蓄積して心身の健康障害を損なうことを防止する義務を負うことを明らかにした判例


④職場ハラスメント等から労働者を守る義務

パワーハラスメントやいじめなどがあることを認識していた、あるいは認識可能であったにもかかわらず防止措置を取らない場合は、該当個人が不法行為責任を負うだけではなく企業も安全配慮義務違反(職場環境配慮義務違反)となる

H15 東京高裁の判例(川崎市水道局事件)
「職員が上司らのいじめをうけて自殺した」事件で職場環境の改善を図らなかったため自殺に至ったとして安全配慮義務違反を認めた


⑤メンタルヘルスに対する安全配慮義務

H24.最高裁判例(日本ヒューレット・パッカード事件)

「従業員が約3年間にわたり同僚から嫌がらせを受け会社に調査を依頼していたが被害妄想などとして取り上げられず…その後精神的な不調を理由として欠勤した従業員を解雇した事件」では精神的な不調を抱える労働者に対する安全配慮義務違反を認めた
これは、精神的な不調により欠勤を継続する労働者に対して精神科医による健康診断を実施するなどの対応をせずに行った懲戒処分を無効とした事例として大きな意義がある

H26.最高裁判決(東芝事件)

「うつ病で休職期間が満了後に解雇された事件」では労働者が精神的な健康情報を会社に申告していなかったとしても過失相殺することはできないとした
精神的健康に関わる情報は本人から申告しにくいため、申告がなくとも労働環境に十分な注意を図るべきだとした意味のある判例だ


以上のように5つの視点から、会社が安全配慮義務を果たしているか、休みの日に会社を評価してみるといい


一つでも安全配慮義務が守られてなければ、ブラック企業という評価だ


うちの会社おかしいんじゃない!?
と思うことがあったら、自分のため、会社の生産性のため、世の中のため、ブラック要素は排除した方がいい


上司個人の問題であれば人事部門や社内通報窓口へ、会社全体の問題であれば労働基準監督署や弁護士へ、それでもダメならばマスコミへ訴える


くれぐれも心身の健康を害する前に、
自分がすべきこと、自分が主張すべきこと、自分にできることやっておいた方がいい…


仕事が原因で、心身の病気となったり、命を落としたりするべきではない


判例と損害賠償額
https://kaisya-hoken.com/safe-consideration-breach-precedent-129

労災事故民事賠償額
http://mj-p.jp/news/82