最近、「カフェインを摂りたくないからほうじ茶を飲んでいる」と耳にすることが多く、「!?」と思いつつも、その場の雰囲気を壊すのもアレなので、明確なコメントは控えていました。
でも……誤解しているのを知っていてスルーするのもどうかなあと、
たまにはハーバリスト・植物療法リサーチャーっぽい発言をしてみようかと思います^^
●チャのカフェイン量はみんな一緒
長文を読むのが苦手な方もいると思うので、まず、簡単に結論からお伝えします。
ほうじ茶の焙煎工程の過熱によってカフェインが分解されたり減ったりすることはありません。(※)
つまり、茶葉そのものに含まれるカフェイン量は、緑茶もほうじ茶も同じです。
そもそも、緑茶もほうじ茶も紅茶も烏龍茶も、製造工程が異なるだけで、
(もちろんそれぞれに適した品種を用いてはいるものの)
原料の茶葉の植物学的な分類は同じ「チャ(Camellia sinensis)」です。
また、カフェインが過熱によって減らないことを示す例としてはコーヒー豆も同様です。
コーヒーの生豆に含まれるカフェインは1.2〜3%で、焙煎豆でも変わりません。
実際のチャ浸出液の商品(いわゆるペットボトルのお茶)のカフェイン含有量の例を見ても、
<150mlあたり>
・ほうじ茶:30mg
・ウーロン茶:30mg
・緑茶(煎茶):30mg
・緑茶(玉露);180mg
・紅茶:50〜80mg
のように、ほうじ茶が特段に低カフェインだということはありません。
では、なぜ、同じチャを原料にした飲料でも、カフェインの含有量が異なるのか?
それは、1杯分に使用する茶葉の量と、茶葉の形状、抽出する湯の温度や抽出時間が異なるためです。
茶葉の形状については、表面面積と抽出量は比例するので、細かい程にカフェインは抽出されやすくなります。
また、同じ「スプーン1杯」でも、細かい茶葉ならば、茶葉の使用量も多くなります。
煎茶と玉露のカフェイン量の違いは、この形状と量による変化がよく表れています。
また、カフェインは高温の湯で抽出することで抽出率が上がります。
紅茶のように沸騰した直後の熱湯を使えばカフェインはよく抽出され、
日本茶のように少しぬるめの湯で抽出すれば少し抽出率は下がります。
本来、カフェインは低温の水には解けやすい成分ではなく、水出しにすることで、カフェインの抽出量はかなり抑えられます。
●カフェインのはたらき
眠れなくなるだとか、痩せるだとか言われていますが、改めてここでカフェインを摂ると、心身にどんな変化が起こる可能性があるのかを確認してみましょう。
化学構造を見るとカフェイン(C8H10N4O2)は非アミノ酸性の窒素分子(N)を持つ、アルカロイドと呼ばれる化合物の一種です。
アルカロイドは中枢神経系に影響を与えるとされており、カフェインの薬理作用としては、
・中枢神経系の興奮作用
・筋・骨格系の収縮作用
・心筋の収縮増加作用
・利尿作用
・胃液分泌促進作用
・脳血管収縮作用
・代謝亢進作用
などが挙げられます。
これらの薬理作用による症状としては、頭がさえて眠れなくなる、心拍数が上がる、身体の疲れが軽くなるなどが考えられます。眠気覚ましや疲労の軽減など、上手く使うことで、プラスに働く成分でもあり、実際に倦怠感や偏頭痛などを改善する医薬品としても用いられています。
●カフェインを控えめにしたいなら
「カフェインを控えたい」という場合、その理由や控えたい度合いによって適切な対処方法は異なるでしょう。
たとえば、「緑茶を摂ると胃に不快感があるから(それはカフェインだと思うので)、ほうじ茶を飲んでいる」という方がいました。
おそらく、その方が感じている不快感の原因はカフェインではなさそうに思われますが、緑茶をほうじ茶に替えることでその不調が改善されているのであればそれでよいのでしょう。(ただ、その不快感の本当の原因が何かを知っておくことはよいことだと思います)
しかし、カフェインの薬理作用(覚醒、興奮、利尿etc.)を抑えたいという理由なのであれば、緑茶や紅茶やコーヒーの代わりにほうじ茶を飲み続けていても、あまり改善は期待できないでしょう。
実際、私がハーブ専門店でハーブティーのカウンセリング販売をしていた時にも、夜、眠れない、寝つきが悪い、途中で目が覚めてしまうという、いわゆる「睡眠障害」の方が毎日のように来店され、ご年配の方や、壮年のビジネスマンの方が特に目立ちました。
普段飲んでいるものを伺ってみると、「コーヒーは飲まないようにして、日本茶を飲んでいる」という方が多くいらっしゃいました。
カフェインを長期間摂り続けていることで、何かしらの不調を感じているなら、その影響がどれほどなのかを知るためにも、一旦完全に摂取をすることを止めて、体内のカフェインをクリアにしてみることをおすすめします。それでもなにも改善されないのであれば、原因は別にあります。
また、一度ゼロの状態になることで、自分のカフェインの許容量を知ることができ、適切な摂り方も見つけられるでしょう。
私自身も、コーヒーや紅茶、日本茶が大好きで、学生時代にはコーヒーショップでアルバイトをしていたこともあり、毎日大量のカフェインを無作為に摂っていました。その頃はずっと手足の冷えと頭痛に悩まされていたのですが、ある時、もしや?と思いカフェインの摂取を止めてみて、それらの症状がカフェインの影響によるものだったことに気付きました。以来、コーヒーを無意識の習慣で飲み続けることは止め、身体が飲みたいと感じた時に楽しむようにしています。
カフェイン中止期間には、利尿作用がありデトックス効果の高いハーブティーがおすすめです。
就寝前にはリラックスを促すハーブを選んでみてくださいね。
Enjoy your time with herbs!
(※液体中のカフェインは180度を超えると昇華を始める性質がありますが、これが誤解され、かつては、カフェインは加熱によって減少するとか、焙煎によって苦味成分に変わるといった説があったようですが、現在ではそれは誤りであり、化合物そのものとしてのカフェインは熱に対して安定で、加熱によって分解・変性されないとされています。実際、この古い説を用いて「ほうじ茶は低カフェイン」と解説しているサイトを複数見かけましたのでご注意ください)
