[東京 29日 ロイター] 米金融安定化法案をめぐる政府と議会の協議が大筋合意したことを受けて、29日の東京市場は、株高/債券安、ドル高で反応した。前週末には同法案の成立は危ういとの観測が出ていただけにいったんポジションが巻き戻された。
ただ、債権買い取り価格など同対策の実効性に関しては慎重論が根強く、米金融不安解消には程遠いとして追随した動きはみられなかった。逆に、米株価指数先物、日経平均はともに下げに転じた。ファンダメンタルズ面をみても今週、日米で発表される指標は弱い内容が予想されており、きっかけがつかめない状況だ
<相次ぐ重要指標に身構える>
株式市場では日経平均が午後に入り下落している。
朝方は、米金融安定化法案の成立のめどがたったことや、為替がドル高/円安方向に振れたことで買いが優勢になる場面もあった。ただ、「先物主導で戻したが、現物の買いは少なく1万2000円近辺では上値が重い。米金融安定化法案の合意で安心感が出たものの、次の焦点は低調な景気や企業業績に移ることになり、期待感が高まりにくい」(大手証券エクイティ部)との声が出ていた。
東洋証券、情報部ストラテジストの檜和田浩昭氏は「米金融安定化法案が大筋合意されたが、いずれ合意に至ることは織り込まれていたので株価へのプラス効果も限定的だ」とし、「個人投資家は、海運株や商社株など保有者の多いセクターが軟調になっていることもあり動けない。株価純資産倍率(PBR)や配当利回りなどからみて日本株の割高感はなくなっているが世界的な景気への不安が強く上値が重くなっている」と話す。
米国では30日に7月S&Pケース・シラー米住宅価格指数、1日に9月米ISM製造業景気指数、3日に9月米雇用統計。国内では30日に8月鉱工業生産速報、1日に9月日銀短観と経済指標が目白押しとなる。「景気減速下、いずれも厳しい数字が予想されている。コール市場が麻痺する一方、マクロでの株価下支え要因が見当たらない。市場は米金融安定化策の効果を待つしかない状況だ」(立花証券執行役員の平野憲一氏)という。
投資家の不安心理を映すシカゴ・オプション取引所(CBOE)ボラティリティー(VIX)指数は26日、5.8%上昇し、34.74と依然高止まりしている。9月15日に30%台乗せしてから半月が経過したが、金融危機の緊張状態が続いていることを示している。「金融安定化法案が成立しても不良債権の買い取り価格や買い取った後の処分方法など不透明な部分も多い。そもそもモノ作りから金融に傾斜した米国が金融での強みを失い今後どうなるのか、もやもやしたムードが残る」(東海東京証券マーケットアナリストの鈴木誠一氏)との指摘も出ている。
<円債、急落後に出直り>
円債は続落。米金融安定化法案の大筋合意を受けて米金融問題が最悪期を脱するとの見方から、質への逃避で構築された株売り/債券買いの巻き戻し加速。海外勢がロングポジションを閉じる動きを加わり、国債先物12月限は一時61銭安の136円55銭と8月6日以来の水準に急落。10年最長期国債利回り(長期金利)は4bp高い1.500%と9月22日以来の水準に上昇した。「薄商いの中で2日の10年債入札に備えた調整売りが入りやすかった」(外資系証券)ことも上値を重くした。
もっとも、今週は日米で重要指標の発表が相次ぐため、市場の関心がファンダメンタルズに向きやすく、売り一巡後は株価が下落したこともあり下げ止まった。「10年・1.5%水準が押し目買い水準として意識された」という。
債券市場では米金融安定化法案が成立しても金融不安の根本的な解決にならないとして冷ややかな見方がある。買取価格に不透明さが残っていることに加えて、総額7000億ドルが段階的に注入されることになり、一定の時間を要することで実効性に懐疑的な声もくすぶる。
ある国内証券のストラテジストは、FRBによる一段の金融緩和や銀行への公的資本注入の枠組み構築がセットで示されないとマーケットに評価されない、と指摘する。さらに需給面では「国内勢は9月期末に向けて益出しを優先させてきた結果、十分買えていないため、10月以降の債券運用を踏まえると、一方的に現物を売り込めない。押し目局面で買いのタイミングを探っている」とみている。
<ドル買いは午前で一巡>
為替市場でも、ドル買いは続かなかった。
早朝こそ、ドル/円は底堅い動きとなり、106.50円からストップロスを付けきょうの安値から1円超上昇、一時106.97円を付けた。トレーダーらによると、邦銀が米銀へ出資するためのドル調達のうわさも後押ししたという。
ただ、106.90円台では、輸出勢やファンド勢のドル売りに押され、下落に転じた。金融市場に対する根強い先行き懸念から、安定化法案の成立期待でのドル買いは、午前中に一巡したとみられている。
市場では「法案が成立しても、ファンダメンタルズがどこまで改善するのか。金融不安はヤマを越したが、予断を許す状況ではない」(証券)という。国内金融機関のある関係者も、最近発表される米経済指標は内容が弱いとし、「ドルを積極的に買いづらい」と指摘する。3日発表予定の9月米雇用統計などに関心が向けられ、上値が重くなるとみられている。
(ロイター日本語ニュース 橋本 浩記者 編集:宮崎 亜巳)