激動の昭和史 沖縄決戦(1971年)

 

ものすごいものを観てしまった、目撃してしまったといった感じ。

 

この映画は1971年の作品で、戦後26年という時期に作られたもの。

そして、沖縄返還が1972年だから、まだアメリカがこの地を統治していた時代。

とはいえ、返還されることは1969年に決定されていたから、それを見越しての映画制作だったのかもしれない。

 

監督は岡本喜八で脚本は新藤兼人。

キャストも豪華で、小林桂樹、丹波哲郎、仲代達也などなど…。

登場人物が多いので、ちょい役で有名な俳優さんが出ていたりもしている。

 

 

以下、全般的なネタバレを含んだ感想になりますが、劇中、ずっと地獄。

最後まで全く救われないし、絶望的な気持ちになること間違いなし。

 

でも、これが戦時中の沖縄の現実であったし、実際はもっと悲惨だったんだと想像できる。

この映画は沖縄の特定の個人を追っているのではなく、

あの時代の沖縄全体を映し出しているのだと思う。

 

異常にテンポが良く、矢継ぎ早にあらゆる人のストーリーが展開されるけれど、

映画の中にのめり込んでしまうと、まるでドキュメンタリーを観ているかのような気持ちになる。

 

本土から来た軍人も、沖縄県民として徴兵された兵士も、

上級官僚としてこの地を統治している人も、

高い志を持って人々の命を救うお医者さんも看護師さんも、

お母さんも、子供も、老人も、赤ちゃんさえも、

どんな立場とか関係なく、この地にいたすべての人が地獄を味あわなければならなかった。

第二次世界大戦時の沖縄は、そんな場所だったってことが猛烈に伝わってきた。

 

沖縄の戦いのすさまじさをアメリカ目線から見たハクソーリッジ(メルギブソン監督)や、

戦後の沖縄を書いた2018年の直木賞の宝島とかはもうド傑作で、

一生自分の中に刻まれる何かを残してくれた作品だけど、

この沖縄決戦も、まさにそんな作品の一つになったと思う。

 

とんでもない人数の沖縄県民が命を落とし(劇中では3人に1人と言われているけれど現代の通説では4人に1人)、

あの細長い沖縄のあちこちだけにはとどまらず、海を越えて離島ですらも直視しがたい悲劇が起こり、

あらゆるところで人の命が消えていった。

 

この映画を観るまで、沖縄の人々が集団自決などで自分の命を絶ったのは、

おおまかに言ってしまえば、軍に強制されたからだと思っていた。

 

そんな側面ももちろんあったと思うけれど、

実際はそんな単純なことではなかったんじゃないかと思った。

とにかく、どこを見ても目に映るすべてが地獄なのだから。

兵士は熾烈でむごたらしい戦いを強いられ、

何の罪もない赤ちゃんや子供までも、無残に犠牲になる世界。

その光景は神も仏もなく、完全に人間の心の限界を超えている。

 

劇中で、とある父親が斧で子供の首を掻っ切って、

その後自分の首にも斧をあてて自決するというシーンがあった。

もう、現代人からすれば理解しがたいシーン。

どう見ても切れ味が良くない斧を、

自分の一番大切な子供の首にあてて殺すのだから。

どれだけの痛みと恐怖があるかと考えれば絶対にしない行動だと思う。

だけど、劇中だけではなく、おそらく当時の沖縄の人たちはそれをした。

 

そうせざるを得ないほどの現実が目の前にあって、

希望とか絶望とか感じる前に、それぞれの人の心が壊れて、発狂していたんじゃないかと。

生きることが、死ぬよりも苦しいと多くの人たちが思うような現実があったのだと思う。

 

大本営が沖縄を捨て石にし、こんな大きな悲劇をこの地にもたらしてしまって、

後世に本土に生きる一人として、とても申し訳ない気持ちになった。

 

監督はじめ、この映画の制作陣は、

戦争を体験してきた者として、戦争の惨劇を多くの人に伝えようと、大きな使命感を持って作ったように思う。

その目的は、50年後の現代にもしっかり達成されている。

 

正直、あまりにも悲惨すぎて二度と観たくない映画ではある。

だけど、原一男監督のゆきゆきて神軍と並んで、この沖縄決戦も、

日本人として一度は絶対観るべき映画だと思った。

 

 

個人的点数 80点

おススメ度 100点(絶対観た方がいい!)