2011年冬、僕は公務員になろうと思った。

 大学をたいして勉強もせず卒業して、親の勧めもあり、ある運送会社に入社しました。とくにやりたい仕事ではありませんでしたが、やりたいこともなかったので、とにかく早く仕事を覚えるために一生懸命働きました。初めての勤務先は東京にある支店でした。仕事はとても大変でしたが、周りの助けもありなんとか仕事をこなしていました。しかしどうしてもその仕事にやりがいを見いだせなかった僕は、しだいに自分のやりたいことは何か考えるようになりました。野球が好きだった僕は、「そうだグローブを作ろう」と思い、グローブを作っている会社に電話したり、オムライスが好きだった僕は「そうだ料理人になろう」と思いいろいろな洋食店を食べに行ったりしました。そして金沢まであるレストランまで面接にも行きました。もう準備は完璧だ。後は辞めるだけ。「よし今日支店長に言おう」と思い会社へ向かった。入社して3年目に入ったところでした。仕事はしんどかったが、みんなに可愛がって頂いたので、申し訳ない気持ちもありましたが、私の気持ちは変わりませんでした。出社して、ホーム下のパレット(荷物を乗せる板)をフォークリフトに乗ってかたずけていたところ、突然私が入社した時の支店長が現れました。「宮本、今日はお前のために千葉から来た。千葉に呼んでやるからもう少しやってみないか」そういわれた僕は何故か涙が出てきて、「分かりました。」と二つ返事で答えました。今まで誰に言われても考えを曲げなかった僕が、何故かその時はすぐに答えがでました。その時頭に浮かんだのが、「人生意気に感ず」という言葉でした。あるマンガで見た言葉だったのですが、意味は「人は利害や名誉のために行動するのではなく、相手の心意気に感動して動くものだ」という意味なのですが、その時まさにそう思いました。それからさらに3年私はその会社で働くことになりました。