多忙な瀬木先生から5回めの寄稿、遅くなりましたが掲載します。
バックダンサー 第5回 瀬木 純
深川恵子は、一見ハーフといつても通る、日本テレビ元アナウンサーの魚住リエ似の美貌と可愛らしさに譲治は完全に虜になっていた。しかし、まるで「仲良しクラブのお遊戯会」みたいなダンスショーは、振付師やダンサーにとっては愉しいのかもかも知れないが、もし贔屓の娘がいなければ、わざわざチケットを買ってまで見にゆくほどの価値はない。
人間関係しか興味のない体育会系の若き男女、それに堅気のサラリーマンには見えない怪しげな40代・50代の男や女、立ったままお遊戯会に声援を送っている知性が全く感じられない、バカっぽい体育系の姿を譲治は冷めた眼差しで、観察していた。
ネットには、ダンサーと呼ばれている人たちに対する、次のような批判が載せられていた。「だらしないつきあいをして、それをさも面白いことのように話す人って、売れてるダンサーでもかなりいます。そういう人だからこそ売れるというか。低俗な人には人気があるんです。そういう面ではその歌手もダンサーもプロとは思えませんでした。
プロとして誇りを持っている方もいればそうでない方もやはりいると思うのです。公私混同しているのがステージに出ている感じで、プロとして誇りを持ってやっている方もいればそうでない方もやはりいると思うのです。
ステージにおいて、お客にそのように思わせたのでしたら、それはよろしくないですね。プロと言うなら自分のとった行動をファンはどう思うかと考えるべきではないでしょうか。
公私混同しているのがステージに出ている感じで「仲良しグループのお遊戯会」みたいでした。プロと言うなら自分のとった行動をファンはどう思うかと考えるべきではないでしょうか。
深川恵子からライブへの誘いはしばらくなかった。
春になるとプランタン銀座でスイーツを食べようという誘いが譲治に届いた。店は混雑しており、喫茶店の静かな雰囲気はなく、風情のない単なるレストランといった感じで、ゆっくり会話を楽しむには、騒々し過ぎた。しかも、スイーツだけは高価であった。もともとスイーツに興味が無い譲治にとっては、愉しいデートではなかったが、帰りに5千円チップを渡した。
その後、何回か有楽町界隈のスイーツ店に呼び出されたが、その真意や目的を譲治は計りかねていた。譲治の話は、面白いと若い子からも評判であったが、恵子は自分の身の上話をするでもなく、譲治の話に興味を抱いているようにも見えなかったし、イケメンでもない歳の離れた男とデートが、ただスイーツを食べることだけが目的とは思えなかった。譲治から渡される5千円のチップが目的であったのかも知れない。
恵子がまだ銀座のキャバレーで踊り子をしていた頃、食事に誘ったことがあった。しかし、明らかに同棲しているためと思われるが、気のない返事で軽くあしらわれていたので、その後、譲治の方から誘うことはなかった。
恵子からの誘いの目的を譲治は測りかねていた。何回かスイーツの誘いの後、「何も理由を聞かずにだまって2百万貸してくれ」というメールが届いた。譲治はいやな予感がした。恵子が銀座のキャバレーを辞めた理由が腎臓を悪くしたためと他のホステスから聞いていたからである。
臓器移植のためということであれば、助けてやらざるを得ないのではないかと、悩んだ。
譲治は、担保もない女に金を貸して、返してもらえなかった経験があることをメールした。「でしょうね」というは断られるのは、はなからわかっていたと言わんばかりの返事が返ってきた。
