<備忘録>

  • 「もしトラ」が現実味を帯びてきている中、様々なノイズに惑わされることなく、ファクトベースにて「トランプ2.0」の政策における“射程”を見定める必要がある。
  • 政治や選挙において最も重要となる“人々と繋がる”ことにおいて、当時のヒラリー陣営は軽視してしまったのではないか。
  • トランプ1.0では白人ブルーカラー層を取り込むことによって勝利を収め、その傾向は2024年大統領選も継続している。一方で、それにより共和党内部でも所謂伝統的な保守主義との間で矛盾が起きており、決して一枚岩ではない。
  • 作用が強い薬がそうであるように、この薬(白人ブルーカラー層の取り込み)も副作用が大きい可能性を認識しなければならない。
  • トランプ氏の発想は、異物を外に吐き出すか、もしくはそれが中に入ってくることを防ぐことによって、本来のアメリカを取り戻すことが根底にあり、現在では対中政策がそれに該当する。
  • トランプ2.0であれ、バイデン2.0であれ、日本にとっては日米同盟以上のものはない。米国以外の選択肢がないことをネガティブに捉えるのではなく、「再選択」することが求められている。
  • いままで以上に米国に関する情報を入手、分析する能力を高めていく必要がある。

<考察>

  • 米国大統領選挙が近づいているが、トランプ、バイデンどちらが勝っても、自社・自産業に大きな影響が及ぼされる可能性がある。トランプは「10%一律関税」や「中国からの輸入品に60%関税をかける」等のパフォーマンスが報道されているが、それらを文字通りに受け止めるのではなく、真摯に受け止めた上で、本質を見極めそれに応じた対応策の検討が必要となる。
  • 特にトランプ2.0ではねじれ議会になる可能性もあり、議会の承認を得ずに大統領権限(大統領令)で何が、どこまで出来るのかの“射程”を見定めることが重要。
  • トランプの発想の根底は「アメリカ・ファースト」であるが、それは自国の異物を排除したり、それが入ってくることを防ぐことである。現在では、対中強硬がそれにあたる。
  • 短期的にはトランプ人気はまだまだ健在であるが、中期的には伝統的な保守主義と新たなトランプ支持者(主に、オバマ政権以降で不満がつのってきていた白人ブルーカラー層)との間の矛盾が露呈していく可能性がある。
  • 日本や自業界、自社にとって、足元そしてこれからの米国の本質的な構造変化は何か?を分析・シナリオを考え、そのシナリオに応じた対応策を検討していく必要がある。

=========[引用開始](p9)=========

しかし、一方で、「トランプ・ショック」に過剰に反応してしまうのも危険だろう。聞こえてくるノイズに惑わされて、変化を過剰に読み取ってしまう危険性もあるし、構造的な変化を見落としてしまう可能性もある。

(中略)

われわれはこの規格外の大統領を分析する言葉を欠くなかで、この政権の射程を見定めていかなければならない。

===========[引用終了]===========

 

=========[引用開始](p10)=========

これは世論調査が外したというよりかは、その数字を読む側の問題だったともいえる。

(中略)

最終的には有権者がトランプを選択するはずはないという強い思い込みが、分析する側の目を曇らせてしまったということになろ
う。つまり、クリントンは優位に立っていたとしても、圧倒的な優位であったとは決して言えなかったはずだ。

===========[引用終了]===========

 

=========[引用開始](p10)=========

むしろ、「詩人」のように言葉を操る「(言葉だけの)オバマの 8 年間」の後は、多少退屈でも政策的知見と経験において他を寄せつけないヒラリーが圧倒的に有利なポジションにあるはずだという意識の方が先行し、「人々と繋がる」という、選挙において最も重要な要素が軽視されてしまっていたのではないか。

===========[引用終了]===========

 

=========[引用開始](p11)=========

オバマの 8 年間とその最後を締めくくったクリントン・キャンペーンは、かつて民主党を支えていた白人ブルーカラー労働者を疎外し、トランプという強烈な触媒の効果もあって、ながらく進行していたこの疎外と党派的移行のプロセスを完成させてしまった。

(中略)

しかし、同時にこの層を取り込んでしまったことによって、共和党は内部にこれまでにはない矛盾の種を抱え込んでしまったともいえる。それが長期的には共和党のあり方を大きく変えていく可能性があることも認識しておいた方がいいだろう。

(中略)

しかし、すべての作用が強い薬がそうであるように、この薬も副作用が大きく、共和党という身体そのものが持たなくなる可能性もある。

===========[引用終了]===========

 

=========[引用開始](p12)=========

その背景には、アメリカには白人中産階級を起点にした「メインストリーム」の価値観があるという意識があった。しかし、人口構成上、いずれ白人が総体としては、マイノリティになる状況が現実的に視野に入り始め、もはやこの前提が崩れ去りつつある、もしくはすでに崩れてしまったという危機感が広がり始めている。

===========[引用終了]===========

 

=========[引用開始](p12-13)=========

トランプの発想は、基本的にアメリカは自分の国益を守る以上の無駄なことはもうやらないという考えで、「世界をアメリカの姿に似せて作り変える」という発想はおそらくまったくないであろう。むしろ、それとは対極に、「アメリカの偉大さ」とは、外に出ていくことではなくて、むしろ異物を外に吐き出すか、もしくはそれが中に入ってくることを防ぐことによって、本来のアメリカを取り戻すことにあるという発想が根底にある。

===========[引用終了]===========

 

=========[引用開始](p13)=========

民主党が「反トランプ色」を強めていくことは、党の左傾化が加速することを潜在的には意味している。

===========[引用終了]===========

 

=========[引用開始](p15)=========

アメリカが日本にとって不可欠な国であり、短期的にアメリカに代わる代替案を持ち合わせていないこともまた事実であろう。こうした状況だからこそ、日本はなぜアメリカを選択したのか、そして引き続き選択し続けるのか、それを改めて言語化し、アメリカを意識の上で「再選択」するという思考過程を辿る必要がある。

(中略)

実はアメリカと組むことが日本にとって最善の選択肢だということを示し、アメリカを「再選択」するというプロセスをトランプ時代だからこそ行う必要があるのではないか。

(中略)

当然視してきたアメリカをもう一度問い直し、いままで以上に米国に関する情報を入手、分析する能力を高めていく必要がある。

===========[引用終了]===========

 

【参照情報】

中山 俊宏.第一部 対外政策の基盤となるマクロレベルの動向.第1章 トランプ現象とアメリカのイデオロギー的地平.2017年3月