28夜

28夜

お話を書いています。
楽しんでいただけたらうれしいです。

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黒い岩のかたまりがごつごつとした中に、深緑色の部屋があった。
天然の洞窟なのか、岩で作られた空間なのかわからない。
岩の隙間のような窓があるが、外からの光はほとんど入らない。
岩壁にいくつか棚があり、大きなビーカーに海の生物、例えばイソギンチャクやクラゲ、色のない細長い魚など少し不気味な生物が入って並べられていて、空気もじめじめしていた。
深緑の色が塗料で塗られたものなのか、苔などによるものなのかも定かではない。

しばらく部屋を見回していると、どこからか出てきたのか、私の目が暗さに慣れたせいなのか、1m以上はあるぬめぬめとしたオオサンショウウオがのそっと現れた。
一瞬びっくりして私は身を引いたが、オオサンショウウオは私を伺いつつも手出しをする様子は見せず、部屋の中をのそのそと歩き回っている。
すると、赤いジャンバースカートを履いたおかっぱの女の子も違う部屋から姿を現した。
無表情で色が白く、ひょろっとした8歳くらいの女の子だ。こんなところにいたら、そんなふうになるのは当然だろうと思った。不気味な雰囲気だったが、怖くはなかった。可愛そうに思った。

彼女はひとこともしゃべらずに、私の手を取ると、彼女が出てきた入り口へと引っ張って行った。
その暗い穴のような入り口に頭をくぐらせると、それは緩やかにくだった細い洞窟で、終点には鉄でできた堅硬な扉があった。
少女が鍵を外して扉を開けると、中は空洞で、大人が4人くらい入れる広さ。そこは深緑色ではなく、土色で空気も乾いていた。
正面に台座があり、蝋燭が灯され、高さ15cm程度の木彫りの像が置かれていた。人が座禅を組んでいるような輪郭だけがわかる、とても簡単な造りの像だ。それでも強い力を持った聖像なのだろうとわかる。

彼女がこの像はすごい力を持っていて、だからずっと守ってきたのだと言った。この暗い洞窟に隠して、ずっと守ってきたのだと。
だけどもうパワーが強すぎて守りきれないと彼女は言った。もう宇宙に返して、みんなでこの力を使えるようにしたい、それを手伝ってほしいと。

私が承諾すると、彼女は木彫りの像を一緒に持つよう私に促した。
その小さな像を4つの手で支えると、天に掲げた。
すると像はすさまじい光を放ちながら、空へのぼって行った。私の体がガタガタと痙攣するほどの力だった。
人の願いを叶える像だと彼女は言った。これが宇宙へ上がったからには、ネガティブな願いまでもが叶ってしまう。

聖像が空へ消えた後、彼女は一気に駆け出して外へと出て行った。
私も追いかけて外へ出ると、そこには気持ちのいい草原が広がっていた。
さっきまでの洞窟とは真逆な世界、急な明るさが目に眩しい。
なぜか4歳くらいに幼くなったおかっぱの少女がとにかくはしゃぎ回っている。
ずっと外で遊びたかったのに、重い任務を抱えて、暗い洞窟に閉じこもって、何年も大切なものを守っていたのだ。
私が少女をぎゅっと抱きしめると、彼女はくすぐったそうに満面の笑みで笑った。とてもかわいい笑顔だった。細かった身体も、子供らしくすこしふっくらとしていた。元々の姿だったのかも知れない。
近くにいて私たちを見ていたオオサンショウウオも一緒に抱きしめた。
一瞬オオサンショウウオは笑ったように見えて、そそくさと川へ消えた。
彼もようやく解放されたのだ。

オオサンショウウオを見送ると、私はしばらく遊ぶ少女を見守った。彼女はずーっと大声で笑っていた。草の中に何かを見つけたり、スキップしたり、気持ち良さそうに風を浴びたり。
木陰に座っていた私に、彼女は赤いりんごの実をひとつ、持ってきてくれた。そして一緒にかじろうと言った。私たちは両端から一緒に、よい香りのするりんごをかじった。
りんごをかじるときに、思い出すでしょ?と彼女は言った。


※こちらはLucottoさんの『ミーティング ザ グリーティング ザインナーセルフ』 を受けて出てきたイメージです。この夏至に、みんなの素敵な願いが叶いますように。