学童野球とデータ | Let's Enjoy Baseball

学童野球とデータ

 先日のエントリーで、日本シリーズのファイターズ優勝の陰のヒーローは田中賢介だと書きましたが、ここのところよく利用させていただいているBaseball Shopブログにも同じような記事が載り、思わず嬉しくなってショップでお世話になっている担当者にメールしたところ、その記事を書いた「てんちょ」から直々にメールを頂戴し、ビックリするやら、恥ずかしいやら。でも、「田中選手が影のMVPとおっしゃるのは通だと思います」とか、「(ブログで)國學院大學のことについても触れられていましたが」と、竹田監督に関するお話を伺うことができ、嬉しくなってしまいました。小林店長、ありがとうございました。こんにちは、皆さんお元気でお過ごしでしょうか?

 さて、昨日のエントリーでご紹介したRioの試合についてですが、もう少し書き足したいことがあるので、今日はその続きを。

 実はこの試合の数日前、Rioは大雨の中でこのチームと戦った春のリーグ戦のビデオを見直して相手のチェックを行っていました。もちろん、小学生ですので、我々のような細かいデータ分析のようなものはできないはずですが、それでも、彼は彼なりの力量で相手を研究していたと思われます。

 一方、私は私で、同じ試合のビデオに加えて昨夏に特別延長戦の末に敗れた新人戦の試合のビデオも引っ張り出してきて、各打者がバットを振ったコース、見逃したコース、ヒットになったコース、凡打したコース、相手投手の配給分析や投球フォームのタイミング、捕手の盗塁に対する送球の良し悪しや牽制球へのサイン等々、比較的細かいデータ分析を行って、それをユニフォームの尻ポケットに入る大きさのメモ帳に添付して試合に臨みました。

 Rioとチームメイトには、先発投手のタイミングのとり方を3種類(ノー・ワインドアップ、盗塁が考えられるセット・ポジションの場合と盗塁がない場合のセット・ポジション)教え、「でも、最後はそれを自分の数え方の速さで調整しろ」とアドバイス。加えて、このピッチャーは牽制球を殆ど投げてこないことも伝えました。またRioには、私が各打者を分析して「ここへ投げると大きな怪我はないだろう」と思われるコースを各打者何箇所か暗号で伝え、「助言したコースの中からどこに投げさせるかは自分で決めろ」と伝えてありました(この配給の助言に関しては、既に今春から大勝負の試合の時に行っていました)。

 試合では1回裏の相手の攻撃、先頭打者(左)は引っ張る傾向が強いもののライト・ゴロでアウトになっていることが何度かあり、おまけに意外にもど真ん中はピッチャー・フライ等凡打していることが多かったので、ライトを守る**には「ライト・ゴロを狙っておけよ~」と言い、バッテリーには「ド真ん中OKだから思い切り投げ込め」と言いました。相手打者は一瞬戸惑ったようですが、この子が打った打球はセカンドへの大きなバウンドのゴロ。セカンドがボールを待って捕球しようとしたので弾いてしてしまいましたが、その背後にライトの子が来ていてボールを掴み、若干無理な体制で1塁へ送球したため結果はセーフになってしまいましたが、彼が「ライト・ゴロを狙っておけよ~」の声に上手く反応して前に出てきてくれていました。チェンジになってベンチに帰ってきた時、私は「よく突っ込んできたな」と彼を褒めました。

 続く左打者は殆どアウト・コースを流し打ちする子だったため、サードとショートに「そっちに打球が行くぞ~。流してくるぞ~」と伝えました。3番打者は右打者で外角球も引っぱるタイプですので、「サード、ショート、このバッター、引っかけてくるぞ~」と。すると相手側ベンチから「引っかけてやれ~」と声が上がりましたが、打球は案の定、引っかけてサード・ゴロでした。相手側からすると、私の声は最初、一種の「ハッタリ」だと思えたのでしょう。でもイニングが進むにつれて「これはちょっとおかしいぞ」となってきたようでした。それはそうです。私の助言は「データ」ですから。相手打者から豪快な見逃し三振を奪った時も、Rioに伝えた相手の弱点と思われるコースの中からRioが選択してピッチャーへコースを要求し、そこへズバッと投げ込んだわけですから、相手打者は手が出るはずがありません

 この試合でデータがハマッたことを全部挙げていたら限がないので、最後に1つだけ。最後のバッターは、上に書いた1番打者でした。相手にしてみれば、長打が出れば一気に同点というチャンスではあるものの、最終回になるだろうイニングの2アウト。この子は普段以上に力が入って引っかけてくると思えたので、やや後ろに守らせていたセカンドの子を少し1塁側に寄せました。果たして、打球はそのセカンドの子の真正面に転がって来て、1塁へ送球で3アウトでゲーム・セットとなりました。

 試合が終わって暫くしてから、私の前を相手のヘッド・コーチが通ったので挨拶すると、「もしかして、(前に)データ取ってたんですか?」と聞かれたので「当然です」と答えると、まるで「学童の野球でそこまでやるか?(そういうこと、するなよな)」と言いたそうな顔をして去って行かれました。また、夕方に行われた翌週の日程に関する打ち合わせの際に、私の取った行動に関して問題があるとの発言が出るかもしれないと思ったのですが、幸いそれはなく、むしろ他のチームから「あれ(私からRioへの伝令)は何、配給データなわけ?」とか、いろいろ興味を持ってウチの監督に質問してきたとのことでした。

 私のしていることに関して、「何も学童野球にデータを持ち込むなんて」とご批判される方もいらっしゃると思います。実際、Rioの所属チームにおいても、5年生のBチームと4年生のCチームはビデオ・カメラで試合をネット裏から撮影していますが、私のようにネット裏に加えてベンチ横から撮影している方はいませんし、ましてや2台で撮影した映像を細かく分析したりデータとして活用してもいません。私のやっていることはチーム内でも「異様」に受け取られていると思います。

 でも、折角撮影した映像を思い出作りのためだけに使うのはもったいないと思いますし、リーグ戦では春に戦った相手と秋に再び戦うのですから、春に撮影した映像を分析して秋用の対策に利用すべきだと思うのは私だけでしょうか? 実際、相手の打者を分析してみると、小学生でも得意なコースと苦手なコースってちゃんとありますし、監督やコーチだけでなく、選手間で盗塁や牽制のサインも存在していますから。

 私たちは経験したことがないので聞いた話ですが、Rioの1学年上のチームが都道府県レベルの上部大会に進出した際、上部大会常連チームは「偵察隊」をちゃんと用意していて、自分達が次に戦う相手をしっかりとチェックしているらしいのです。もちろん、全てのチームがそうしているわけではないようですが。

 それから、私は監督や選手にデータを提供しても、自分で選手達をリモコン操作する気は更々ありません。データはあくまでも資料であり、それを聞いて活かすも活かさないも選手自身が決めることです。また、選手は小学生ですので、折角データを提供しても何のことだけ理解できない場合もありますし、心に余裕がなくてデータのことなど忘れてしまうケースだって多々あるのです。実際、今月初めの試合ではこういう状態でしたし、実の息子のRioですらこういう状態の時もありますので。それに、仮にRioにこの打者はインコースの低めが苦手だから、そこを攻めろ」と支持しても、当のピッチャーがそこへ投げられなければデータは何の価値もありません。春から初秋にかけての試合でRioにコース配球のデータを出しても、投手陣は殆どそこへ投げられなかったです。一番歯がゆい思いをしたのはRio自身だと思います。

 また、Rio自身が対戦相手と試合を行う前日までに以前の試合のビデオを見ていなければ、Rioにデータの提供は行いません。Rioの頭に相手打者がインプットできていないのにデータ出したら、それこそリモコン操作になってしまいますので。Rioは昨日の試合に臨むにあたり、対戦相手と春に戦った試合をちゃんと見たから私からのデータを活かせたと思っています。そして、だからこそ、ここぞの局面で三振を奪いピンチを切り抜けた時に小さなガッツ・ポーズが出たのだと思います。

 話は変わりますが、昨夜、監督やコーチと楽しい酒を飲んでた時に、ちょう先々週戦ったチームの首脳陣も別のテーブルで酒を飲んでいて、我々を見つけるや否や、「ウチ、来週おたくのところのBチーム(5年生チーム)と戦うんだけど、Bチームのデータも持っているでしょう? ねぇ、くれない?」と寄ってきました。もちろん冗談交じりでしょうけど、それとなく別の話題に切り替えました。

 データが欲しいのなら、自分で収集しましょう!