ローマから日本が見える (集英社文庫)/塩野 七生

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さらに書評など。
塩野七生氏。。。うーん、まずは元祖イタリア趣味人という印象
ですね。。。w
(他の面々としては言わずもがなの荒木飛呂彦氏、「Gunslinger Girl」
の相田裕氏、それから最近では『テルマエロマエ』のヤマザキマリ氏かな?
ヤマザキ氏はシカゴ在住らしいですが。。。)

『海の都の物語』(ヴェネチアもの)『ローマ人の物語』の悪文ぶりが
ちょっと顕著に思えて、以来遠ざかっていたのですが、「論評」となると
明晰な文章を書かれますね。
上記2書は、はたして同時代人の登場人物に仮託して書かれた小説なのか、
または俯瞰的な観点から見た歴史書なのか、はたまた紀行文なのかが明確
ではなかったのですが。。w

実際のところ、本書は古代イタリアに主に目が行って、日本はあまり「見て」
いないという難はありますが、ローマ的「法による支配」のもとの民主制の
進展と蹉跌、さらに現実により適合させた形での「再発明」といった過程の
描写は、現代日本の市民にもおおいに参考になる気がしますw

『歴史の終わり』ではありませんが、我々は現代民主政治というのが、漠然と
最良ないし最終の政治体制と考えておるわけですが(チャ一チル「民主政治は
最悪の政治体制である。他の、これまでの発明されたあらゆる政治体制を
除いては」)古代アテネを見ても分かるように民主制も衆愚政治にはまりこみ
混迷しつつ最終的には衰亡、という構図もあり得るということが分かります。

アウグストス帝による、逆説的ながらも「帝政施行による民主的統治の擁護」
という対処法に見るように、要は社会の目的をきちんと見据えつつの政治の
継続的な再構築、再々構築が必要ということなのではないかと。。。

今まで私、王政→民主政→帝政→分割統治、というローマ史の大まかな
流れだけを見て、輝しかったのは紀元前の民主政時代のみで、あとは一挙に
ルネサンス期になってやっと終わる長いトンネルに入っていったのかと
思っていたのですが、どうもそうでもないようです。

「歴史もの」というとついつ戦国時代ものとか三国志だとかを想起して
しまいますが(かくいう私も好きなのですが)「法による支配」がない社会の
話を読んでも、組織論だとか(例えば「プロイセン参謀本部」だとか「豊臣家の
勃興と凋落」とか)修身面とか人心掌握術とかでは参考になっても、それ以外は
あまり実際に得るところがない気がしてきましたね。。(汗 「歴史があまり
好きでない」という人との間に感じる断絶は、実のところこのあたりに起因
しているのかも知れません。w