改めましてこんにちは。「CLEVELAND CIRCLE」管理人ASTERです。
この「CCウェブログ」では、サイトの更新情報についてお知らせするとともに、他のページでは網羅しきれない種々のトピックを縦横かつ放埓に扱っていきます(笑)。
なるたけ定期的な更新を心掛けますので、どうか親サイト「CLEVELAND CIRCLE」と併せてご愛顧頂ければ幸いです。

今回は栄えある初投稿ということで、唐突かつ無思慮にも、拙作『蜉蝣』 の取材ートなどものしてみたいと思います。今回は第1回、怒涛の京都編です。ただし十本刀は出てきません。なんですか十本刀って。懐かしいだけですね。記録文学の作家さんの取材ノートはそれだけで十分作品価値のあるものですが、ASTER氏の取材ノートはそこへ行くとどうでしょうね。需要があるといいですね。

…気を取り直して写真行きます。京阪鴨東線四条下車(?)、四条河原です。

未設定  河 原。

慶長年間になってから出現した出雲の阿国なんかが有名ですが、歌舞伎や人形浄瑠璃といった大衆芸能のルーツは四条河原の雑芸人にあります。「河原者」といえばこうした、封建支配の外に身を置くことを選んだ芸人たちのことも意味しますが、これは蔑称でありながら、ある意味封建制そのものを相対化するような、気概とダイナミズムを感じさせるコトバです。

ここから鴨川の東岸沿いに南下していくと、15分ほどで建仁寺 へ。

kenjin-ji  法 堂。


建仁寺は応仁の乱以外にも室町期にはたびたび火災に遭っており、天正年間には野原同然だったみたいです。京都で「この前の戦争」というと応仁の乱のことだという都市伝説(?)がありますが、ちょっと調べていくと乱以降の京の荒廃がいかに大規模なものだったか分かります。
ちなみに、建仁寺は『梟の城』にもちょこっと出てきます。
「…木さるは、もうその場にはいなかった。悪戯に飽いたのか、すでに四条大橋を渡って建仁寺の藪に向かってすたすたと歩いている」
99年の映画版で木さるをやっていたのは葉月里緒菜でしたね。あまり関係ないですか。そうですか。


つづいて、安井北門通を東に、東山の山肌に登っていく感じで法観寺 へ。室町初期再建の五重塔(別名、八坂の塔)で有名ですね。

houkan-ji

 二年坂のあたりから。


天正年間には、東寺の五重塔も、また大徳寺の七重塔もすでに焼失してありませんでしたから、この八坂の塔が洛中髄一の高層建築でした。境内は塔の周囲しかないような小さなお寺です。


やや類型化がすぎると思うのですが、京都の古寺は、誰もが知っている名刹と言えるようなものであっても、南都奈良の大伽藍群と比べるとこじんまりしているのが分かります。日本史の教科書なんかを見ると、平安京への遷都が行われた理由として「伸長しすぎた仏教勢力との決別をはかるため」といった記述があったりしますが、逆に、「巨大すぎた諸官寺のインフラを維持しきれなかったため」などという説明も成り立つのでは…とも思います。いかに長安の都を模したとはいえ、東大寺や興福寺といった諸寺の塔頭伽藍の規模は今日見ても圧倒的で、とても天平の昔の経済力に見合ったものとは思えません。


余談ながら、平城京(奈良)が廃されたあと、こういった大官寺は鎮護国家のための国営施設であることをやめ、かといって民衆信仰と結びつくわけでもなく、荘園領主、つまりは寺社勢力として発展していきました。興福寺の例をみれば、「南都北嶺」の語にうかがえるようにこの寺は一時期は大和国一国を事実上支配するまでに発展しましたが、その後台頭してきた武家勢力によりしだいに寺領を侵食されていきます。そして戦国期にはもともと衆徒のひとりだった筒井氏が大名化して大和国の守護になるといわけのわからぬ事態となり、さらにその筒井氏も江戸期に入って滅亡(改易)し、寺領は削りに削られてついに明治初年の廃仏毀釈をむかえ、「五重塔をこわして薪にしてしまえ」と言われるまでに衰亡します。


…ええ、脱線しつつも今度は北に、高台寺の前を過ぎて八坂神社へ。京都人的に言えば祇園さんです。

yasaka-jinjya  諸願成就。


「…わら猿は、東山の華頂山のほうを見た。山麓の祇園社の赤い楼門が、蒼天の下で炎えたつように映えている」

(司馬遼太郎『下請忍者』)

「八坂」というのは明治になってからの名称で、それ以前は祇園社と言いました。

この神社については特に説明は要しませんが、ASTERがかつて大阪に住んでいたとき、正月明けに「初詣は八坂神社に行った」と同僚に言ったところ、「お前それは縁結びの神様だぞ」と満座の失笑を買ったという、甘酸っぱい青春の記憶があります。

皆さんも、参拝に行くときはそれがどういう神様なのか事前に確認しましょうね。


では、何となくオチがついたようなので、『蜉蝣』取材ノート京都編はこれでお開きにいたします。

次号は安土編です。お楽しみに(笑)