話シリーズです。

日中シンクロが失敗する理由(中級者編・ロスレシオの考察)

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入門編では内臓ストロボで絞り優先オートなどで撮影している状況を想定していました。

http://blogs.yahoo.co.jp/ccsakura9999/47448867.html
日中シンクロが失敗する理由(入門編・絞り優先オート)

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今回はその続き、入門卒業程度(初級~中級入り口くらい?)が対象です。

課題:
さて、内臓ストロボはシャッタースピードのどん詰まりで失敗することがあるというのはわかりました。これを解消する為にハイスピードシンクロに対応したストロボを買ってみましたが、まだどうも上手くいかない事がある・・・
入門編では絵が真っ白になった例ですが、今度はストロボが効いていないというか、届いてないというか・・・

イメージ 1


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前提として、中級者ともなればストロボのガイドナンバーの意味とレンズの絞りとの関係くらいはスパッと説明できなければなるまい。

ではでは、、念のため超軽くおさらいから順にいってみましょう!

ガイドナンバー(GN)はISO100で絞りF1.0の時のストロボ光の到達距離。

実際の到達距離は更に次のような諸条件を加味する必要があります。

ISO感度・・・2段増感で到達距離が倍。 =GNx√(ISO感度/100)
絞り・・・2段絞ったら到達距離半分。 =GN/絞りF値
照射角・・・105mmならロスなし、50mmで絞り1段落ち =GN/1.4 ←50mm使用時
ハイスピードシンクロ・・・SS500で絞り3段半落ち =GN/3.5 ←3段半=F2.8半=F3.5
ディフューザー・・・モノにも因るが絞り2段落ち =GN/2

どうでしょうか。機種によって多少の前後はあると思いますが、自分の機種ではどうなっているか知らないとか、計算が面倒とか言っているようではまだまだ初級脱出はおぼつかないでしょう。

さてさて、それではこの計算を実際の撮影場面に当てはめてみます。

まずはストロボのカタログを見てGNを調べます。
GN=58と書いてありました。

しかし、カタログ表記はたまに下駄履かせているときがあって、カッコ書きで(ISO200時)などとなっている時がありますので、よく見ておきましょう。

ココではISO100でのGN=58とします。

カメラの設定はISO感度200、焦点距離50mmで絞りはF2.8とします。
絞り優先オートでシャッタースピードは1/500と出ました。
中級者ですからストロボディフューザーも使う事にしましょう。

この場面でのストロボ光の到達距離は?

ISO感度・・・58x√(200/100)・・・81m
焦点距離・・・81/1.4・・・58m
絞り・・・58/2.8・・・20.7m
ハイスピードシンクロ・・・20.7/3.5・・・5.9m
ディフューザー・・・5.9/2・・・2.9m

なんと到達距離は2.9mと出ました。
かなり厳しい条件としましたので、実際にはもうちょっと届きそうな気もしますが、こんなものと思っておけば間違いないです。

ポートレート撮影で2.9mではどうでしょう?

まぁ大丈夫かもしれませんが、もはやギリギリの線です。
構図を変えて被写体距離が離れたりすると、もうストロボ光は届かなくなってしまうかもしれません。
カメラの設定を変えてないのに日中シンクロがうまくいったり失敗したりする原因のひとつです。

絞りF値で到達距離が変わるのは当然理解してないといけないですが、照射角やハイスピードシンクロでも効果が落ちます。特にハイスピードシンクロの光量ロスはハンパぢゃありません。

絞りを開けたりISO感度を上げれば到達距離が伸びそうな気もしますが、この場合はシャッタースピードが1000、2000と上がってしまう為に返ってロスが増えてしまいます。
場面によりますが、逆にシンクロ同調速度になるように絞ったほうがまだマシかもしれません。

この例でもSS=500を125にする為には絞りをF5.6にする必要がありますが、それでも到達距離は

ISO感度・・・58x√(200/100)・・・=81m
焦点距離・・・81/1.4・・・=58m
絞り・・・58/5.6・・・=10m
ディフューザー・・・10/2・・・=5m

となり、ハイスピードシンクロするより1絞り半ほども儲かります。

様々な状況を判断しつつ、撮りたい絵に仕上げる為に撮影条件をどうするか、機材の設定にどう反映させるかがポイントとなります。

上手い人は計算を間違ったり予想通りにならなかった場合でもすぐに気づいて改善しますから、全カット失敗ということはないです。面倒だとか判らないといって自動に頼りきっていると、たとえおかしな絵になっていても改善の方法がわからずにそのままその場面の撮影を終えてしまうこともあるでしょう。

最近のカメラは自動制御が優秀になっていますから、条件がよければたまたまイイ絵が撮れる事もありますが、安定してイイ絵を撮る為には自動に頼らず、自分でよく考えてカメラを設定出来る必要があります。


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※カタログを見ると照射角やハイスピードシンクロによるロスは絞り換算ではなくて実GNとして表されていると思いますが、予め絞り換算しておけば撮影現場で換算表を見なくても一度の割り算で計算できるようになります。