話シリーズです。
概ね実話に基づいていますが再構成しています。
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「今日の質問はズバリ、露出補正ボタンの使い方。押しても何も変わらん」

ぉ、久しぶりだね。
質問があるっていうことはそこそこ使い込んでるっていうことだね。

で、質問の露出補正ボタンだけど、確かにコレは押しただけぢゃ何も変わらない。
ズバリ、取扱説明書見てないでしょwww

「うわっ、バレタ?一応、軽くめくってみたんだけどさ、あんまり良くわからなかった」

わはは、とりあえずまぁ、めくって見たっていうだけでも偉いよ。
メーカーの提供する取扱説明書は解りにくいところがあったり、メーカーの都合のいいように前提条件を端折って書いてあったりして不適切な部分もなくはないからね。
ただ、操作方法自体は当然機種毎に色々なので、軽く見ておく必要はあるでしょう。

で、実際の操作自体はたいして難しくない。
露出補正ボタンを押しながらダイヤルをクルクル廻せばよいだけです。

「ゎはー!そうだったか、、、ところで、ダイヤルを廻すとどうなる?」

ズルッ、、、それはさすがにズッコケた。w
露出補正っつーくらいだから、ダイヤルの廻し加減で補正量を決めることになる。

メーカー提供のマニュアルを見ると、カメラが自動決定した適正な露出を意図的に変更したいときにこの操作を行うように書いてあるね。まぁメーカーの言い分はそうなんだけど、前の記事でも書いたように、カメラが自動決定した露出が常に適切とは限らない。

なので、まづは、それを本当の適正露出に直す為に露出補正を使う。
次はカメラマンの意図に合わせて最終的な補正量を決める。
ツウな人たちはこの二つを脳内演算で同時に行って補正量を決めている(と思う)。

とりあえずは、適正露出自体がドコになるのか判らないといけないんだが今日はそこまで踏み込まないよ。というか、前の記事にも補正量のヒントがあったと思うから読み返してみてくれ。

で、今日は露出補正を行ったときのカメラの動作について説明します。

露出補正はプラスとマイナスがあって、プラス側に補正掛けると露光量が増えて明るくなる。マイナスなら逆だね。
露出はISO感度を一定とすると、絞りとシャッタースピードの組み合わせで決まるので、明るくしようと思ったら
絞りを開けるかシャッタースピードを遅くするしかない。

露出補正もその法則というか原理の中に入っているので、カメラがオートで決めた露出に対して補正を掛けると、絞りまたはシャッタースピードが変化するだけのことなのです。

たとえば、絞り優先オートでF4を指定したときのSSが125だったとき、+1段補正するとSSは60になる。
シャッタースピードが遅くなって露光量が増えたから明るく写るってわけだ。
(「125と60では数値が半分になっていないけど、その辺は過去の記事を見てね

SS優先のときも概ね同じような動作だけど、一応注意が必要。
カメラマンがSS=125を指定したときに自動決定されたF値がF4だったとき+1補正するとどうなる?

「ぇ、今までの説明からいくと、F4→F2.8になるだけぢゃないの?」

まぁそのとおりだ。しかし、そんなことよりキリのいいF値の数字を良く覚えてたね。

「ぉぉよ、もうその辺は覚えた。Fの不規則な刻みで光の通過面積を倍にするんだろ、1段毎に面積は倍々だ」

すごいね。もうベテラン並だね。w
で、SS優先で動作に注意が必要な件に戻るんだけど、絞りがF4からF2.8になれば確かに露光量を倍にできるんだけど、このカメラについてるレンズは開放でもF3.5だよね。

「ダメなのか?」

ダメに決まってるぢゃん!チョコッとダイヤル触っただけでレンズの光学的特性の開放F値が変るわけない。w

前にも説明した通り、F値は焦点距離とレンズの玉の大きさの比率だから、絞り機構で実質有効な玉の大きさを小さく見せることはできるけど、実際の玉の大きさよりでかくは出来ない。

「限界越えてるってことか?でもそれなら絞り優先の時のSSだって同じ事で、限度あるだろ?」

ぉ、かなり質問のレベルが高くなってきたね。
確かにそのとおりなんだが、実際はカメラが設定できるSSはかなり広い範囲になっている。
特に遅いほうは何十秒単位まで可能だし、速いほうも1/4000とか1/8000とか、かなり高速までいけるので、制限事項としては緩いといえば緩い。

一方、絞りF値のほうは、普通のズームレンズなら開放でもF3.5とかF5.6とかだろ?
これでSS優先で手ブレしない程度にと思って気軽にSS=125とか選択すると、カメラが選択するF値はもう開放ギリギリになっていることも多々ある(特に室内撮り)。
コレはイワユルどん詰まりってやつだ。露出補正もへったくれもなく、まともに写ればマシな状態。
開放側でどん詰まりになったらそれ以上プラス補正は出来ないよ。

で、そういうこと考えるのが面倒なのでボケ量に連関する絞りをカメラマンが指定し、SSのほうはカメラの自動演算に任せて選択させる人が多いと思う。その結果、多少SSが遅くなったとしても最新式のカメラなら手ぶれ補正だかなんだかで3段~4段くらいは大目に見てもらえるというわけだ。

かなり脱線したけど、露出補正は所詮絞りまたはシャッタースピードをスライドさせているに過ぎないので、仕組みがわかってしまえば優先オート+露出補正という撮り方ではなく、初手からマニュアルで露出を決めるのもかえって使いやすいという話。

露出補正の動作例の表(機種によって違うけどだいたいこんなもん)
モードカメラマン側の決めカメラ側の決めプラス補正マイナス補正
プログラムオート-絞りとSS機種による機種による
絞り優先オート絞りSSSSを遅くするSSを速くする
SS優先オートSS絞り絞りを開ける絞りを絞る
マニュアル絞りとSS-意味が無い意味が無い

なお、プログラムオート時の露出補正は、1ステップずつ絞りとSSを交互に動かしたり、どん詰まりになったら逆側を動かすとか、あるいは手ぶれしそうなSSだったら絞りを動かすなど、機種によっていろいろ工夫されたロジックが含まれているみたいです。

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(補足)
デジタルカメラではISO感度は一定ではなく、カットごとに任意に設定できる上、機種によってはISO感度を絞りやSSと同じようにオート化させることも出来ますが、この記事の会話の中では話を簡略化するためにISO感度は一定としています。
また、レンズ側も開放F値1.4等の高級な物を使えばある程度の制限緩和ができることは言うまでもありません。

(画像の説明)
ミノルタα9の露出補正ダイヤル。
露出補正が独立したダイヤルになっているので、絞り・SS・補正についてはそれぞれ専用のダイヤルが担当することになるためシンプルで猛烈に分かりやすく間違えようが無い。
余談ですがこのカメラの絞り・SSダイヤルは高級なピストルでも触っているかのようなカチンッ、カチンッというしっかりした手応えと金属的な音質は正に特級品クラス。
デジタルカメラではまだこのクォリティに達する機種は皆無。←私見ですよ