ホテルは、正直です。
駅前一等地は高く、
一駅離れれば静かになります。
ほんの数分の差で、
価格も、人の密度も、空気の濃さも変わるのです。
私は昔から、ほんの少しだけ、ずらすのが好きでした。
宿泊者しか入れないと思われている空間も、
実は、扉は開いていることが多いのです。
たとえばホテル。
泊まらなくても、使える場所はあります。
清潔なトイレ。
安定した空調。
静かな椅子。
そして、朝の光。
3,500円の朝食ビュッフェが賑わうその隣で、
850円のカフェが、ひっそりと営業しています。
団体客は、用意された3,500円の朝食が
“付いている”ことに喜びます。
私は、850円。
舞浜の
オリエンタルホテル東京ベイ。
いつもの、私の朝食場所です。
(現在はやっていません)^_^
団体はいません。
クーポンもありません。
近隣のおじさまが新聞をめくる音だけが、静かに響きます。
私はそこでパンをかじり、
コーヒーを飲み、
ときどき三時間、仕事をします。
人は言います。
「ホテルの朝食はお得だよ」と。
ええ、そうでしょう。
でも私は知っています。
その“お得”は、設計されたお得なのだと。
私は一駅ずらします。
価格の設計から、半歩だけ外れます。
それは節約ではありません。
空間の選択です。
ディズニーも同じです。
何年も通っている人が、
「そんな部屋あったの?」と驚く場所があります。
マゼランズ の奥。
静かな、秘密の部屋。
私は、だらけた服で入りました。
入口で言われました。
「コース料理だけですが」
――金を持っていないように見えたかな。
少しだけ毒づきながら、
それでも、あの空間が好きなのです。
東京ディズニーシー は夢の国ですが、
構造は極めて現実的です。
価格も。
導線も。
心理も。
すべて、きちんと設計されています。
私はその設計を読みます。
読みながら、それでも浸ります。
本気で好きだからです。
カメラマン選びも、同じだと思っています。
誰もが選ぶ選び方をするのは簡単です。
クーポンの朝食のように、
「みんなが良いと言うもの」を選べばいい。
ランキング1位。
本当にそうでしょうか。
それとも、設計された1位でしょうか。
私の撮影は、
一駅ずらした空間のようでありたい。
ホテルの中の、静かなカフェのようでありたい。
秘密の部屋のようでありたい。
光の当たり方が違う場所で、
静かに、確かに、シャッターを切りたいのです。
毒は吐きます。
構造も読みます。
価格も疑います。
設計を見抜きながら、
それでも目を輝かせてしまうのです。
そして今日も、
私は一歩ずらします。
ほんの少し、
人と違う位置に立つために。
毒が好きなあなたへ
ずらしの達人
森月勝大![]()
拠点 兵庫県西宮神社
