あの日オレは初めてギャンブルをした。

毎日、その日を生きるコトさえままならない。
そんな貧しい生活を送るオレには、もう一発逆転しかない!!

そんな時だった…。偶然舞い込んだ『闇の儲け話』。

一回勝つだけで数ヶ月は暮らしていける金が転がり込むらしい。
しかし負ければ…オレの臓器の一部が…。
酒もタバコもやらないオレの身体は価値が高いとか…。

どうせこのままでも飢え死にするのだ!

やってやろうじゃないか!


こうして、オレの『命賭け』のポーカーが始まった。

オレは幼い頃によく兄とポーカーをやっていたので、唯一ルールがわかる。

しかし…初めてやるギャンブル。緊張なのか、それとも恐怖なのか…手の震えが止まらない…。
表情一つ変えない無口なディーラーは、ただ黙々とカードを配った…。
手の震えでカードを落としそうになる。
オレはしっかりと両手でカードをにぎった……。
深呼吸で手の震えを抑え、ゆっくりとカードを見る………。

同じ数字のカードが4枚…とジョーカー。
「『5カード』だ!!!」
後ろにいた男が喚声をあげる!!
初めてのギャンブルに来て、初めてのゲーム…自分の身に起きた“beginner's luck”と言われる奇跡…。
オレはこの奇跡に今度は体が震え出した…。

震えながらも力強くオレはその奇跡の『5カード』を台に叩きつけた。

そして今まで顔色一つ変えなかったディーラーは眉を少しひそめ…
ディーラーは弱々しく5枚のカードを台に投げた…。

見た目の風貌には想像もつかない程のうわづった声でディーラーは小さく言った…。

「ボク……ポーカーわからないんです……」

…!?オレは言っている意味がわからなかった。
「ホントのディーラー、今トイレに行っててぇ…、オマエちょっとココに立ってろって言われてぇ…」

オレの震えは一瞬で止まった。…と言うより、オレ自身…止まった。
「ってかポーカーなんて知らないしぃ…やったコトないしぃ…」

今にも泣きそうな声でその『偽物ディーラー』は言った…。


「オイ!こっちは『ロイヤルストレートフラッシュ』だぞ!!!」
後ろにいた男は、台に投げられたディーラーのカードを見てまた喚声をあげる!!


…オレは……体にメスを入れた……………。『五臓六腑』の『四臓三腑』を失った……。
“beginner's luck”は“もっとbeginnerのlucky”には勝てなかったのだ…。


…あれから7年…、実質『一臓三腑』のオレは、今でも健康に生きている。

そういえば、あの時、オペの執刀医……。「オペするの初めて」って言ってたっけなぁ…………。