兄の所有だった実家の売却の話が進み いよいよ決済の日がせまってきていた。
引っ越しの際に兄が住所を移転してしまっていたので法務局で権利書の住所移転の手続きをしなくてはならないのに、
何度言っても一向に兄は動こうとしなかった。
役所で印鑑登録をしようとしたら古い実印は漢字が違うからと断られてしまったという。
それなら 自分で新しい印鑑を作り直すとか行動しないとダメだよ。と言ってみたがそれでも全然動こうとしなかった。
仕方ないので、私が通販で購入し兄の住所に送付してもらってやっと新しい印鑑を持つ事ができた。
それから数日後に私の運転で一緒に役所に行き、印鑑登録をしてもらいその足で法務局へ向かってなんとか決済日までに住所変更が間に合った。
どうしてこんな事が一人で出来ないのか 不思議だったが、
別れ際に兄が「今日はありがとう」と言ってくれた、私は「あぁ、うん」と答えた。それで 「じゃあ、また」と別れた。
いつも言葉少ない兄が発した言葉がなんとなく気になった。
それが兄と実際に会い話をした最後の日になってしまった。
(9月8日火)