こんにちは。
1981年から2008年まで
6210例の下顎枝矢状分割骨切り術を
受けた患者を対象に調査を行い
その中には6人の患者(0.1%)に
顔面神経麻痺が
観察されました。
これらの患者達の顔面麻痺の原因
過程を研究して言及し
彼らの回復程度が
長期的にどうなのかを
追跡調査して発表しましたが
追跡調査を行った6人においては
特に手術的治療や
他の特別な施術をせず
物理療法や薬物治療だけでもすべて
顔面麻痺が回復しました。
もちろん経験が不足であったり
原則から外れた手術方法を
用いる場合は例外ですが
経験に基づいて原則を守った
手術法を用いれば
下顎枝矢状分割骨切り術(SSRO)後に
生じる顔面神経麻痺は
単純な神経病症の一時的な症状で
6ヶ月以内に全回復するという
内容です。
両顎手術を受けた患者のうち
0.1%だけ発見される
顔面神経麻痺は
6ヶ月以内に完全に回復するため
特別な応急手術的な治療は必要なく
物理療法や薬物治療で
充分であるという内容の論文です。
ただし、ある程度の経験をもつ
形成外科医師によって
原則的な手術が行われた場合です。
上の写真がまさに
顔面神経麻痺の典型的な姿です。
手術を受けた後
口唇が歪んでしまって
片方が動きません。
唇と口が歪んでいますが
患者の右側が正常で
左側の顔面神経に麻痺が来た
つまり左顔面麻痺です。
今からお見せする写真は
顎顔面外科学の最も権威のある
アメリカジャーナル(SCIジャーナル）であるJournal of Oral and Maxillofacial Surgery
[JOMS] 2010 Jul;68(7):1615-21
から引用しました。
私が第1著者として
発表した論文です^^
上の論文は両顎手術のうち
下顎手術である
下顎枝矢状分割骨切り術後に
発生する顔面麻痺の原因となる
メカニズムを明らかにし
予後に関して書いた論文です。
顔面神経は次のとおりです
以下の図はすべて
AO Foundationウェブサイトから
抜粋しています。
上の写真のように顔面神経は
5種類に分けられます。
Temporal branch(側頭枝)
Zygomatic branch(頬骨枝)
Buccal branch(頬枝)
Marginal branch(辺縁枝?)
そしてCervical branch(首枝)に
分けられます。
日本語で何と言うのか
よく分からなくて
大まかに書きましたが
難しいですねㅠㅠㅠㅠ
このうち臨床的に問題となる枝は
二つです。
Temporal branchと
Marginal branchが
臨床的に問題となります。
まずTemporal Branch(側頭枝)です。
上の図を見ると
青色の丸が示す部分で
額に行きます。
ですから
この枝に問題が生じると
額のしわができてしまいます。
また、目を閉じる
目の回りの筋肉にも分布していて
傷ついてしまうと
目を閉じにくくなります。
頬骨を縮小する場合
アーチを切開する際に
損傷することがあり
頭皮管上を切開する際に
損傷することもありますが
実は、何もしなくても
自然に元に戻ります^^
上の患者は
左顔面神経の2種類に損傷があって
目をつぶることができません。
確かに左側全体が麻痺すれば
もっとひどく歪みます。
そして側頭枝に損傷がある場合
以下のように額にしわが寄ります。
下の患者は患者を基準に
右側に顔面麻痺がきて
患者の右側の額に
しわが寄らないことがあります。
額のしわが寄らないので
眉の高さも違います。
この患者の6ヶ月後です。
麻痺が回復して
額のしわが同じになり
眉毛の高さも同じになりました。
もう一度お伝えします‼
両顎手術を受けた患者のうち
0.1%だけ発見される
顔面神経麻痺は
6ヶ月以内に完全に回復するため
特別な応急手術的な治療は必要なく
物理療法や薬物治療で
充分であるということを
覚えておいてください。
