2013年（平成25年）9月11日午前9時40分ごろ、神奈川県相模原市南区当麻の路上で、飲食店勤務の女性（当時66歳）が通勤途中、面識のない男に背後から突然ナイフで刺され重傷を負った。警察は殺人未遂事件として捜査を開始、付近の防犯カメラに映っていた男を重要参考人とした。男は10代後半から30代くらいで身長は170センチメートル前後、小太り体型で左右の眼の大きさが異なる。

事件当日は小雨が降っていたため、女性は傘を差しながら歩いていた。途中、神社の前にさしかかったところで向かいから男が歩いてくるのに気がついたという。女性が鳥居前の急階段を下りようとしたところ、男も後からついてくる素振りを見せたため、不審に感じた女性は「お先にどうぞ」と道を譲ったが、男は無言で首を横に振った。

女性が階段を下り始めると、男はすぐ後ろからついてきた。階段が途切れて急坂になったところで女性は強い衝撃を受け、前方に押し出され路上に倒れ込んだ。この時男に刺されたものとみられる。女性は目の前に落ちていた自身の血のついた果物ナイフを拾い上げて、数十メートル離れた勤務先の飲食店へと走って助けを呼んだという。

女性は2箇所を刺されており、1か所は左脇腹の傷で肺まで到達していたが、命に別状はなかった。もう1箇所は左側の肩甲骨で、こちらは浅い傷で済んだ。犯行に使われた果物ナイフは、数年前まで100円ショップで販売されていたものだった。

男は女性を刺した後逃走。JR相模線の線路脇にある小道で、着ていた灰色のポロシャツからオレンジ色のTシャツへ着替えたことが分かっている。事件から20分後の10時ごろには、現場から約600メートル離れたJR原当麻駅近くのスーパーマーケットでペットボトルの飲料水を購入している。

さらに10時30分ころには、現場から1キロメートルほどのところにある寺の辺りを歩いており、相模川に架かった昭和橋のたもとで、通行人の男性が犯人と思われる男らしき人物が自転車に乗っているのを目撃している。男は男性の2、3メートル手前を自転車で通り過ぎる際、男性と目が合ってにやりと笑ったという。男はそのまま橋を渡り、対岸の厚木市に向かったとみられている。自転車は前カゴがついているが荷台はなく、車体のフレームは暗い色だという。

警察は男が犯行後スーパーマーケットに入店した時の防犯カメラ映像と、寺付近を歩いている防犯カメラ映像をそれぞれ公開しているが、現在も男の行方は分かっていない。

これは通り魔ではなく、被害者を狙った殺人未遂事件。

犯人は以前から被害者を知っていた。ある時、被害者にこころない言葉（と犯人は思っている）をぶつけられ、一方的に恨みを募らせていた。

時間が経てば経つほど、殺意は沸き上がっていく。

ころすしかない、ころせばこの鬱々とした日々から抜け出せるだろう…そう思い込んでいた。

逃走経路など下調べをし、被害者が1人になるときを狙っていた。

そしてその日、決行した。

全ては完璧だった。逃走も成功した。

犯人の心残りはひとつ、さつがいに失敗したことだ。

しかし大騒ぎになったこと、被害者が重傷を負ったことで溜飲は下がり、それ以上深追いすることはなかった。

それからも遠く引っ越したりすることはなく、何事もなかったように犯人は暮らしている。

相模原市通り魔殺人未遂事件