平成4年2月14日午前3時20分ごろ、東京都清瀬市の警視庁東村山署旭が丘派出所(現交番)で、警察官が首などを刃物で刺されて死亡しているのを新聞配達員が発見した。派出所は窓ガラスが割れて多量の血しぶきが飛び、争った跡は明らかだった。実弾が装塡(そうてん)された拳銃も奪われていた。
殺害されたのは同署地域課の大越晴美巡査長=当時(42)、警部補に特進。大越警部補は荻窪署、青梅署を経て3年3月から東村山署に勤務していた。事件当夜、同署で当直に当たっていたという当時の同僚は「きちょうめんながら人にはおおらか。周りからの人望も厚かった」とその人柄をしのぶ。
当時、派出所はともに勤務する「相勤」の署員が110番通報を受けて外に出ており、大越警部補は1人でいた。
警視庁は延べ約14万人の捜査員を動員。銃が奪われたことから、ガンマニアや別の犯罪を計画する者の関与が疑われたが、未明の犯行で目撃証言は乏しく、捜査は難航した。
周囲に「あれは俺がやった」などと漏らし、事件当時に近くの街に住んでいた男性らが捜査線上に浮上したこともあった(10年1月21日付本紙朝刊)が、19年、未解決のまま公訴時効が成立。
犯人は前科のある若者。未成年の可能性もある。
日頃から警察に不満を持っており、困らせてやりたいと思っていた。
作戦や機会を伺っていたわけではなく、突発的な行動だった。
万が一捕まっても少年法がある。そんな軽い気持ちで犯行に及んだ。
思いのほか抵抗されたため、咄嗟に凶器を振りかざし、さつがいしてしまう。
拳銃を盗んだ理由も、警察の威厳を損ねるため。
犯人は被害者に対して何の感情も持っておらず、今では人並みの生活を手に入れ自由に生きている。