1988年6月22日午前5時40分ごろ、和歌山市園部の路上で新聞配達をしていた県立高校1年生の林史子さん(15歳)が自転車ごと倒れ、頭から血を流して死んでいるのを配達途中の同僚が発見した。司法解剖の結果、右後頭部や右耳の後ろなどにケイ動脈に達する刺し傷など5か所を刺されていた。凶器は片刃のナイフだと思われた。死因は出血多量。
林さんは幅6メートルの市道の端に仰向けで倒れていた。服装は配達に出たときと同じ白いシャツとチェック柄のスカート姿(配達後学校に行くため)だったが、乱れはなかった。自転車にも車がぶつかったような交通事故の形跡はなかった 林さんの倒れていた周囲にあった血だまりに犯人のものと思われるジョギングシューズの足跡があり、サイズは24・5センチ。しかし大量生産品で購入者の特定は不可能だった。
現場はJR阪和線六十谷駅の南西3キロの地点にある新興住宅街。 凶器も発見されず、目撃者もいないなど捜査は難航し、2003年6月22日に時効が成立した。
犯人は裕福な家に住む青年。以前から史子さんに思いを寄せていた。
新聞配達のバイトをしていると聞き付け、偶然を装って近づき話しかけてみたりしていた。
史子さんにとって犯人は好青年に見えていて、会うと笑顔で対応した。
仕事中のためそんなに話せなかったが、2人にとってつかの間の楽しい時間だった。
2人の関係が変わったのは、犯人があからさまなアプローチをしてきてから。
犯人が想いを示せば示すほど、史子さんの気持ちは退いて行ってしまった。
叶わぬ恋に苦しむ犯人。だんだんそっけなくなる彼女に対し、悲しみよりも不安の方が大きくなっていた。
このまま終わってしまうのか?そんなの嫌だ。もう一度会って話してみよう。それでもダメならいっそのこと…。
思い詰めた犯人は罪を犯してしまう。
慌てた犯人は家に帰り、両親に全てを打ち明けた。
犯人の母親が現場へ駆けつけると息子の言う通り、血を流し倒れている彼女がいた。呼吸は止まっている。
犯人の父親は息子の罪を庇うことにした。
疑われた時のためにアリバイを作り、持てる権力全てを使い隠蔽に成功する。
犯人は犯した罪に押しつぶされそうになりながらも、今はその地を離れ遠い場所で生きている。