徳川慶喜は平和を願っていた。自分が征夷大将軍になったからには、そのために頑張ろうと思っていた。


しかし全く上手くいかなかった。


争いは耐えず、そのたびに胸を痛めた。


大切な人を失ったり、信じていたものに裏切られたり。そんな経験をしたあと、もう何もかも投げ出してしまいたいと思うようになった。


当初思い描いていた平和への願い。実現するために全て終わらせることにした。


徳川家に遺された金銭は多くはなかった。


そのため、必要な者たちに分配し全て精算した。


故に、徳川埋蔵金は存在しない。


徳川慶喜は自分を批判する者が少なくないことをよく分かっていた。


最後に逃げてしまった。自分自身を許せない気持ちもあった。


それでも争いのなくなった世に満足していて、そのために憎まれるなら本望だと思っている。