この間、貴志祐介さんの『悪の教典』を読み、サイコパスについて興味を持った。サイコパスだけについての本は少なく、この本が有名だったので読んでみようと思い購入した。
サイコパスとは、精神病質者のことである。彼らの特徴として挙げられるのは多岐にわたるが、良心が欠けている、自己中心的、後悔の念が存在しない、簡単に人を騙す、などがある。
近年ニュースでは残酷な殺人事件などが数多く報道されているが、そのうちの何人かは確実にサイコパスの仕業だと言われている。しかし、サイコパスとそうでない人を区別する指標は「事件の残虐性」では決してない。区別するのは、その人間の人格、つまり主観的な感性である。普通の人間では考えられないことを考えている人のことをサイコパスと呼ぶ。したがって、犯罪者=サイコパスではなく、むしろほとんどの犯罪者はサイコパスではない。逆に、刑務所行きを免れている多くの人間の中にもサイコパスはいる。
サイコパスは、「分裂症」などといった精神的病気ではない。サイコパスの定義は、「精神異常ではあるが、もっとも重くても精神病ではなく、もっとも軽くても正常ではない」である。よって、ただの精神病よりもたちが悪い。サイコパスたちは、理性的で自分たちが正常だと信じて疑わないからだ。そのくせ、人を騙したりすることによって明らかに他人に不利益を与えているのにも関わらず、悪びれることもない。つまり傍目から見ると、サイコパスは正常な人間との区別が難しい。これが最も恐ろしい部分である。
近年「精神病質チェックリスト」なるものができて、専門家がそれを用いてカウンセリングを行うことで、サイコパスの度合いがどれぐらい含まれているかを特定することができるようになった。その項目の例を挙げると、衝動的・共感能力の欠如・ずるがしこい・幼い頃から問題行動を起こすなどがある。
しかし、残念ながらサイコパスを治療する手立てはまだ全く確立されていない。サイコパスは精神病患者と同様のカウンセリングを受けたところで、その内容を単に表面的にしかとらえないので効果がないのだ。犯罪経験のあるサイコパスは、カウンセリングで人格が治ったふりをして出所した後、再犯を重ねて刑務所に戻ってくることが多いという。また、そもそもなぜサイコパスと呼ばれる人間が発生するかということすらわかっていない。周囲の環境による後天的なものとも、遺伝的なものとも言われているが、どちらがどれだけサイコパス発生に関与しているかはまったくわかっていない。
感想
サイコパスの恐ろしさを知れたという点ですごくためになった。著者が外国人だということもあって、実際にいるサイコパスの事例をふんだんに用いて解説してあったため、具体的なサイコパス像が作れた。サイコパスは僕たちと同じ人間ではなく、完全に隔離しなければ徐々に人間の社会を蝕んでいくのではないかというように考えてしまった。倫理的にも現実的ではないが、それぐらいサイコパスの脅威は大きいものであるということが感覚でわかった点で、この本を読んでよかったと思った。
要約
