季節により
その風景は違うけれど
居間の掛け時計の針が
ちょうど夕方の五時を
さす頃
齢、もう八十を過ぎた実母が
明らかに
ソワソワと仕出す
台所と居間をいったりきたり
何とも落ち着かない
「そろそろ夕食の準備をしなければ!」
「お腹を空かせた家族が帰ってくる!」
言葉はいっさい無いが
態度がそう語りかける
もう料理など
まともに作れない
惚けた頭の主になったというのに
良い日もそうでない日も
ただ家族のために台所に立ち
夕食を作り続けた母の歳月
それが
腰の曲がった小さな身体の中に
哀しいほど染みついている
でもきっとこれは
主婦あるある、なのかもしれない
私も程よく惚けた頃には
同じような
夕方のソワソワ
誰かにそっと見守られる
そんな日が
いつか来る気がする
