「小さい頃までは、私は両親のことが大好きでとても明るい子供だった。でも、歳を重ねるにつれ私は少し心の部分で硬いと思われるようになり、私も周りの人と心の部分で打ち解けれることが少なくなって、それは家族に対しても同じだった。周囲が笑いあってるのに、私は心が折れそうになり、周囲が楽しんでるのに私の心は息苦しさを感じた。私たちの種族には様々な掟があり、みな大人になる間にそれを身につけて、自分の血肉としていく。私は、それが難しかった。周りの子供が、どんどん周りの大人たちと同じように成長していくのに、私は取り残された。そして、私は周りの全てに違和感を感じるようになった。両親は、先祖からの掟に忠実で、その掟の元には言葉一つも挟めないほど立派だった。だけど、私はそれが息苦しかった。だから、逆らうことも出来ずに、ただ心の中で距離を置くようになって、口数も少なくなり、最期の方はほとんど打ち解けて話すことがなくなっていたんだ。そして、あの日私たちの町は壊滅して、私は家族でただひとり生き残るものとなった。」
ムスイは黙って聴いていた。
「私は、ある時ひとつの書物に出会った。名は『とてもたいせつな書』。その書物は、私が感じている生き苦しさを癒してくれた。そして、少しずつ私の内側は変わっていったように思う。最初は、まるで自分について書かれた物のように読めた。夢中になり読み進めていくと、難しい箇所に出会う。難しい箇所に出会うと、私の心はすぐにもろくなり書物の言葉ではない言葉に支配される。それが、私の頭をいき巡って終えた時、書物は別の言葉によって、私の傷ついた心に癒しを与えてくれたんだ。忍耐が必要だった。分からなくなって投げ出すことは出来なかった。その書物の言葉が、本当に輝いていて、その時は隠されているところでも、忍耐を続ければいつか、光り輝く言葉として、書物は私を癒してくれるから。私は、自分の中に、とても頑なですぐに傲慢になってしまう悪を見つけた。でも、書物は、少しずつその私の悪を取り除いてくれた。だから、今、私は、死んでしまった家族に対して、誠実に向き合えたのだろうか、という問いを永遠に持ち続けることになった。そして、その問いは、家族だけでなく、全ての私と関わる人に対しての私の問いなんだ。」
マーレは、そう語り終えて、隣のムスイに優しく微笑んだ。