運命の家 | ケンブリッジ生活・サンディエゴ生活

ケンブリッジ生活・サンディエゴ生活

2019年からのイギリス・ケンブリッジ生活を機にブログを始めました。2023年春からは、アメリカのサンディエゴに暮らしています。

大家さんからクリスマスカードが届いた。

この家で過ごすクリスマスをぜひ、楽しんで下さい。と書いてあった。

 

この家に引っ越しが決まった経緯を今まで一度も書いていなかった。

 

以前、住んでいた家はモダンなフラットで、10メートルくらいある大きな窓から目の下のケム川と通りを見下ろせて、景色が良くて、とても便利な場所にあった。

 

コロナでステイホームの時も、通りを走るジョガーや川を通り過ぎてゆくナローボート、川の前に屯する人たちを見ているとちっとも退屈しなかった。

ただ、そこの大家さんが、離婚するのでフラットを売りに出すことにしたというので、私たちは次の引っ越し先を探さなくてはいけなくなった。

 

それが、たっぷり時間があったのに全然、引っ越し先が決まらなかった。

今までは、気に入ったら、すぐにそこに引っ越すことに決まったのに、いいな。と思うところに申し込んでも、選んでもらえなくて、やっと決まったと思ってディポジットも入れていたのに、今住んでいる人が出て行くのを拒んで、引っ越せなくなったりした。

 

でも、いいな。と思うところは、本当は心から、ときめくような場所ではなくて、郊外だけれど息子の学校に近いから。とか、小さいけれど便利だからだとか、何となく妥協したような場所を選んでいた。でも、手に入らないと、いつも落ち込んだ。何十軒もの家について、不動産屋さんに連絡を入れて、実際に10軒以上の家を見たけれど、全然決まらなかった。

やっと、決まったところは、何となく心が浮かず、とても便利なところだけれど、狭くなるので持っている家具をいくつか諦めないといけないという物件だった。

 

前のフラットから出て行かなくてはいけないひと月前になって、決まっていた引っ越し先の話がなくなり、はあ〜っとため息をついた。でも、少し、ほっとした。

ただ決められた時間内に、ほどほどのところに引っ越せるのかなあと心配になった。

 

ほどほどどころか、ドリームハウスが待っているとは知らず。

 

住む場所に関しては、いつも、運が良かったので、そのときは今回はその運も尽きたのかと思った。

 

さて、改めて、家探しをすることになった2時間後。

夢のような家が、オンラインで見つかった。

 

よく知っている場所で、川の前の一軒家だ。実は、その通りを挟んだ家を見に行ったことがあり、その家の並びを見て「あっち側だったら、いいのにね。でも、あそこは貸家にはならないだろうな〜」と話していた家だった。

 

すぐに連絡を不動産屋さんに入れた。

まだ広告が出て、数時間だというのに、もう申し込みが20件もきたという。

もう締め切ったと言われたと諦めた口調の夫に「じゃあ、内覧なしで、値段を上げてもいいから申し込みたい」と言おうよと私は提案した。

 

その旨、不動産屋さんに伝えたところ、家の中を見せてもらえることになった。

場所は、川向こうに私がよく散歩したりジョギングしたりしている美しいメドウが広がり、牛が草を食み、川には白鳥が浮かんでいる。

日当たりの良い居間。ゆったりとした間取り。手入れのされた、川に面した庭。ツルばらのアーチ。アメリカンサイズの大きなガレージ。

本当に素敵だった。

 

私達が選んでもらえたのは、夢のようだった。

大家さんと、何もない居間のピクニックチェアに座って面接のようなものをした。

穏やかな、朗らかな時間がすぎ、大家さんが庭の木や草花について話してくれるのを聞いた。

 

大家さんは、サンディエゴにとても仲の良い友達がいて、お互いの子供たちを夏、ケンブリッジとサンディエゴで交換して過ごさせていたのだそうだ。

さらに、大家さんの親友の名前が私と同じ名前の日本人。

 

そんなこともあって、選んでもらえたのだろうか。

この家は大家さんのご両親の家だったので、愛着もひとしおだと思う。私たちは初めての借家人でもある。ちなみに値段は、最初のまま。前に住んでいたフラットよりもずっと広いけれど家賃は安くなった。レンタル用ではなくて、人が何十年も暮らしてきた家は、たっぷりと熱いお湯が出るし、暖房も照明も、全てがちょうど良くて、とても暮らしやすい。

 

この家には、それまで見てきたどの家よりもここだ!という感覚があった。

立地条件も、値段も、全てがまるで夢のようで、これ以上の場所が存在するとは思えなかった。

 

数ヶ月間、どうしても、家が決まらなかったのは、紆余曲折して、ここに出会うためだったのだとしか思えない。

その前に決まっていた家は、引っ越しが数ヶ月先だったので、決まってからは他の物件を見なかったし、そこがダメになって、すぐに出てきた物件だったので、タイミングが完璧だった。

 

だから、この家に住む時間はとても大切にしたいし、家も庭もとても大切にしたいと思う。

毎日庭にやってくるリスたちも、最近私たちのことを認識したのか、結構近くにやってくる。

庭に出るドアの階段にやってきては、中をのぞいたりするようになった。

 

 

仕草がかわいらしくって、見飽きない。

お茶をするときは、庭に面した窓際にカップを置いて、お菓子を食べながらお茶をするようになり、今日は息子とお茶しながら、リスたちの追いかけっこや、身繕いする仕草を眺めた。

 

この家ですごす初めてのクリスマスが楽しみだ。