Mr.HappyのCatparadise


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楽園66



それじゃあ、来週、予防接種受けさせるし、終わったら貰って。まだ小さいし、昼間は置屋で預かるし。ほんと、助かるわあ~

という事で当日、仕事終わって猫を取りに行った。片手で持てるほどの小ささである。他の住人に見つからないようにそそくさと廊下をわたり部屋に入る。いきなり環境が変わり、戸惑っている様子が窺え、さっさと本棚の後ろに隠れ、全然出てこない。全く警戒してますなあ。その日はそんな感じで終わった。

2日目もそんな調子であったが、途中からノソノソと現れ、膝の上に乗っかってきた。

何やねん。寂しくなったかあ~

と猫に向かってこっちも話しかけてしまう。なでなでながら、これから猫との生活が始まるんだなあ、と思いを馳せた。


Mr.HappyのCatparadise

楽園65

酷暑の日々も何とか乗り越え、秋らしくなってきた頃、アパートの周りを掃き掃除していたら、なおさんが話しかけてきた。

な、この猫かわいいやろ。○○○の女将にもらってん。

○○○とは、小鉄の事務所隣にあるお茶屋である。足元で、首輪を付けられた茶色のトラ猫と白色の猫が戯れていた。

4匹産まれて、ちゃちゃ(ひねりのない名前である)は私がもらうことになってん。コシロ(白くて小さいから)もらわへん?

は、家ここって知ってるでしょ。ペットはさすがに無理じゃないかなあ。

1階の人、犬飼ってるやん。大丈夫やって。

と、半ば押し付けられたようにあまり先を考えずに了承してしまった。このブログの猫は、こうして自分に貰われる事となった。

楽園64

この頃、煙草の自動販売機は深夜12時を過ぎると買えなくなっていた。西尾荘を下がった所に煙草屋があるのだが、ここは、12時を過ぎてもインターホンを押すと、中から出てきて売ってくれた。深夜、煙草が切れるとたまに利用した。

ある夜、ここのオヤジが店前で、ゴルフのスイング練習をしていた。本業は何をしているのかわからないが、色黒の目つきが少し鋭い風貌のオヤジだった。

煙草か。ホンマいつ買いに来てもいいで。そこの若い衆なんかいつでも来よる。ヤクザでもっとるようなもんやな。そんなんやから、何かあったらいつでも駆け寄るわ、と言ってくれるしな。

兄ちゃん、はようこんな所から出ていかなアカンで。こんな所に住んどったら、結婚もできへんで。誰がこんな場所に来るかいな。

なかなか辛辣な話しではないか。


楽園63

山が笑う季節となり、爽やかこの上ないが、楽園は変わらず静まりかえっている。時々、カメラを携えた中年やお茶屋をスケッチしている若者を見かけるが、遊客は本当に見当たらない。

過ごしやすい日々はあっという間で、すぐに梅雨。西尾荘は、ざあざあと雨の音が近く、寂しさがまとわりついてくる感じだった。

いよいよ京都の夏がやってくる。果たして、扇風機のみで過ごせるか。冬は厚着して布団にくるまっていれば、暖かくなるが、夏は裸になっても涼しくならないしなあ。部屋の気温は、日中最高気温33℃がポイントになり、それ以上の時は、夜になっても部屋は暑いまま。銭湯でサッパリしてもすぐにべトついた。そんな夏を、扇風機と茶色のゴム製の氷枕で凌いだ。

楽園62

五条楽園でのお茶屋遊びは、一種到達点に達したような気分がした。後は、楽園の住人としてふるまおう。以後、登楼はしなかった。

やっと西尾荘も過ごしやすくなった。春はいいね。穏やかな日を過ごしていたある日、西尾荘前で痴話喧嘩か、女が叩かれていて、誰かと思っていたら、1階の入院していると聞いていた住人ではないか。いつの間にか戻っていたのね、と思いきや相手は、向かいのアパートの銀髪オヤジではないか。いやあ、男女関係というのは、どこでどう関係するのかわからないものだ。目が合ったので、お互い挨拶したが、何となく気まずい。もちろん、その後会っても、この件に関しては触れない。

なおさん、元気?お隣、帰っているようだけど、別に大丈夫?

うん、そやねん。先週からおるわ。特に何もないけどな。入院してちょっとマシになったんちゃう。

男のことは言わずにおいた。特に変わったことはなさそうだった。

楽園61

今日も呼んでくれてありがとね。昼間やから何か恥ずかしいわーほんとに桜がきれいに見えるね、ここは。こんな時に呼ぶんて、あなたも好きやねえ。



今、思うと楽園のハイライトであった。楽園一の壮大なお茶屋で、桜の満開の中での交わり。襟から浅黒い肌を撫で回し、裾をまくしあげ顔をうずめ、時折、外を眺めやる。全く恍惚とする光景ではないか。裾からはだけた太腿から白足袋へのラインは、ノスタルジーだね。



着物、大丈夫?



うん、いいよいいよ。



お互い着衣のまま乱れに任せ、何とも滑稽な姿になっている。しばらく、なおさんの背中にしがみつき、桜を見つめ放心した。



着たままは初めてやねえ。何か興奮したわ。



そう。うん、淡白はあかんね。



2006年、春の雪であった。

楽園60

高瀬川六軒橋の北には紅葉、南には桜が植えてある。桜の木は、なかなか立派で溢れんばかりの花を咲かせる。ここのお茶屋で花見をしたら、さぞかし気持ち良いことだろうと、女将に訊いてみる。

あのね、高瀬川沿いの部屋って使ってないの。

そんなことないがな。

ああそう。それじゃ、今週土曜日あがりますわ。特等席でお願いね。

また、なおちゃんかいな。予定聞いとこか。

もちろん、なおさんしかいないだろう。もう土曜日来ることは知っていた。後は、天気次第か。

当日、穏やかな昼過ぎ、いわゆる夜の街の明け方にお茶屋の門をくぐった。玄関すぐの部屋には、巨大な屏風ふうなつい立てが出迎えてくれる。どこのお茶屋もそうだが、玄関には何かしら年代ものが飾ってある。通された部屋は、あまり綺麗ではなかったが、簾ごしの桜は見事だった。窓ガラスや桟は汚かったが。






楽園59

一体、どこから侵入してくるのか、押し入れを隈なく調べてみると、500円玉ぐらいの穴を発見した。あ~なるほどね。ここをガムテープで塞ぐと、その後ネズミは、現れなくなった。ちょっと無駄骨だったか。天井での運動会は、たびたび賑やかに催されてはいたが。

そろそろ春だなあ、と思いつつ銭湯へ行くと、妙にものものしい。玄関前に黒服が二人立っている。脱衣所も賑やかに彫り物の男たちが目を光らせている。風呂場に目を遣ると、スキンヘッドの人間を中心に任侠さんらが囲っている。堅気の人間は自分だけかい。

あまり離れた所に陣を取るのも妙なので、3つ隣に座った。どうやら会長のようで、小気味よく体を洗い、後ろの男が洗面器を両手に持って、頭から勢い良くぶっかけていたのは、何だかおかしかった。山本小鉄を思わせる風貌の会津小鉄5代目は、下々に丁重に挨拶をしながら、風呂場を出て行った。



楽園58

いつものように帰宅すると、部屋の雰囲気が何か違う。こたつの上を見ると、ロウソクが散らばり、ロウがなくなり、芯だけが残っている。何、誰か食べたの?ちょっと気味が悪かったが、おそらくネズミの仕業だろう。う~ん、部屋に出るのはまいるなあ。

後日、本を読んでいると、目の前をさぁーと横切るモノが見え、押入れにさっと入るのが見えた。物凄いスピードだ。こりゃ、遺憾と思い、同僚にこの事を話すと、カマボコ型の、中のえさを獲ると、扉が閉まるネズミ捕り器を持ってきてくれた。本当にこれでネズミが仕留められるのか半信半疑であったが、とりあえず部屋に置いてみた。

ネズミは一体、何を食うのか。トムとジェリーは、チーズをいつも仕掛けていたが、それはあまりにもネタすぎる。という事で、とりあえずベーコンを仕掛けてみたが、果たしてネズミ捕獲は成功するのか。

翌日、帰ってみると、何気なくこたつの上に置いていた残りのベーコンが食べられ、ネズミ捕り器の方は、近寄っている気配もない。敵はなかなか賢いね。体よく、ネズミ捕り器を押し付けられた格好になったわけだ。

楽園57

さて、月末になり、大家の所へ翌月の家賃を払いに行く。大家も相当、満身創痍でチャイムを鳴らして出てくるのに相当、時間がかかる。年をとる、というのは人間をここまで緩慢にさせるのね。

どうもです。はい、3月分の家賃です。あれ、この犬は?

ああ、ちょっと預かっとってな。

入院したという女の犬ではないか。大きくなった鳥カゴの中に、その犬は静かに座っていた。大家、多くは語らず、自分も敢えて訊かない。奥さんだけではなく、住人の飼い犬の面倒も見なければならない大家も大変である。

もう部屋はすっかり慣れたか?寒うないか?隣の人に金だけは貸したらアカンぞ。

大家にも金の事を言われる、205号のじいさんはよほど信頼がないと見える。本当に笑える話だ。大丈夫ですよ、と伝え、家を後にした。
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