クリスマスにねだって買ってもらった
ゆびわ。

サイズ合わせのときは
店員さんのなすがまま、
少しの見栄で左手の薬指へ。

彼が帰ってほんとうの
クリスマスにサイズ直ししたゆびわが
届いてからはずっと
右手の薬指につけていた。

左手にはめてしまったら、
はめているわたしを彼が見たら、
変なプレッシャーを与えてしまう
かもしれないと思って。

初めの1週間くらいは
左手にはめては、すぐに外して
右手にはめて出掛けていた。

そのあとは躊躇いもなく右手に
仕事のとき以外はつけていた。

もちろん彼がいるときも
いないときも。

その間にも何度か会って、
いつの間にか季節が変わって
夏になり、二人が出会ってから
2年目の記念日がきた。

彼が買ってきてくれた有名店の
タルトを夜中に2人で食べた。

いつか、プロポーズするからと、
そう言ってくれた言葉が嬉しかった。

久しぶりに東京に帰って、
初めての夏に一緒に行った
海へ2人で出掛けた。

帰りの電車の中で、いつも通り
右手にはめたゆびわを彼がふいに
外した。

そして、そっとわたしの左手をとり、
薬指へゆびわをすべらせた。

言葉は何もなく、
いや、あったのかもしれないけど、
はっきりとは思い出せない。

ゆっくりと、スローモーションのように
わたしの左手の薬指が彩られた。

何も言わなかったけど、
ぎゅっと彼の左手を
握り返した。

もらってから7ヶ月。

ついにこっちにはめられる。

夜中にはずす前にそっと
左手に付け替えて光を
反射させていたけれど、
これからは昼もこっちに。





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相変わらずママからの大反対。

あたしは離れて暮らす彼と早く
一緒に暮らしたい、結婚したいと
思うのに。

伊勢に行ったお土産を実家へ
送ったら、1人で行ったの?と
メールが来たから正直に、
彼氏と行ったと返したら、
返信はなし。

2日経って来たメールは、
普段なら動く絵文字満載なのに、
句読点しかない連絡のみ。

もうきっとうちのママは賛成する
ことはないんだろうな。

何が理由であっても、きっと。
気に入らない理由を次から次へ
どんどん見つけるだろう。

あたしが働き始めて1年。

仕事がうまくいかないときも、
プレッシャーに潰されそうなときも、
いつも支えてくれたのは
他でもなく彼なのに。

ママは一体あたしの何を知ってるの?

あたしはいつもママの前でいい子に
してきた。

家と外であたしが違うこと
ママはきっと本質を知らない。

ママの期待を裏切らないように、
心配をかけないように、
ずっと振る舞ってきた。

何度もいじめられたし、
鬱にもなったし、
それでもママはあたしのほんとを
知らない。

しんどいって言えなかったことも、
泣きわめきたかったことも、
きっと、知らない。

それなのにあたしの彼と会ったことも
ないのに、真っ向から大反対。

頭が固いことも、
人を見掛けや経歴で判断することも、
あたしはずっとむかついてた。

ヤンキーの友達にも、
どれだけ支えられたか。

それでもやっぱり
たった一人なママだから
応援してほしいし、認めてほしい。

周りの大人はみんな
いい顔しなくても、
せめてママだけはたった一人の
娘の味方でいてほしい。

この先辛いことがあっても
この人となら歩いていけるって
思えたたった一人の人なのに。

不安がどんどんおしよせる




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同期からただなんとなく
仕事できそうとか、
まわりからもそう言われて、
仕事できる人間じゃなきゃ
いけない気がしてる。

確かにいい評価もらってるし、
業績も悪くないけど、
あたしってそんなにかな?

もっとできるって思って、
もっと大きいバリバリ働ける会社で
働きたいってずっと思ってた。

でも自分の今の会社で、
今の立場でたいした働き出来てないのに
ずいぶん偉そう。

完璧に仕事できるわけでもないのに。

同期できっとみんなしっかり
働ける人なんだろうな。

そんな人達に比べて
自分ってどうなんだろうな。

そんなこと思い始めたら
どんどん不安になってきた。

不安だよって彼氏に
メールしたら
仕事中に電話までくれた。

あたしが将来のこととか
仕事のことで不安だって言ったら
いっぱい選択肢はあるから
大丈夫。

とりあえず俺と結婚して
子供産まれて働くの
難しくなったら家で英語の先生
すればいいでしょ?

もし正社員で働き続けたいって
言ったらどうするの?って
聞いたら、
その方法見つければいいんじゃないの?

なんてポジティブ。

なんとでもなるからって
言い残して仕事に戻ったと思ってたら
すぐにまた着信。

その不安のなかには
俺とのこともちゃんと入ってんの?

え?

自分のことばっかりで
悩んでない?
ちゃんと俺のことも考えてね?

あなたとの将来のことが
一番不安だよって言ったら

そっか、よかった。

って。

もう一人じゃないんだから。

って。

あぁ、あの些細な気持ちは
どこかに追いやってしまおう。

あたしはこの人と
将来歩いていきたい。

これからの困難もきっと
乗り越えていける気がする。





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