少し間が空いてしまったけど、、

今日は11月13日のLANCETにあったスタチンのメタ解析。


Efficacy and safety of more intensive lowering of LDL cholesterol: a meta-analysis of data from 170000 participants in 26 randomised trials. (Lancet2010; 376: 1670)


高容量スタチンvs低容量スタチンのRCTが5個。

(TNT、PROVE IT-TIMI22、IDEAL、AtoZ、SEARCH)

スタチンvsコントロールのRCTが21個。


あわせて26個のRCTのメタ解析。


ザックリ結論を言うと、


「ベースラインのLDLがいくつであっても、

LDLをさらに38.6mg/dl(=1.0mmol/l)下がると、

心血管イベントがさらに22%低下する」


ちなみに、

高容量vs低容量では、LDLが38.6mg/dl低下すると、心血管イベントは28%低下。

スタチンvsコントロールでは、同様のLDL低下に対して、心血管イベントは21%低下。


しかも、有害事象、癌、非血管死は増やさない。



補足すると、、、


この論文の心血管イベントとは、冠動脈疾患、血行再建、脳梗塞。

約17万人を中央値で4.9年フォローアップしている。



スタチンは脳出血を増やすという研究(SPARCL、CORONA)はあるが、

今回のメタ解析では脳出血増加はみられなかった。


ただし、SPARCLは今回のメタ解析には入っていない。

これを含めて解析しなおすと、

LDL1.0mmol/l低下で脳出血のrate ratioが1.21(p=0.01)と、脳出血がちょい増加。


とはいえ、、

スタチンで一万人を治療をすると、

脳梗塞発症を毎年200-300人回避するのに対して、

脳出血発症は毎年2-3人増加する程度。

脳梗塞予防の有益性の方がはるかに大きいのだ。



余談だけど、スタチンを用いても

心不全患者の心血管イベント(GISSI-HF、CORONA)、

透析患者の心血管イベント(AURORA、Wanner et al(NEJM2005))、

いずれも有意な減少はなかったよん。

今日は先週11月13日のLANCETからSEARCH trial。


Intensive lowering of LDL cholesterol with 80 mg versus 20 mg simvastatin daily in 12064 survivors of myocardial infarction: a double-blind randomised trial. (Lancet 2010; 376: 1658)


スタチン高容量vs低容量の論文。

同じテーマの論文はこれまでに4つあり、これが5つ目。

(他4つは、TNT、PROVE IT-TIMI 22、IDEAL、A to Z。)


この論文ではシンバスタチン(商品名リポバス)の80mgと20mgの心血管イベントと有害事象を比較している。


ざっくりと結論を言うと、


「高容量群はLDLを13.5mg/dl(=0.35mmol/l)低下させ、その結果、心血管イベントを6%低下させた」


「しかも、開始時のLDL値に関わりなく、LDLが13.5mg/dl下がると心血管イベントが6%下がる」



これは他の論文とほぼ一致する結果である。


同じ号に載っているメタ解析の結果とも一致しており、そっちのほうが覚えやすいかも。

「LDLが38.6mg/dl(=1.0mmol/l)低下すると心血管イベントが22%低下する」

このメタ解析は明日あたりチョイ詳しく紹介するね。



補足すると、、、


対象はタイトルのとおり12064名の心筋梗塞患者。

平均観察期間は6.7年。

この論文の心血管イベントは、冠血管死、心筋梗塞、脳梗塞、再血行再建のこと。


血管死、非血管死、全死亡に有意差なし。

悪性腫瘍の発生率も有意差なし。

TNT試験では、高容量群で非血管死が多くて少し話題になってた。

でもこの論文やメタ解析では両群で同等だった。


高容量群でやっぱりミオパチーが少し多かった。


実は、ミオパチー発症患者の60%以上が、SLCO1B1という遺伝子の変異を有しているらしい。

これはスタチンを肝臓へ取り込んでいる蛋白OAT1B1をコードしているそうだ。


初めて知った。。。明日病院で自慢できるトリビア。。。

今日は、10/21のNew England Journal of Medicineから、PARTNER trialです。

11/10に書いたのと同じテーマですが、対象が異なります。


Transcatheter aortic-valve implantation for aortic stenosis in patients who cannot undergo surgery. (NEJM 2010; 363: 1597)


この論文、筆頭著者はM Leon。

彼は、NYにある病院兼研究所Cardiovascular research foundationを所有していて大金持ちなのだ。。

この施設の他の主要メンバーもみな○億円プレーヤー。いいのぉショック!

日米の医療環境の違い、悲しくなるね。。。



さてさて、、、、

この論文の対象は、手術は危険と判断された重症大動脈弁狭窄症の患者さん。

カテーテルによる人工弁留置をする群(TAVI)、TAVIを受けない群に無作為に分けて比較した。


ザックリと結論を言うと、


「手術を受けられないような重症な患者さんの場合は、

カテーテル治療(TAVI)をすることで有意に生存率が改善する。

ただ、脳梗塞が5%くらいある。」



一年後の全死亡率は、TAVI群で30.7%、TAVIじゃない群で50.7%。HR=0.55。

再入院率、症状の改善度もTAVI群が有意に良い。


合併症は、30日以内の脳梗塞がTAVI群に多い傾向。5.0% vs 1.1%、p=0.06。

血管合併症もTAVI群に多い。16.2% vs 1.1%。これは有意差あり。


何もしなければ一年生存率が約50%だったものが、

カテーテル治療(TAVI)という新たな選択枝ができたのは大きい。


通常の大動脈弁の開胸手術(大動脈弁置換術)では、脳梗塞の発生率が2-3%。

複数弁や冠動脈バイパスの同時手術になると、もっとリスクが増す。


手術すらできない患者さんに対する治療で脳梗塞5%ならば、ある程度許容すべきか。

(もちろん起こってほしくないけど)

道具が改良されれば、その発生率はもっと減るだろう。


補足だけど、TAVIしない群のほとんどは大動脈弁バルーン形成術を受けているのだ。

でも、これって再狭窄が多いし、予後を改善しないことがわかっている。
日本ではほとんどやってないんじゃないかな。

この研究グループは、手術vsTAVIの生存率に関する研究も現在進めている。

これまでは、EFの改善率などの報告はあるが、予後改善に関する報告はなかったのだ。