東京事変の代表曲に『群青日和』という曲がある。曲そのものは最高にカッチョイイのだが、問題はそのPV内でのボーカル・椎名林檎だ。まぁ端的に言ってしまえば、どうかと思うぐらい可愛いのである。確かに椎名林檎自身の元々持つ魅力もあるのだが、それにしたって他のPVでの彼女とそれとは何か決定的な差が確かに存在している。それがずっと謎だったのだが、そのメカニズムをまさかジョニー・トーの映画で知ることになるとは思わなかったっす、はい。

何の話かというと『スリ』の話なんですけどね。

『スリ(原題:文雀)』は2008年に香港で公開され、同年の第58回ベルリン国際映画祭のコンペンション部門で上映されるも、日本ではフィルメックスで上映された後そのままDVDスルーっていう不遇の作品でして。

監督は今や香港映画界の巨匠になったジョニー・トー。出演者はサイモン・ヤム、ラム・カートンそしてラム・シューといった、まぁいつメンで構成されてます。

ストーリーはサイモン・ヤム率いるスリの集団がケリー・リン演じる謎の女と出会い、翻弄されていくといったものなんですが。個人的に驚いたのが主人公たちを翻弄するケリー・リン演じる謎の女とサイモン・ヤムが車で対話するショット。ケリー・リンのアップのショットになるのですが、突然今まで写っていたケリー・リンとは全く違う 何か別な魅力的な女性へと変貌してしまったのですね。

「あっ、これ『群青日和』じゃん。」

これはまだ仮説の状態なのですが、薄顔の女性は横顔に大量の照明を当てアップで捉えると 否が応にも可愛く映ってしまうのではないでしょうか。ユリーカですユリーカ。


まぁ、そんなどーでもいいことで感心してしまったこの映画なのですが、ジョニー・トー曰く、香港の失われつつある街並みを捉えておきたかったというパーソナルな動機から製作を始めた作品ということもあって(だから制作開始から完成まで4年かかってる)、非常にノスタルジックに香港の街並みが映し出され、そしてそこで語られる内容も敵のラスボスが金子信雄そっくりのおっさんだったり(しかもスリの腕は最強という設定)と基本オフビートコメディであり、この二つが合わさることによってどこか牧歌的な非常にのほほーんとしたテイストに仕上がってます。

と思って観てるとクライマックスで監督曰く”シェルブールの雨傘風スリ合戦”という前代未聞の大勝負が大展開され、ここは本当に度肝を抜かれます。

もしかしたらジョニー・トー作品群の中で一番好きな作品かもしれない。