北のブログ

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自身の事や46⊿、48小説書きます。
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またグッと冷え込んでしまって


体調管理が大変な時期になりました


ゆうもぎを書いては中途半端なままの小説が私のメモに溜まっていく毎日です


読んでくださる皆様の見てみたい設定とかありますか?


よかったらコメントしていただきたいです。


是非お願いします笑


貴北

M side


海が綺麗なところ


そんなしょうもないネットサーフィンでふと目に止まった


モルディブに渡り数日間海に潜り


青すぎる世界で


自分のちっぽけな価値観はぶち壊され


生きていると実感した


観光を終え元々の目的地マレーシアへ渡り


英語が得意だったわけではない私は


ホームステイ先で苦労しながらも何とか


ジェスチャーも交え会話ができるようになり


街中で意気投合した友人と


シンガポールに渡り勢いで起業し


会社を一年で軌道に乗せた


その会社を友人へ託し目的もなくヨーロッパへ飛んだ


ヨーロッパ美術に感銘を受け


名のある観光地で日本人向けのガイドをしながら


日本へ修行して戻ったばかりだと言う料理人と日本料理店を開き


新天地でできた友人とキャンピングカー生活を送った


キャンピングカーを乗り回しながらヒッチハイクをしている人を片っ端から拾い


出会ったことのない話を聞き


新たな世界に触れ


あまりの楽しさに充実した時間は


あっという間に過ぎ


イタリアでできた友人がカタコトながら日本語を話せるほどになった


『ニホン行ってみたい!』


友人の言葉に


ふと数年前に別れを告げた母国に


愛おしさを感じる


何となく食べたくなった寿司をキャンピングカーで作ると


友人たちから大好評で


嬉しくてたまに日本料理を作るようになった


マレーシアに渡った際


持っていた携帯を売り


安くて怪しい携帯に買い替えた為


電話くらいしかできないそれは


作りたいメニューの一部を思い出せなくても


調べることができなかった


あれはどう作るんだったか


そんなニュアンスで作る料理は私には今ひとつ物足りず


遂にAppleで携帯を買ってしまった


言語設定を日本語にすると


遠く懐かしい記憶が一気に押し寄せてくる気がして


何だか暖かく愛おしい気持ちになった


ふと思い出したように


目的もなくお世話になった会社を検索すると


元々東日本の会社だったそれは


現在は全国に支店を広げ


更に勢力を付け日本食品業界に名前を轟かせていた


あれから何年だっけと思い返してみれば


私の脳裏にまだあどけない表情を残す彼女の顔が思い浮かぶ


あまりのおかしさに自分自身を笑い話に


友人に話をすると


『好き?』


唐突にそう聞かれ


返事に詰まる


『迷う、は、好きってこと』


イタリア美人にそう言われ微笑みかけられると


そんな気さえしてきて


今更遅いのは分かっていても


何となく


日本行きの飛行機を調べてしまう


帰る気はないなんて大口叩いてたのに


会いたくなってしまっている時点で


自分の気持ちに終止符を打てていないことなんて気付いていて


軌道に乗った日本料理店も親しくなった料理人に任せ


観光案内も辞める


『いつでもここに戻って、くるよ』


カタコトながら


いつでも戻ってきていいよと送り出してくれる彼女たちに


笑顔で感謝を告げ


数年ぶりの飛行機に乗る


長過ぎる飛行機の旅の中


もう結婚なんかしてたりしてもおかしくないし


その時はまたモルディブにでも行こうかなんて


考えて目を閉じた


ーーーーーーーーーー


東京に着いたのは次の日の夕方


あたりが少し赤く染まり始めた頃だった


懐かしいその空気に


とりあえずと実家に足を運べば


土産話や何やとなかなか解放してもらえず


自由になったのは日本に帰国して3日後のことだった


時差ぼけもかなりあったし


それも含めてではあったけど


やっと解放された私は


久しぶりの東京へ向かう


深呼吸をして吸い込んだ空気は


美味しいと言えるものではないけれど


心地よくて


久しぶりに見る支店ビルは


少しガラスが日焼けしたように感じる


時刻は17:00を回ったところ


帰社時間が訪れて


続々とスーツ姿の人たちがオフィスビルから出てくる


懐かしいなぁスーツ


あれ以来どんなビジネスをしていても着ることのなかったスーツに懐かしさを感じる反面


日本の狭さを痛感した


ちっぽけだなぁと思っていると


黒いスーツに黒い頭の多い人混みの中に


よく目立つ明るい髪色の人を見つけた


「岡田さんじゃん」


声をかければ


一瞬時間でも止めてしまったかと錯覚するように停止した彼女は


数秒後大きく目を見開き私に駆け寄ってくる


岡『茂木先輩!帰ってきたんですか!』


「うわぁ懐かしいね」


茂木先輩なんて久しぶりだぁと呑気なことを言っていると


岡『帰ってきたんですね!!』


と、嬉しそうにまた確認する


「何か帰ってきちゃったね」


岡『あ!自分あれから本部移動になって』


本部の課長代理なんですって名刺を見せてくる


「え、すごいじゃん」


岡『そうなんですよ〜』


謙遜することなく自慢してくる姿が


可愛らしくて頭をぐしゃぐしゃに撫でると


岡『ちょっと〜』


気持ち程度に抵抗される


私が誰を探しているのか察したのか


岡『あー』


と、彼女は歯切れが悪くなった


何となく空気で分かってしまう


これはきっと嫌な話だ


岡『村山さん去年会社辞めたんです』


「そうなんだ」


岡『…』


私が探していた人と岡田さんの出した名前が一致したからか


彼女は黙って下を向いてしまう


「この後時間ある?」


岡『これから部長と接待で』


申し訳ない顔をする彼女に


「将来が期待されていると時間外も大変だね」


皮肉っぽく言うと


岡『いつまで日本にいるんですか?』


真剣な表情になり彼女は問う


「んー、戻るかも決めてない」


そう言えば少し表情は明るくなり


岡『じゃあ、今度は急にじゃなくて前もって誘ってください』


言い返されてしまい


そんなところで成長を感じて笑ってしまう


「はいはい。分かったよ」


岡『絶対ですからね!あ!連絡先!』


時計を見て慌てたように携帯のメッセージアプリを交換する


岡『じゃあまた落ち着いて会いましょ!』


失礼しますと軽くお辞儀をすれば


よほど急いでいたのか人混みの中にすぐに消えてしまった


日本の女性の退職理由なんて


だいたい若いうちの自己都合か結婚じゃん


そんな決めつけに近い答えを出して


あれから4年も経ったし


そんくらい仕方ない


というか当たり前だしなんて


思ってもないことを頭の中で言い訳した


誰に対して


何に対して言い訳をしてるのかも分からなくて


沈みかけた太陽の眩しさに目を細めた


それから数日後、岡田さんから連絡があり


年末仕事も収めたのでご飯でも行こうとのことだった


日本の大衆居酒屋の空気感はいまだに好きで


指定された場所は


とても懐かしい


岡田さんの代の新入社員歓迎会を行ったお店だった


「何このチョイス〜」


入店して早々そう言うと


岡『ちょっと懐かしさに浸ろうと思って』


自分もあれ以来ですと笑う彼女に


案内された席には


村『え?』


「え?」


今度は私と村山さんが時を止められたように固まってしまった


いや。もう村山さんでは無いのかもしれないその人は


私だと認識したのか


立ち上がって居酒屋を飛び出した


「え?」


岡『ちょ、茂木先輩追いかけてください!!』


「え?」


状況がまだ飲み込めないものの


岡田さんの声で我に帰り


飛び出したその人を追いかけると


居酒屋の前でうずくまっていた


「だい、じょうぶ?」


カタコトみたいになった自分が面白くて


心の中で笑いを堪える


村『勝手に』


「え?」


小さい声に耳を近づけると急に立ち上がって


あまりの距離の近さにびっくりする


村『勝手にいなくなって勝手に帰ってきて』


「あ、ごめん」


村『勝手に目の前に現れて』


「私も知らなかった」


村『かっこよくなって帰ってくるし』


「え?そう?」


村『ずるいよ』


「……うん」


涙が溢れてしまったその人を


今はほっておけなくて


店の裏側へ手を引いて連れて行き抱きしめる


私より背の低いその人は


私の肩口にすっぽりと収まってくれて


目を擦ろうとする手を止めて


頬の涙を拭ってあげる


まだ可愛さは残るものの


あの時よりも大人っぽくなった彼女に


すいこまれるように顔を近づける


「逃げないの?」


村『……』


何も言い返さない彼女の唇を奪ってしまえば


ずっと忘れることができなかった想いが溢れ出してくる


暑くなる目頭に


保てなくなる理性と


速くなる鼓動に


吐息が混じり


脳がぐちゃぐちゃになる


彼女に肩を押されるが


腰を引き寄せてまた角度を変えて求めてしまう


今度は強く押され


名残惜しく離れると


顔をリンゴみたいに真っ赤にしていた


村『……』


何も言わないその人に


私も何も言えず


急に自己嫌悪に襲われて


「ごめん」


そう言って視線を落とした


村『……ねえ』


「…」


村『…なぁちゃん待たせちゃってるから戻ろう』


きっと別のことを言いかけた彼女は


自分の言葉を飲み込んでそう言った


簡単に気持ちも切り替えれずに若干上の空のまま


気まず過ぎる飲み会は始まり


思い出話もそこそこに


味のしないお酒を喉に流し込んだ


岡『あ、そういえば』


岡田さんが急に思い出したように声をあげて


私たちの視線は岡田さんに注がれる


岡『おんちゃんって言って分かります?』


岡田さんの問いに村山さんは頷くが


私はピンと来ずに首を横にする


んー、と考える素振りをして


携帯画面から何かを探し私たちに見せてくれる


仲良さそうに映る岡田さんと


朧げな記憶の中に存在する女性の姿があった


岡『実はこないだの私の誕生日からお付き合い始めました』


クシャッと笑う笑顔が


何だか懐かしくて眺めていると


村『えええ!』


彼女は衝撃だったのか少し大きい声を出した


岡『そうなんです〜』


なんでなんでとその話題に食いついた彼女と岡田さんで話が盛り上がってくれて


何とか気まず過ぎた空気から解放された


岡『そういうゆうちゃんはどうなんですか?』


そんな安堵も束の間


話題の矛先が村山さんに変わり


私の心臓はいつもより速く動いている気がする


村『私はいいよ』


岡『えー、せっかく懐かしい顔ぶれなんですから』


村『…でも』


私の顔を少し気まずそうに見ると視線を逸らす


岡『いいんですか本当に』


岡田さんが村山さんに少し真剣な表情を向ければ


逸らされた視線はまた私に戻ってくる


村『…』


岡『茂木先輩も何か言ってくださいよ〜』


岡田さんの謎なフリに


何を言えば正解なのか分からず


「え、あー」


言葉を濁らせていると


岡田さんは大きくため息をつく


岡『あの時私が邪魔しないでも2人とも絶対進展しなかったでしょ!!』


開き直っているのか初めて邪魔をしてた話を聞かされる私は一回そこに驚く時間が欲しいなんて冷静に考えていた


岡『茂木先輩は誰の為に帰ってきたんですか!!ゆうちゃんは誰の為にいつまで1人なんですか!!え!?ええ!?言ってください!!はい!!どうぞ!!』


岡田さんの半ギレな強制どうぞに


訳も分からないまま


「村山さん」


私だけが答えた


「え、1人?」


情報量が多すぎで処理しきれていない中


唯一脳が追いついた単語を本人に投げかけると


村『茂木ちゃん私のために帰ってきたんだ』


フニャッと笑いかけてきた


ギュッと心臓が掴まれて


は?可愛い。とキレそうになる言葉を飲み込む


「あー、んー。まぁ」


曖昧に頷くと少し不機嫌そうな顔をするので


「そうだよ。村山さんに会いたくて帰ってきたよ」


って素直に言えば


村『自分勝手だなぁ』


と、ヘラヘラ笑っている


岡『はぁ、じゃあ自分は彼女と約束あるんで。』


やれやれと言う顔をして早速帰ろうとする我が後輩に


「え。ちょっと待って邪魔って何?」


岡『遅過ぎてびっくりしました』


「全然分かんないんだけど」


岡『まぁこれでちゃらにしてください』


そう言うとウィンクをしてお店を出て行った


「村山さん」


村『ゆいり』


「え?」


村『ずっと苗字で呼ばれてるの嫌だった』


「ここに来て急にはちょっと」


村『ふーん』


「あー、、わかったから。ゆいりちゃん」


村『うん』


嬉しそうにまたふにゃふにゃと笑うから


あぁ敵わないな何て思いながら


「待っててくれてありがとう」


そう言うと


村『本当だよ〜』


と、少しほっぺを膨らませる


「帰ってこなかったらどうしてたの」


村『んー、茂木ちゃんは帰ってきてくれると思ってた』


なんて言われたら


実際に帰ってきてしまったし


言い返す言葉もなく


「そっか」


そう言えば、うんと元気に返事が来る


「好きだよ」


そう言うと赤くなった耳を隠すように耳にかけていた髪の毛をおろしている


仕草全てが可愛くて


ついつい表情が緩む


「まだ間に合う?」


村『仕方ないなぁ〜、間に合ったことにしてあげる』


そう言って貴女は私の目を少し恥ずかしそうに覗き込む


「付き合ってください」


村『宜しくお願いします』


甘過ぎる空気に耐えれなくなって


くすくすと笑い出してしまう私たち


遠回りしてしまったし


遅くなってしまったけど


まだ間に合ったことにしてくれる優しい貴女を


離してしまわないよう


優しく抱きしめた


ーーーーーーーーーーーーーー


お読みいただきありがとうございました!

ゆうもぎ好きが増えてくれたら嬉しいです>_<