紙管とは。

紙で出来た管のこと。

サランラップとかの芯をイメージすると分かりやすい。

あれで頭を殴られると相当痛い。

紙だからと言って侮れない。

とても頑丈に出来ている。

紙だからもちろん燃やせる。

とってもエコロジー。

この素材を使った建築にこだわっている人がいる。

フランス芸術文化勲章を受賞した「坂茂さん」。

「さかしげ」という苗字ではありません。

「ばん　しげる」がフルネーム。

今では紙管建築と言えばバンさんというほど世界的に有名で、

もちろん建築家ですから見た目にも素晴らしいものをいくつも作っています。

こうした有名建築家って、もはや芸術家と同じ扱いというか、

機能美を追求したり、空間を自在に操る能力というか、

とにかくハイセンスな持ち主ですよね。

賃貸マンションとかでも、

デザイナーズマンションともなると、

平均価格の1.5倍くらいしたり、

家の建築をデザイナーさんに頼むだなんて、憧れ中の憧れ。

もちろんそれなりに資金も必要になりますから、

デザイナーさんの設計による戸建てに住んでいるというだけで、

家主にとってステータスの一部であると言っても過言ではありません。

そんな最高峰にいるであろうバンさん。

一流であることを鼻にかけない素晴らしい人格。

彼の紙管に対する思いというのは相当でした。

彼自身、建築家についてこう述べています。

「建築家という職業に、私はひどく失望しました。

建築家は人助けもしなければ、社会の役にも立っていないのに、

特権階級やお金持ちや政府や開発業者の為に働いているからです。

お金持ちというのは一見目に見えないため、

それを示すためにモニュメントのような建造物を、

我々建築家に作らせるのです。

建築家とはそういう職業で、

歴史的に見ても現代においても同じ様な仕組みです。

多くの人々が自然災害によって家を失っているのに、

建築家は社会の役に立っていない。

実際のところもはや「自然」災害ではないのです。

例えば地震そのもので命を落とすのではなく、

建物が倒壊するから亡くなるのです。

これは建築家の責任です。

仮設住宅が必要な現場に、建築家の姿はありません。

特権階級にいる人の為に働くことで忙しすぎるからです。」

こうした考えの中から、

バンさんは仮設住宅についても紙管を使用し、

限られた空間の中に、機能と美を追求出来ないかと決意し、

東北はもとより、世界中の被災地で、

見事なまでの「仮設住宅」を建てていきました。

住宅だけでなく、教会なども建設しています。

もちろん紙管でです。

家具に至るまで紙管で出来ており、

撤去後に出る産業廃棄物は燃えカスのみ。

教会は阪神大震災の時に建てられたもので、

当初3年間の予定でしたが、10年も延期し、

別の海外の被災地から是非欲しいと頼まれ、

分解して、現地で再度組み立て、

現在でも取り壊す予定もなく、地元に人に愛され続けてるようです。

このように「仮設」として建てられたとしても、

何が仮設で何が仮設じゃないのか、よく分からなくなります。

政府のこしらえた雨漏りの酷い仮設住宅よりも安価に出来る、

バンさんの機能美を備えた「仮設」住宅。

仮設だからボロくていいのか。

仮設だから隣の音が丸聞こえでもいいのか。

そんなことありませんよね。

バンさんの考えが広く浸透すれば、

被災地の問題や、貧困やホームレス等々、

解決できそうなことも多くありそうなのに、

こうしたことでさえもビジネスにしようとする人がいる以上、

当たり前のように普及することは無いのだと思います。

例えばフィリピンのバラックが密集するような場所。

全てをこの紙管建築に作り変えることが出来るなら、

外観も衛生上も、格段に良くなる事でしょう。

なにより、子供達の笑顔が見えてきます。

笑顔を作る仕事。

最高の仕事ですね＾＾

紙管の魔術師