~前回のあらすじ~

イザナギの勘当されたスサノオは、母のいる根の国(冥界)に向かう途中、

姉アマテラスのいる高天原に立ち寄り、数々の粗暴な振る舞いを行った。


疲れ果てたアマテラスは天岩戸に引き込んでしまい、

光は失われ、闇夜が続いた。


そんなアマテラスを岩戸からおびき出そうと、

アメノウズメご一行は珍妙な踊りで騒ぎ立て、

ついにアマテラスの興味を引くことに成功し太陽の光が戻った。


今回の件を受け、スサノオには数々の罰則が科され、

地上界である葦原の中つ国、出雲へと落とされたのである。


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出雲国、

「肥河川上鳥髪(ひのかわのかわかみのとりかみ)」

に降り立ったスサノオ。


川から箸が流れ下りてくるのを見て、

「上に誰かいるのだろうか」と川上に向かって歩いた。


向かった先に、何やら悲しそうに泣いている3人の家族が居た。


「あなたがた、どうしたのだ?」


「私は国つ神の大山津見神(オホヤマツミ)の子で、

私はアシナヅチ、妻の名はテナヅチ、

娘の名は櫛名田比売(くしなだひめ)と申します」


「なぜ泣いているのだ?」


「私の娘は元々八人おりました。

しかし、高志(こし)の八俣の大蛇が毎年やってきて、

娘を一人ずつ食べてしまうのです。今年もその時期がやってきました。

それが悲しくて泣いておるのです。」


スサノオはオロチについて詳しく聞いてみた。


「目は鬼灯のように赤く、

一つの身体から八つの頭が生え、八つの尾が伸びています。

その大きさは、苔に覆われた身体から杉や檜が生えるほどの巨体で、

その長さは、八つの谷、八つの峰に渡るほど長く、

その腹は、ことごとく血で滲んでいます。」



・現代も崇拝されるオロチ




食われるのをただ待つこの童女、櫛名田姫に一目ぼれしたスサノオは、

「あなたの娘を私の妻に下さらんか」と申し出た。


「いや・・・急に言われても。。名前も知らないし」

アシナヅチは戸惑った。


スサノオは胸を突き出し、得意満面の顔でこう言い放った。


「我は高天原を治める天照大御神の弟、海原の統治者スサノオである。

イザナギ、アマテラスの命を受け、たった今、出雲に降り立ったところである」


アシナヅチ、テナヅチは一歩下がり、

「おお、そうでございましたか。これはこれは恐れ多い。

分かりました。娘を差し上げましょう。」

と、これを承諾した。


これよりオロチ討伐の準備に取り掛かった。


童女を神聖な櫛に変え、自らの頭に刺して置いた。

夫妻にも指示を出す。


「酒を造り、垣を廻らし、垣には八つの門をおき、

門ごとに八つの佐受岐(さずき:仮の床・棚の意)を結び、

佐受岐ごとに酒桶を置き、八塩折の酒(やしほをりのさけ)を満たして待ちなさい」



言われた通り準備し、待っていると、

言葉通り禍々しい姿で、八俣の大蛇がやってきた。


酒桶を見るや否や、頭を一つ突っ込んでは飲み干し、

ついに全ての頭で飲み干した頃、酔ってその場に倒れこんだ。


眠っている隙に、スサノオは十拳剣(とかのつるぎ)を抜き、

ズタズタに切り刻んでいった。


血は川へと流れだし肥河の川は、真っ赤に染まっていった。


尾を切り刻んだ時、何かに当たって刀身が欠けた。

不思議に思い、その部分を裂いてみると、

中から都牟羽の大刀(つむはのたち)、いわゆる「草薙の剣」が出てきた。


スサノオは罰則の残りとして、この剣をアマテラスに献上した。



※「草薙の剣」:後世でヤマトタケルが敵の火攻めにあったとき、
        この剣で草を薙ぎ払ったことで、この名に変わります。


※auショッピングモールで27000円でした。



大蛇を倒したスサノオは、晴れて櫛名田姫と結婚をした。

宮を作る土地として出雲に求め、須賀(すが)の地に辿り付く。


「私の心はここに来て、なんともすがすがしい」

と言い、ここに宮を造って櫛名田姫と住んだ。


今でもこの地は「須賀」と呼ばれている。


スサノオはアシナヅチを呼び、この宮の首長を命じた。

新たな名前「稲田宮主須賀八耳(いなだのみやぬしすがのやつみみ)」

という名を与えた。


こうしてスサノオは、櫛名田姫と幸せな生活を送り、

たくさんの神々が産まれ続け、子孫は繁栄し、

のちに出雲国の英雄となる大国主命(おおくにのぬしのみこと)が誕生した。


しかし、生まれたばかりの末っ子オオクニノヌシは、

80もいる兄弟神の嫌な序列に泣かされるのであった。



-つづく-