特に派手でもなく
取り立てて不幸でもなく
地道にコツコツと生活している毎日の中で
ふいにポンとボールを投げ込まれるようなことがある。
それは、あからさまに悪意のこもったボールで
私の心は大きく波打ち
幾重にも波紋が広がる。
それまでは
波が立たないように
いつでも空一面に広がる星屑が
鏡のように映しせるように、
地道にコツコツと
穏やかにひっそりと、
静かに息をして
細心の注意を払って過ごしていたのに、
悪意に満ち満ちたそのボールは
穏やかな水面に
ポトンと音を立てて軽く弾んだ後
プカプカといつまでも上下を繰り返して浮いている。
誰か、私の中に投げ込まれた
禍々しいそのボールを
取り除いておくれ~。
そんなことを言っても
誰も助けてくれない。
そんな間にもプカプカと波紋を広げるボールは
確実に私の心をかき乱してゆく。
どうしようもない不安感と不快感が
渦を巻いて押し寄せてきた。
私は必死に押しつぶされまいと
脳みそをフル回転させる。
どうしてこんな目に合うのか。
私が何をしたというのか。
いやいや、そんなことを考えてもしょうがない。
まずはあのボールを取り除かなくては。
でも、どうやって?
最善策は・・・。
なんでもいいから、早く取り除く方法を~
考えても考えても
頭の中に浮かぶのは
吊り上った目をギラギラさせて
ニヤリとほくそ笑むボールを投げこんだ犯人の顔だ。
そして
考えれば考えるほど
犯人の顔が映し出されたボールには明るいスポットライトが当たり
心の注目を浴び始める。
望んでいない。
そんな悪意のこもった禍々しいボールが
私の心の中心を陣取り
神々しくも光を帯び始めることなんか。
望んでいないのに!
強く思えば思うほど
私自身は暗い闇の方へと追いやられる。
一度入ったら抜け出せないよ、と言わんばかりに
その闇はぽっかりと口を開けていた。
逃げなくては。
とにかく走って
逃げなくては!
でもどこへ?
どこまで行っても逃げ場なんか無く
終わりなんか無いことは
私自身がよく分かっていた。
それでも走らずにはいられなかった。
とにかく
走らずにはいられなかった。
