私の夜。


月明かりを映す、田んぼの水面。

誰かの家の、晩ごはんの匂い。

点々とつく、街頭の明かり。


ハンガーに戻した、紺色のコート。

テーブルの上の手紙。

ビールと枝豆と、チーズ。

気の抜けた炭酸水。


お風呂の湯気。シャンプーの香り。

窓から通り抜ける、涼しい風。


私の夜。


ベランダから見える、星。

張り詰めた、冷たい空気。


暖かい布団のなかで、

今日のこと、明日のこと

将来のこと、友だちのこと

遠い未来の、誰かを思いながら、

最後に、明日のご飯を想像すること。


私の夜。


ピアノが奏でる、ドビュッシー。

ラジオから聞こえる、誰かの声。

ぼう、として耳を傾けながら、

うとうとしながら、朝を待つ。






あとがき。


ある方にお題を頂いて書いた過去作です。




詩の中のシャンプーは、既に廃盤となってしまいました… 匂いも手触りも、とても好きだったんだけどなあ〜