「私、ヒロのことほんとに好きだなって」
本人を目の前に恥ずかし過ぎる告白をしてしまったことに気付き
慌てて視線をそらしてごまかす私をヒロは優しく抱き寄せる
「ごめんな・・・悪かった、嫌な思いさせてばかりだったよな」
ヒロの声は優しくて、私の背中を包み込む掌の力強さに
一瞬で涙腺が崩壊してしまった
「なんでそんなこと言うの・・・?ほんとやめてよ・・・」
涙を止められずに泣きながら抗議する私には何も答えることなく
ヒロの手は優しく私の頭を撫で続けていて
その手の温かさにまた涙がこみ上げてくる
「あぁ・・・なんか嫌になる、こんな泣いてばっかりで
私、ヒロに優しくされるのに弱いみたい」
「なんだよ、それじゃ俺が優しくするの珍しいみたいじゃん」
「ヒロの優しさは素直じゃないんだもん
なのに最近急に分かりやすく優しい言葉言ってくれたりするから・・・」
「よくそんな男を好きって言ったよな、ほんとに(笑)」
「ほんとだね、なんでかな(笑)」
ようやく泣き止んだ私から腕を解いたヒロが
その両手を私の肩に置き体を離すと
2人の間にヒロの腕の長さ分の距離が出来た
「なぁ・・・」
「なに?」
そのヒロの顔を間近で見られる微妙な距離が余計に恥ずかしくて
また視線を落としてしまう私をヒロが首を傾げて覗き込む
「なぁ、こっち見て」
「う、うん・・・」
「聞きたくない話しなのかもしれないけど聞いて」
その言葉にゆっくり顔を上げると
不安そうに私の顔色をうかがうヒロと目が合った
ヒロが聞きたくないかもしれないと言うくらいだから
私にとって良い話ではないのだろう
それでも話すことに決めたヒロに答えなければと思った
「なに?聞くよ・・・」
聞きたいような、聞きたくないような・・・
きっと私の声は震えていたと思う
「話したんだ・・・玉木さんと」
「・・・・・・・・うん」
「会社の仲の良い奴らにも前の彼女と別れてからは
適当に遊んでるって思われてたし、俺もそれ否定しないでいたから
何となくcarrieのことも何も言わずに来たんだけど」
私の存在は言えなくて当然だ
それはヒロが言い訳しなくても自分でも分かる
「玉木さんに話した、carrieのこと
詳しいことまでは言ってないけど
前の彼女と別れる前から彼女よりもずっと近くにいた子で
今も一番彼女に近い子だって」
「どうしてそんなことわざわざ言ったの?」
私にヒロとの別れを決意までさせた玉木さんの存在は
忘れようにも忘れられなくて
名前を聞くだけでも正直嫌悪感でいっぱいになる
「玉木さんとの関係を止めることは考えられないの?って聞いたとき
それはcarrieには関係ないことだって突き放したよね?」
そのヒロの言葉にどれだ傷ついたか・・・
「あの時は俺もムキになってて・・・
玉木さんとのことでcarrieを傷つけたのも分かってるし
そのことで余計俺のこと信じられないのも分かってる」
「うん、玉木さんとのことはヒロとのことを終わりにする決定打だった」
「あまり深く考えてなかったんだ
彼女の方も当然遊びで軽い気持ちだと思ってたし」
「違ったでしょ?」
「・・・・・・・・・・・・」
「女の気持ちを軽く見てると痛い目に合うよって何度も言ったのに」
玉木さんがどんな気持ちでヒロとの関係に踏み切ったのか
私には分からないし、知りたくもないけれど
女の気持ちを利用するような遊びを繰り返すヒロはやっぱり許せない
「玉木さんとのことケジメつけようって思ったんだ
きちんとするにはcarrieとのこと話すのが一番だと思ったから
carrieに話そうって思ったのは
話さなかったらいつまでも玉木さんと続いてるって心配させるから」
「じゃあ、もう会わないの?」
「もう仕事以外で関わることは無いよ
今までみたいな仲間内の飲み会にも出来るだけ出ない」
「そこまですることないよ・・・
で、玉木さんはそれで納得してくれたの?」
「してくれた・・・と、思う」
「するしかなかったんじゃない?
自分の立場とか考えたら・・・そうだと思う・・・」
「もう俺のこと信用できない?」
何度も、何度も、裏切られたし傷つけられた
そのことをきっと私は忘れることは無いだろうし
ヒロのことをこの先信じられるのかと言われても自信はない
そこまで分かっているのに・・・それでも・・・
「当たり前だよ、信用なんて出来ない
なのにバカかもしれないけどヒロのこと好きなの
どうしても嫌いになれなくて苦しいの、どうしたらいい?」
「俺も好きだよ
信用してもらえてないって分かってて付き合おうって言ってる俺も
相当バカなのかもしれないけど・・・
carrieのために変わるなんておっきいことは言えないけど
信用を回復できるように頑張ります」
「今までみたいに他の女の子と遊んだり、許せなくなるよ」
「うん、いいよ」
「誰と会うの?とか、どこに行くの?とか聞くかもしれないし
行かないでってわがまま言うようになるかもしれないよ」
「いいよ」
あまりに優しい表情でヒロが答えるから
自分がとんでもなくわがままを言っているようで恥ずかしくなる
「我慢なんかしないで言いたい事言おうよ
止めて欲しいことは言ってくれたらいい
俺も出来ない事はそう言うから
だから・・・付き合おう、俺ら」
「・・・・・・・・そうだね。お願いします」
「こちらこそ、彼女さん(笑)」
その夜、私たちは時間も忘れて抱き合った
ヒロと離れる決心をしてから2か月
何度体を繋げてもいつもどこか不安で
自分だけのものなんて感じられたことはなかった
私を抱きしめるそのヒロの腕が
まるでもう離さないと言うかの様にしっかり私の背中を抱きしめる
ようやく彼氏になったヒロの腕の中で得たものは
「幸せ」よりも「安心」
そんな自分の選択が甘すぎたことに気付くのは
思っていたよりもずっと早かった