日刊スポーツ 1月25日(月)12時35分配信
<10年ぶりの和製力士V>
琴奨菊が、日本出身力士として10年ぶりの優勝を果たした。06年初場所の栃東以来、なぜ日本生まれの力士による優勝が途絶え、どうして壁を破れたのか? 連載「10年ぶりの和製力士V」では、今回の節目にまつわる話題を紹介する。1回目は、親方衆の見解。
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10年の節目に自分のしこ名がスポットを浴びた。巡り合わせの運命に、06年初場所で最後の和製優勝力士だった玉ノ井親方(元大関栃東)は「早く優勝してほしかった」と少し肩の荷を下ろすように話した。10年の空白を生んだ外国出身力士は「ハングリー精神が強かった。(和製は)あと1歩だった」と指摘。「これからの経験になる」と横綱昇進に期待した。
マゲがあれば日本出身も外国出身もない。そのスタンスは協会トップになる前から不変だ。船出の場所となった八角新理事長(元横綱北勝海)は言う。「全力士、頑張っているから感動がある。頑張った者が優勝するんです。なおさらこの10年、外国出身力士が頑張った。白鵬は1人横綱で頑張ってきた」。双方を分け隔てる気持ちはない。相撲道を歩む者に、国境はないという姿勢だ。もちろん琴奨菊だけの美酒にとどまらせてはいけない。そこは協会トップ。「オレも頑張ればできるんだという励み、勇気。特に稀勢の里は自分が一番(日本出身力士優勝に)近かったわけだから」と化学反応に期待する。
若手指導者は、日本出身力士の精神的もろさを指摘する。関脇時代の99年名古屋場所で優勝した大鳴戸親方(元大関出島)は「体形的にはそんなに変わらなく日馬富士なんか小兵でも横綱を張る。心技体、最初の心が大事、その違い」と指摘。「巡業も稽古で土俵に上がるのはモンゴル勢ばかり。稽古場に来ない日本勢が勝てるわけがない」と現状を嘆きつつ「これが幕開けだと思って、オレもオレもとなってほしい」。若貴兄弟やハワイ勢に挟まれる中、3度優勝した元大関千代大海の佐ノ山親方も「気持ちしかない。技量はどっこいどっこい。ここが、今の日本人力士にとってはチャンス」と期待する。
NHKがテロップで琴奨菊の優勝を速報。「地震が来たのかと思った」と笑いながらも、九重親方(元横綱千代の富士)は「もっと日本出身力士が1歩2歩と踏み込んでチャレンジしないと。頑張って稽古しているのはモンゴル人力士」と厳しい。終止符は打ったが、モンゴル勢優位の潮目は「なかなか変わらない。白鵬も、まだまだ厳しい壁。日本人力士が一丸にならないと」と期待を込める。スポーツの世界では、1つのたがが外れた時、せきを切ったように流れが変わることが多々ある。ターニングポイントになるかは、和製力士の力量にかかっている。【大相撲取材班】