新潟名物「ドカベン像」存続の危機
水島新司氏側の撤去申し入れに市民「残して」

産経新聞
5月6日(水)配信


新潟市の中心部,古町の名物で,同市出身の漫画家,水島新司さん(76)の人気野球漫画「ドカベン」の像が存続の危機にひんしている。
水島さんの事務所側が「ドカベン」のキャラクターなどのブロンズ像を撤去するよう,所有者である「古町通5番町商店街振興組合」に申し入れている。
一方,新潟市や市民は存続を希望しているが,組合側も水島さん側も協議中だとしながら取材に応じておらず,ドカベン像の“現役続行”は不透明だ。

「ドカベン」はおよそ野球選手らしからぬ,ずんぐりした体型の捕手,山田太郎を主人公にした水島さんの代表作だ。
チームメートの岩鬼正美,里中智,殿馬一人らユニークなメンバーと高校野球で大活躍するストーリーは中年以上ならおなじみだろう。

市内中心部古町通の通称「ふるまちモール5」と呼ばれる約180メートル路上には,山田太郎とチームメートのほか,同じ水島さんの作品「あぶさん」の景浦安武,「野球狂の詩」の岩田鉄五郎,水原勇気をモチーフにした計7体が設置
されている。

市商業振興課によると,平成14年,中心市街地活性化策として同組合などが設置した。
設置費用は2100万円で,国と県が700万円ずつ,市が630万円を補助した。

このドカベン像は古町の名所として市民や観光客に親しまれているが,今年3月までに,水島さん側から組合に撤去の申し入れがあったといい,補助金の窓口である同課は「組合から相談があった」という。
一方,市文化政策課によると,水島さんのキャラクターは15年から市観光循環バス,登下校の児童生徒を見守る「子どもセーフティ・スタッフ」のジャンパー,市役所や新潟空港ロビーでの山田太郎“等身大”ボード,25年に開館した「新潟市マンガ・アニメ情報館」の展示コーナーで使用され,市は水島さん側に版権使用料を払っていた。

ところが,水島さん側から,版権管理業務を縮小する一環としてキャラクター使用契約の中止を申し入れてきたという。3月末を最後にこれらの契約が解除され,全て廃棄処分されている。

ドカベン像についてはこれまで「水島先生のボランティア精神」(新潟市)で使用料は発生しなかったという。

篠田昭市長は「新潟がマンガ・アニメのまちとアピールできる土台は水島先生が作ってくれた」と感謝を示した上で「新潟の活性化に欠かせないという声が強く出ているので,商店街の皆さんと水島事務所がしっかりと意見交換し,ぜひいい方向に落ち着いてもらいたい」と要望し,像の存続を願った。

実際に撤去する事態になった場合,篠田市長は「補助金の扱いはどうなるか」と述べるとともに,バスやスタッフジャンパーの契約とは性格が違うとの見解を示した。

古町通5番町商店街振興組合は「先方と協議中のため,統一見解として一切ノーコメントを貫いている」としている。水島さん側の弁護士も「報道されることを前提にお話しすることはない」と取材に応じていない。

市文化政策課の中野力(つとむ)課長(49)は「今後も水島先生にはラブコールを送りたい。新潟を代表する漫画家という思いは変わらないので,何らかの形で協力していただく場面があればお願いしたい」と話す。
中野氏自身も少年時代に「ドカベン」を目当てに毎週少年チャンピオンを読んで育ったといい,思い入れは深い。

「観光循環バスもそうだが,水島先生には過去に『にいがたマンガ大賞』の最終審査員も務めてもらい,市にいろいろと協力していただき感謝の思いはたくさんある」と特別な感情もにじませる。

ドカベン像の前を通りがかった中央区の主婦(67)は「キャーキャー言いながら女の子たちが写真を撮っているのがほほえましい」。
近くの商店の女性も「像がなくなると寂しい。撤去を望む人は1人もいないのでは」と話していた。

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文化遺産は残すべきだ。
人に愛されるモノを無くすことは損失である。
難しい問題はあるかもしれないが撤去しない方向でお願いしたい。

世論は聞くべし。