いろはうたう

いろはうたう

素敵なものが欲しいけどあんまり売ってないから小説を書いてます

 暗闇の中で蓮の蕾がゆっくりとほころび始める。それは見る者を幽世へ誘うように、咲いては閉じ、閉じては咲く。汚泥の底から生じた美しい花が、おいでおいでしている。どこから来て、どこへ行くのか、ぼんやりとそんなことを考えた。

 

 その花は、夜の帳が明けると共に姿を消した。目を覚ました私は、中国の古い寺院の中にいた。周りは静寂に包まれ、遠くから聞こえるのは木魚の音だけ。壁には龍が彫られ、その眼はまるで生きているかのように輝いていた。私は寺院を出て、霧がかかった山を登り始めた。山頂には古びた石碑があり、そこには「真実を知る者だけが、時を超える」と刻まれていた。

 

 日が昇り、私は次にインドの熱い砂漠に立っていた。砂の海を渡るキャラバンが見え、その中には色とりどりの布を身にまとった人々がいた。彼らは私に水を分け与え、一緒に旅をすることを提案した。私たちは古代の遺跡を目指し、途中で多くの神話を語り合った。遺跡には、太陽神を讃える壁画があり、その中に花が描かれていた。それはまるで、私が夜に見た蓮の花のようだった。

 

 夕暮れ時、私はエジプトのナイル川のほとりにいた。そこには巨大なピラミッドがそびえ立ち、影が長く伸びていた。川面には小舟が浮かび、漁師が網を操っていた。私はピラミッドの内部に入り、迷宮のような通路を進んだ。最深部には、ファラオの玉座があり、その前には蓮の花が一輪、静かに置かれていた。花は私に向かって微笑んでいるように見えた。

 

 私は蓮の花を手に取り、再び暗闇の中にいた。花は私の手の中で開き、光を放ち始めた。その光は、私を導くように、遠い過去と未来への道を照らした。私はその道を歩き始め、やがて、私がどこから来て、どこへ行くのかを理解した。

 

 そして私は目を覚ました。私の前には、開いた本があり、そのページには蓮の花が描かれていた。私が夢の中で見た蓮の花と同じだった。外はまだ暗く、星が輝いていた。私は、星々が語る物語を聞きながら、再び眠りについた。そして、新しい夢の旅が始まる。

 

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