【問】保護開始月の保護費の計算方法について教えてください。

 保護開始月の保護費の計算方法について教えてください。

 また、保護申請時に手持金(現金や預貯金)があるときは、生活保護開始月の保護費は、どのように計算されるのですか。

 

 

【答】

 保護開始時の保護費の計算方法や、保護開始時の手持金の認定方法について説明します。

 まず、生活保護の申請時に 手持金(現金や預貯金)があるときの保護開始時の保護費の計算方法ですが、 最低生活費(生活扶助、住宅扶助、教育扶助などの合計)5割を超える額が、手持金認定額として、生活保護開始月の保護費から差し引かれて支給されます。

 例えば、単身世帯の最低生活費が 105,000円(= 生活扶助 72,000円 + 住宅扶助 33,000円)手持金が 70,000円(= 現金 10,000円 + 預貯金 60,000円)としますと、最低生活費の5割は 52,500円(= 最低生活費 105,000円 × 5割)ですので、手持金認定額は 17,500円(= 手持金 70,000円-最低生活費の5割の 52,500円)となります。

 

 そこで、例えば、4月11日に生活保護を申請し、保護が適用になった場合ですが(生活保護が決定すると、申請日に遡って生活保護が適用されます。)、 4月分家賃が未納のときは、4月分の生活扶助費は 48,000円(= 1か月の生活扶助費 72.000円 ÷ 30日 × 20日(4/11~30))住宅扶助費は 33,000円(4月分家賃が未納のため 全額4月分保護費は 81,000円(= 生活扶助費 48,000円 + 住宅扶助費 33,000円)となります。

 つまり、月の中途で 生活保護が開始となったときに 保護開始月の家賃が未納のときは、厚生労働省 社会・援護局長通知 第7-4-(1)―イ 及び「別冊問答集」問7-13 (最低生活費の日割計算)により、保護開始月の家賃を支払う必要があるため、住宅扶助は 日割計算をすることなく、賃全額(上限額の範囲内)を支給することができることとなっています。

 

 しかし、手持金が 70,000円ありますので、このうち 手持金認定額は 17,500円(=手持金 70,000円 - 最低生活費の5割の 52,500円)となり、この17,500円を 4月分保護費は 81,000円から差し引きますと、実際に支給される4月分保護費は63,500円(= 4月分保護費 81,000円 - 手持金認定額 17,500円)になります。

 

 つまり、手持金が 最低生活費(105,000円)の5割の52,500円以下であれば、手持金認定額は0円になるため、支給される4月分保護費は81,000円(= 4月分保護費 81,000円 - 手持金認定額 0円)となりますので、手持金が 最低生活費の5割以下の状態で、生活保護を申請した方が、支給される保護費は多くなります。 

 しかし、 生活保護を申請して保護が決定し、実際に初回の保護費が支給されるまでの期間は、早くて 申請日から3週間後、通常 1か月程度を要しますので、手持金が、最低生活費の5割以下の状態で申請すると、保護費が支給されるまで1か月近くかかるため、生活に不安がある場合は、手持金が 最低生活費の6割~7割のときに、生活保護を申請した方がよいかもしれません。

 

 上記の事例は 4月分家賃が未納の場合ですが、 生活保護の申請時に すでに4月分家賃を支払っているとき、4月分保護費も変わってきます(4月分家賃は、通常 3月26日頃までに支払う必要がありますので、4月11日に生活保護の申請をした場合は、4月分家賃をすでに支払っている場合の方が多いと思います。)

 そこで、4月11日に生活保護を申請し、保護が適用になった場合で、4月分家賃をすでに支払っているときは、4月分の生活扶助費は 48,000円(= 1か月の生活扶助費72.000円 ÷ 30日 × 20日(4/11~30))住宅扶助費は 0円(4月分家賃が納付済みのため)で、4月分保護費は 48,000円(= 生活扶助費 48,000円 + 住宅扶助費 0円)になります。

 つまり、生活保護の実施要領(厚生労働省の通知)では、生活保護開始時に すでに家賃を支払っているときは、局長通知 第7-4-(1)―アにより、改めて保護開始月の家賃を支払う必要がないため、住宅扶助については、支給する必要はないこととされています。

 

 そのため、手持金が 70,000円のときは、手持金認定額は 17,500円(= 手持金 70,000円 - 最低生活費の5割 52,500円)となり、この17,500円を 4月分保護費は 48,000円から差し引きますと、実際に支給される4月分保護費は 30,500円(= 4月分保護費 48,000円 - 手持金認定額 17,500円)になります。

 

 ここで、注意しなければならないことは、手持金認定額の計算においては、生活保護の申請時に 保護申請月の家賃を支払っている場合でも、家賃を未納の場合でも 変更はない ということです。 つまり、生活保護の申請時に 保護申請月の家賃を支払っている場合でも、家賃を未納の場合でも、単身世帯の最低生活費が 105,000円(= 生活扶助72,000円 + 住宅扶助 33,000円)のときは、最低生活費(105,000円)の5割(52,500円)を超える額が 手持金認定額になります。

 

 また、生活保護を申請する時期は、給与や年金などの収入を受け取り、ある程度 それを使ったの方がよいと思います。 それは、生活保護を申請後に、給与や年金などを受け取ったときは、その給与や年金などの全額(ただし、給与は 基礎控除の適用、臨時的な収入は8,000円控除の適用があります。)を収入として認定され、その分を差し引いた金額が、生活保護費として支給されるからです。

 一方、給与や年金などを受け取り、ある程度 それを使った後で、生活保護を申請したときは、給与や年金などの一部を、すでに使ってしまっていて 手元にはないので、その全額を収入認定されることはなく、その残額を 手持金として認定されますので、減額される生活保護費が少なくて済みます(つまり、支給される生活保護費が多くなります。)。

 

 したがって、保護開始月の保護費を多く受け取るためには、

   給与や年金などの収入を受け取り、ある程度 それを使った

 ②  手持金(現金+預貯金)が 最低生活費の5割以下のとき、

   生活保護開始月の家賃を支払う(ただし、家賃の支払い期限は、前月の26日頃です。)

に 生活保護を申請したがよいと思います。

 しかし、 先に説明しましたとおり、生活保護申請日から生活保護費の初回支給日まで 早くて約3週間、通常1か月程度かかりますので、手持金が 最低生活費の5割以下で 生活保護を申請した場合は、生活費は2週間分しかなく、生活保護費の初回支給日までの間の生活が苦しくなるため、手持金が 最低生活費の6割~7割程のときに、生活保護を申請した方がよいかもしれません。

 

 

 

(参考)

〇厚生労働省 社会・援護局長通知

第7-4-(1)

 ア 保護の基準別表第3の1の家賃、間代、地代等は、居住する住居が借家若しくは借間であって、家賃、間代等を必要とする場合、又は 居住する住居が自己の所有に属し、かつ住居の所在する土地に地代等を要する場合に認定すること

 

 イ 月の中途で保護開始、変更、停止又は廃止となった場合であって、日割計算による家賃、間代、地代等の額を超えて家賃、間代、地代等を必要とするときは、1か月分の家賃、間代、地代等の基準額の範囲内で必要な額を認定して差し支えないこと

 

 

 

〇別冊問答集

問7-13 最低生活費の日割計算

(問)

 の途中での保護の開始や保護の変更にあたって、基準生活費その他月額で示されている最低生活費の認定は、すべて日割計算しなければならないか。

 

(答)

 実施要領に特別の定めがない限り 日割計算により認定すべきである

 実施要領の特別の定めとしては、次のようなものがある。

(1)各種加算の計上又は認定変更が、翌月から算定されることになっている場合

(2)受給中の者が月の中途で入院した場合の 入院患者日用品費の算定取扱い

(3)保護受給中の者が月の中途で介護施設に入所した場合の 介護施設入所者基本生活費

(4)教育扶助費

(5)住宅扶助費(日割計算による家賃、間代の額を超えて家賃、間代を必要とするとき)