【問】障害者加算の他に、重度障害者加算や 家族介護料というものがあるそうですが、その支給要件等を教えてください。

 

 障害年金1級を受給している場合で、障害者加算の他に、重度障害者加算や 家族介護料が支給されている人と 支給されていない人がいますが、どのような場合に 重度障害者加算や 家族介護料が支給されるのか 教えてください。

 

 

【答】

 「重度障害者加算」という名称は、生活保護手帳に載っておらず、告別表第1第2章-2-(3)において、「特別児童扶養手当等の支給に関する法律施行令 別表第1に定める程度の障害の状態にあるため、日常生活において常時の介護を必要とする者(児童福祉法に規定する障害児入所施設、老人福祉法に規定する養護老人ホーム及び特別養護老人ホーム並びに障害児福祉手当及び特別障害者手当の支給に関する省令第1条に規定する施設に入所している者を除く。)については、障害者加算とは別に 15,690円(令和6年7月以降)を算定するものとする。」と規定されており、これが「重度障害者加算」のことを指しています。

 

 この重度障害者加算は、昭和51年度に創設されましたが、各自治体の生活保護運用事例集・問答集等を見ると、取り扱いに差が見られます。

 例えば、「東京都生活保護運用事例集」では、身体障害者手帳1級を所持している場合は、重度障害者加算を支給していますが、他の自治体の生活保護運用事例集・問答集等では、身体障害者手帳1級を所持しているだけでなく、重度障害者加算の支給要件の「日常生活において常時の介護を必要とする者」とは、障害児福祉手当の認定基準同じですので、障害児福祉手当の診断書を取ってもらい、その診断書をもとに、障害児福祉手当の認定基準を満たす場合に 重度障害者加算を支給している自治体もあります。

 

 また、重度障害者加算の他に、「家族介護料」があり、「家族介護料」とは、告別表第1第2章-2-(4)において、告別表第1第2章-2-(2)のアに該当する障害のある者であって 当該障害により 日常生活の全て(具体的には 食事、排泄、入浴の3動作について介護を必要とするものを、その者と同一世帯に属する者が介護する場合においては、障害者加算とは 別に 13,150円(令和6年7月以降)を算定するものとする。」と規定されており、他の自治体の生活保護運用事例集・問答集等では、重度障害者加算と家族介護料の認定要件を混同しているものも見られます。

 

 つまり、重度障害者加算の認定要件日常生活において 常時の介護を必要とする者よりも、家族介護料の認定要件日常生活の全て(具体的には 食事、排泄、入浴の3動作)について 介護を必要とするものの方が 厳しいため、本来、重度障害者加算が支給されるべきであるにもかかわらず、誤って 家族介護料の認定要件が適用され、その結果、重度障害者加算が認定されてない自治体がありますので、注意が必要です千葉県の生活保護問答集」重度障害者加算の認定要件が、誤って 家族介護料の認定要件を適用しているようですので(そのため、本来であれば 重度障害者加算が認定されるべき人が、認定されてない事例があります。 この件については、このブログの読者の方から、情報提供していただきました。 なお、現在、この誤りが すでに訂正されているかもしれません。)、千葉県内にお住いの方は、担当ケースワーカーに確認した方がよいと思います。)

 

 なお、特別養護老人ホームや 障害者支援施設、救護施設などに入所している場合は、重度障害者加算は支給されません。 また、重度障害者加算は 入院中でも支給されますが、家族介護料は 入院中は支給されません

 

 また、令和6年10月に大阪府 堺市において、ある世帯で 家族介護料の支給漏れ17年間で 約246万円が見つかり、これを受け、再調査した結果、52世帯で家族介護料の支給漏れが見つかりました(次の「参考」の新聞記事を参照のこと)。 そのため、他の自治体においても、家族介護料等の支給漏れがあると思われますので、疑問があれば、担当ケースワーカーに問い合わせましょう。

 

 最後に、次の参考資料のとおり、令和7年度の「生活保護・別冊問答集」において、問7-23-2 家族介護料の認定-その2」新規追加され、その中で、「告別表第1第2章の2の(4)に規定する「障害により日常生活のすべてについて介護を必要とするもの」(注:「家族介護料」に該当するもの) とは 具体的にはどのような状況を指すのか。」という【問】に対して、厚生労働省は、「障害により 食事、排便、入浴の3つの基本動作のすべてについて介護を必要とする状況をいう。」と回答しています。

 

 

 

(参考)

〇告 別表第1第2章-2 障害者加算

(1)  (略)

(2)障害者加算は、次に掲げる者について行う。

 ア 身体障害者福祉法施行規則 別表第5号の身体障害者障害程度等級表(以下「障害等級表」という。)の1級若しくは2級 又は 国民年金法施行令 別表に定める1級のいずれかに該当する障害のある者(症状が固定している者及び症状が固定してはいないが障害の原因となった傷病について初めて医師又は歯科医師の診療を受けた後1年6月を経過した者に限る。)

 イ 障害等級表の3級 又は 国民年金法施行令 別表に定める2級のいずれかに該当する障害のある者(症状が固定している者 及び 症状が固定してはいないが 障害の原因となった傷病について初めて医師 又は 歯科医師の診療を受けた後1年6月を経過した者に限る。)。ただし、アに該当する者を除く。

 

(3)特別児童扶養手当等の支給に関する法律施行令 別表第1に定める程度の障害の状態にあるため、日常生活において常時の介護を必要とする者(児童福祉法に規定する障害児入所施設、老人福祉法に規定する養護老人ホーム 及び 特別養護老人ホーム 並びに 障害児福祉手当 及び 特別障害者手当の支給に関する省令第1条に規定する施設に入所している者を除く。)については、別に15,690円(令和6年7月1日から適用)を算定するものとする(注:「重度障害者加算」のこと)

 

(4)(2)のアに該当する障害のある者であって当該障害により 日常生活の全て(注:具体的には 食事、排泄、入浴の3動作)について介護を必要とするものを、その者と同一世帯に属する者が介護する場合においては、別に 13,150円 (令和6年7月1日から適用)を算定するものとする(注:「家族介護料」のこと)。 この場合においては、(5)の規定は適用しないものとする。

 

 

 

〇生活保護・別冊問答集

問7-23-2 家族介護料の認定-その2(R7年度 新規追加)

(問)家族介護料について

(1)告別表第1第2章の2の(4)に規定する「障害により日常生活のすべてについて介護を必要とするもの」とは具体的にはどのような状況を指すのか。

(2)障害福祉サービスを利用している場合にも家族介護料を算定するのか。

(3)被保護世帯に家族介護料の算定対象となる障害者が複数人ある場合はどのように算定するのか。

 

(答)

(1)障害により 食事、排便、入浴の3つの基本動作のすべてについて介護を必要とする状況をいう

(2)福祉サービスを受けていることをもって一律に認定できないものではないが、保護の実施機関において、同一世帯に属する者の介護の実態等を踏まえて適切に認定する必要がある。

 なお、同一世帯の世帯員が日常的かつ継続的に介護している場合に認定するものであること。

(3)同一世帯に属する者が複数人に対して介護している場合には、介護の対象となる障害者にそれぞれ加算を認定して差し支えない。

 

 

 

〇東京都生活保護運用事例集

(問6-25)重度障害者加算の認定方法

 重度障害者加算(告示別表第1第2章-2-(3))の認定方法について、示されたい。

 

 重度障害者加算は、特別児童扶養手当等の支給に関する法律施行令 別表第1に定める程度の障害の状態にあるため、日常生活において常時の介護を必要とする者について、算定するものとされている。 「別表第1」に定められた障害は、身障の1級及び2級の一部に該当するものであるが、それらの障害は介護の必要性という見地から選定されたものであるから、それらに該当すれば一般的に日常生活において常時の介護を必要とする者ということになる。 ただし、常時介護を要すると認められない場合は、主治医や嘱託医等の意見も踏まえて計上しないことができる。

 重度障害者加算は創設(昭和51年)当時、在宅重度障害者に対する「家族等」の介護需要に充てられるものと位置付けられていたが、現在は、何らかの形で他者からの支援が必要となる重度障害ゆえに生ずる「本人」の特別需要に対応するものと位置付けられるようになっている。

 また、入院した場合においても、「本人」の特別需要の程度には変化がないので、特別障害者手当の受給の有無にかかわらず、加算の認定を続けることになる(下記5に記載した施設入所の場合を除く。)。 重度障害者加算の認定に当たっては、以下のとおり取り扱う。

 

1 重度障害者加算を算定する者

(1)「特別児童扶養手当等の支給に関する法律」による障害児福祉手当 及び 特別障害者手当 並びに「国民年金法等の一部を改正する法律」による福祉手当(経過的福祉手当)の受給者

(2)身体障害者障害程度等級表1級の者

(3)東京都愛の手帳1度の者

(4)国民年金法施行令別表1級の年金受給者であって、① 精神障害者(知的障害者を除く)、 ② 腎機能障害者、 ③ 心臓機能障害者 及び  ④ 身体障害者障害程度等級表の1級と同程度の者

(5)特定障害者に対する特別給付金のうち、1級の支給対象者であって、上記(4)の①から④のいずれかに該当する者

(6)精神障害者保健福祉手帳1級の者(初診年月日から1年6月を経過した場合に限る。)

 

2 上記1以外の者は、保護の実施機関の指定する医師の診断書 その他の障害の程度が確認できる書類に基づき行う。

 

3 既に 障害を支給事由とする年金を受けているため、上記1の(1)にいう福祉手当が支給されない者であっても、要件に該当すれば加算を認定する。

 

4 精神的疾患の入院患者等、精神活動減退者の加算の認定については、需要の実態を把握し、必要性について検討の上行う。(告示別表第1第2章-9)

 

5 重度障害者加算の認定除外となる施設(平成28年度現在)

 障害児入所施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)、乳児院、児童養護施設、医療型障害児入所施設と同様な治療等を行う児童福祉法に規定する指定発達支援医療機関、障害者総合支援法に規定する療養介護を行う病院(療養介護を行う病床に限る)又は障害者支援施設、独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園が設置する施設、進行性筋萎縮症施設、国立保養所、救護施設、更生施設、医療法に規定する病院又は診療所であって、法令の規定に基づく命令(命令に準ずる措置を含む。 例:心神喪失等医療観察法に基づく鑑定入院命令、感染症予防法に基づく入院勧告、精神保健福祉法に基づく入院措置)により入院・入所している者について治療を行うもの

 

 

(問6-26) 家族介護料の認定方法

 家族介護料(告示別表第1第2章-2-(4))の認定方法について、示されたい。

 

 家族介護料は、重度障害者を介護している家族の介護の需要に対応させるとともに、その世帯の経済的負担を和らげて生活の安定を図らせることを目的としている。

 家族介護料を認定する場合の取扱いは、次のとおりである。

 

1 介護を受ける者の要件

 次の各号すべてに該当する者が算定の対象となる。

(1)告示別表第1第2章の2の(2)のア(障害等級表の1級若しくは2級 又は 国民年金法施行令別表に定める1級に該当する障害のある者)に該当する者

(2)食事、入浴及び排便の3つの基本動作すべて「日常生活のすべて」とみなしうる。)に介護を必要とする者

(3)居宅で保護を受給している者入院中は不可

 なお、(2)の3つの基本動作の確認については、医師の診断書等は必要なく、実施機関の判断で足りる。

 

2 介護に当たる者の要件(別冊問答集 問7-25)

 保護受給中の同一世帯員が実際に介護に当たっている場合に家族介護料を算定する。そのため、次の場合は算定できない。

(1)世帯分離され、保護を受けていない者が介護に当たる場合

(2)別世帯の扶養義務者が介護に当たる場合

 

 

 

〇多額の生活保護支給漏れか 重度障害の子2人抱えたシングルマザーに計600万円超  女性側は『行政は間違え得だ』と不服審査請求ヘ

                                                                                   MBSニュース 2024.10.10(木) 

 

 重度障害の子が2人いて、生活保護を受けている堺市の女性が、多額の支給漏れがあったとして、すべてさかのぼっての支給などを求めて、行政不服審査請求をすることがわかりました。

 女性側は「行政側はミスを犯しても何の不利益も生じない、いわば『間違え得』だ」と主張しています。

 

◆重度障害者に算定する加算がなかった…

 10月10日午後、会見を行った代理人によりますと、ミスがあったのは大阪府 堺市の2つの区です。

2007年から生活保護を利用してきた、ひとり親の女性は、障害のある子を持つ他の親と話して、自身の世帯の加算が少ないのではないかと疑問を持ち、ケースワーカーに伝えたのがきっかけでした。その結果 漏れていたという額は、

① 在宅の重度障害者に算定する「家族介護料」がなく、額は ひとりの子に対して 月12,200円x約17年で約246万円

 •もう一人の子に対して 月12,000 円×約5年で約77万円

② 子が施設入所してから「障害者加算」が削除され、額は 月22,000円×約11年で約299万円

 

◆「最低限度以下の生活を、子供たちに強いてきた事を申し訳なく…」

 支給が漏れた生活保護費は、17年で 総額約625万円に及ぶということで、堺市は 直近5年分の約212万円を追加で支給しましたそれより前は時効が適用されるとして、申請を却下したということです。

 女性側は、すべてさかのぼっての支給に加えて、遅延損害金の支払いも求めて、行政不服審査請求をするということです。

 女性は、「最低限度以下の生活を、多感な時期に子供たちに強いてきた事を申し訳なく、悔しさが拭えないです。」などとコメントしています。

 

◆堺市は「国の通知に基づいた判断」だが「当時の判断は厳しかった」と認める

 堺市の見解です。「家族介護料」については、当時「日常全てに介護が必要」という国の通知に基づいた判断だったとしました。

 市は申し出を受けて、「加算を認めないとした当時の判断は厳しかったと思う。」とし、追加支給したということです。

 そして、新たに堺市は今回の件を受けて、食事・排泄・入浴の介助を行っている場合は、『日常全て』とみなすとする統一の判断基準を決定して通知しました。

 その結果、支給対象と考えられる家が 52世帯あることが新たに判明したということです。 市はこうした世帯の状況を詳しく調べるということです。