みなさんこんにちは。
今回は本屋大賞を受賞し、山崎賢人さん主演で映画化もされた作品
羊と鋼の森
を読んで思ったことを簡潔にまとめていきたいと思います。
この作品は調律師の世界を舞台にしており、調律の仕事や個性的な先輩達との関わりを通して変化していく主人公の心情が見所です。
さて、この作品を読み僕がもっとも注目したいと思った点は「調律」という舞台設定の関係上、必然的にポイントになってくる「音」を文字で表現しきる作者の語彙の豊かさです。
僕は本を読む前、「音」を読者に伝えるなら文字の媒体ではなく、映画やアニメーションなどの耳に直接アプローチできる媒体のほうが優れているのではないかと考えていました。
しかし
この本を読んで考えは一転。
主人公が双子のピアニストの演奏を聞き分けるシーン
姉の演奏:「静かな、森の中にこんこんと湧き出る泉のような音色」
妹の演奏:「華やかで、縦横無尽に走る奔放さを持つ音色」
読者はこの2つの音を、音自体は聞いていなくとも作者の巧みな表現を通し頭の中でイメージし聞き分けることができる。姉は落ち着いた感じの演奏なんだな、対して妹は活発で明るい感じのピアニストなんだなと。たぶん姉は冷たく綺麗な音で......妹の方は...
そう、文字は直接的に耳に語りかけないため、読者は無限にその音を想像し膨らませることができる。
聞いたまんまの音ではなく、少しもやっとするこの感じ、この深みこそが文字で伝わる音の最大の特徴である。
これこそが文字で伝える「音」の良さなのだ。
単純に美しいピアノの音。
良い。
しかし文字を通した直接的な音ではない「音」
もまた面白いな、そう思わせてくれる作品でした。