売れっ子ミステリー作家原作の映画化、って
観れば観たでそれなりに面白いんだけども
ちょっと伏線やト書きが五月蝿い。
だったらドラマでよくない?映画はもっと、こう
フィルムの陰影で
ゆわさなきゃ。でも『秘密』の滝田洋二郎は
この小林薫の、うつろう視線は意図したとしても
ピンクあがりの苦労人で
ああ仕掛けてきてんな、と。昨夜の『おくりびと』の
ジップんとことかも。うんうんわかるよ、と微笑ましい。
湿度の高い現場で己の鬱屈を、べっとりと塗りたくる
ように仕上げてきた映画人にとって、陽のあたる場所で
資本と配役に恵まれ
メガホンをとれるって、仕掛けていいよの免罪符だ。
けどこれは不測だったにちがいない。
窓からの逆光線と、パジャマの色と素材と
広末涼子の蠱惑、と尖鋭に
淀み、泳ぎ、にどみ、一瞬挙動のバランスを見失う
大小林薫。映画の神様はいて
こうして「おくりもの」、刹那の配剤をくれる。
それなりに観てそれなりに面白かった『秘密』には
まだまだ秘密がかくされている。うん。きっと。