暑さを増す日々に、通り過ぎない梅雨。

湿度が高いのは苦しい。



夏は嫌いじゃない。

いい思い出が多いからかも知れない。



ふと季節的な匂いや色で、思い出が蘇る事がある。

その感覚が僕は堪らなく好きだから。



沢山の事が順調に進んでいても。

惰性に溺れた不安は拭えない。

将来を悲観したりする事はないけれど。



皮肉な事に、多数は上手く得てきた筈なのに。

僕にはどうしても手に入れられない、全てを引き換えにと願った事があった。

そのただ一つが。

潔い振りをしても、切ない心を見せてもするりと手から抜けていった。





今はもう割り切り、そして通り過ぎた。



涙は落ちなかった。

それでも悲しい気持ちに偽りはない。

いっそ自分の未練や醜い塊が、その水分で薄められる事があれば良かったのにとさえ思う。



相手の幸せを願うのが、最終的には正解だと思う。

自分がその未来に存在しないのならば。



でも、そこに辿り着くまでの時間は途方もない。

いつになれば、とさえ過ぎるそれは頭から離れない。



自分ではもう辿り着いていると思っているけれど。

痛みを感じたくないだけなのかも知れない。




夏は、そんな人との思い出が在り過ぎる。