皆さんは髪を切るときは何処へ行きますか。
私は丸刈りなので、美容室という洒落た所には行きません。大体自宅でバリカンです。
そんな私も時々理容室へ行きます。
男性の方は割と馴染みがあると思いますが、女性の大半は此れを利用したことが無いと思います。
私が理容室を利用する目的は髪を切ることだけでは御座いません。髪を切るだけであれば自宅風呂場で解決します。
顔剃りがあるからなんて方もいらっしゃいますが、そうでも御座いません。
理容室が私にとって特別な空間だからです。
遡れば私が幼い頃、今は亡き祖父と兄と日曜日に近くの理容室へ行っていました。
当時、日曜日のわくわく感と散髪後に貰える小袋のサッポロポテトがモチベーションでした。
当の散髪は長時間座っていることが億劫で今でこそ心地良い顔剃りも退屈なものでした。
祖父が亡くなり、祖母が亡くなり、親も、自身も歳を重ねてくると人というのはどうにも郷愁に誘われるものです。
祖父も居ない、サッポロポテトも貰えない、当時の理容室も無い、それでも無意識にあの空間を求めているようです。
私が好んで通うタイプはサインポールが立ち、見上げるとアナログの時計が時を刻む昔ながらの小さな店構えの理容室です。
大体そういった理容室は高齢の夫婦で切り盛りされていて、店内は生活感漂い、夫婦の軌跡を感じることが出来ます。
カット中も老夫婦の関係性を垣間見れます。恐らくそんな所に私の好きだった祖父母を感じるのではないかと思います。
そんな中、今日出会った理容室は矢張り老夫婦の営む小さなお店でした。
理容師にも色々なタイプがあり、多くの方は世間話をマイペースに織り交ぜ、仕事を進めていくタイプです。
今日は夫婦共にカットが出来るようで、奥様に担当して頂きました。
夫婦共々会話は少なく、淡々とカットしていきます。
店内はひょっとこのお面や民芸品、ミニカーが飾られています。
並べ方は実に整理されており、夫婦の几帳面さが伺えます。
こういったお店の定番である漫画にも余念がありません。
ゴルゴ13こそありませんが、キン肉マンやドラゴンボールといった定番が揃っています。
また、その横には美術関係の書籍があり、BGMにはオールディーズが流れています。
定番な理容室の中に垣間見える夫婦の個性的な空間があの頃に繋がっていくような感覚です。
バリカンが進む度、心は理容室というタイムマシンに乗り、あの頃へ誘われます。
コロナ渦以前から定番のこれでもかというくらいにボトルをプッシュするシャンプー、熱々のタオル、魔法の液体をかけた後の含気法でのマッサージ、、、、只々心地良い。
「お疲れ様でした」
の声で過去への小旅行から帰ってきます。
そんな小旅行に今日はお土産がありました。
「飲み物どうぞ」
とよく冷えた缶コーヒーを手渡されます。
形は違えど私のなかではサッポロポテトでした。
いつかcan太も連れていきたいと思う素敵なおっさんのタイムマシンでした。