茗荷谷だより ――がん治療日誌

茗荷谷だより ――がん治療日誌

私自身の大腸がんの治療日誌です

Amebaでブログを始めよう!

期間:6月4日(火)~6日(木)

投薬内容:
・第1日
 制吐剤(グラニセトロン・デキサート)
 オキサリプラチン(商品名エルプラット)
 レボホリナート(商品名アイソボリン)
 5FU(フルオロウラシル)急速投与
 5FU(フルオロウラシル)持続注入
・第2~3日
 5FU(フルオロウラシル)持続注入

※フォルフォックス治療法で用いられる分子標的薬ベバシズマブは、大腸の縫合部分への悪影響が懸念されるため、今回だけは未使用。次回から使い始める。





 今回は初回の抗がん剤治療ということで、前日の月曜から入院して行われました。
 先日終わった大腸がんの切除手術でも、創感染を起こして腹の開創部の痛みが激しくなったり、その後、急性腸炎を起こしてひどい下痢が続いたりと、各駅停車が続きました。そのため、抗がん剤治療に入っても、人一倍ひどい副作用によって大きな足どめを食うのではないかと懸念していました。

 不幸なことに、その懸念はやはり現実のものになってしまいました。
 1日目、5FUの持続注入に入ってからしばらくすると、右手親指と人差し指の先端にしびれを感じ、私が看護士さんに、「あ、早速しびれてきましたヨ」と言ったら、そんなに早く副作用があらわれるはずがないと思っていた看護士さんは、笑って取りあいませんでした。

 でも、右手指のその部位は、四半世紀以上にわたって私が腱鞘炎で苦しめられてきた、ポイントの場所の1つでした。通常、そういう弱い部分には過敏に反応があらわれるものです。今思い起こしても、あの右手指のしびれは抗がん剤治療の初めての副作用のあらわれだったように思います。

 そのしびれは奇妙な経過をたどりました。
 この日の夜、サッカーワールドカップ・アジア予選の日本vsオーストラリア戦があり、日本が勝つか引き分ければ予選通過という大事な試合でした。





 私も、病院の談話室のテレビで、他の入院患者と一緒に観戦しました。
 ゲームは全体に日本優勢で進みながらも、双方ノーゴールのまま後半戦に入り、ゲーム終了間際にオーストラリアが得点。ところが、ロスタイムに入って、オーストラリアの選手がペナルティエリア内でハンドして、ペナルティキック。これを本田選手が決めて(上写真)、1対1の同点でゲームセット。日本は予選通過して本選出場を決めました。

 このゲーム観戦の興奮がいい方向に働いたのでしょうか、ゲームが終わったとき、右手指のしびれはなぜかすっかり消えていました。
 ところが、それにかわって、大きな咳が立て続けに出るようになり、消灯時刻の10時には鼻水もずるずると出てきて、あっという間に本格的な風邪の症状になりました。

 あわてて洗面所で何度もしつこくうがいを繰り返し、マスクをかけて就寝しました。体を冷やさいことなどにも気をつけていましたから、今から考えても、それは抗がん剤の副作用の過渡的なあらわれだったのではないかと思います。
 翌朝目覚めてみると、咳はほぼとまったものの、ひどい頭痛になっていました。

 まだ5FUの持続注入の2日目でしたので、頭痛薬を服用するのは控えて、1日じっと安静に過ごしました。でも、その日1日、頭痛は続きました。
 3日目の朝6時半、目が覚めた途端、体の異変に気づきました。異様な吐き気と胃痛、そして胸全体が押しつけられるような痛み。立ち上がっても、腰を曲げて腹部をかばってしまうため、まっすぐ立てません。

 すぐ看護師に告げるものの、この朝の看護師も、第1回の抗がん剤治療でそこまでひどい吐き気が出るとは思っておらず、「もしかして、空腹感がきつくなっただけかもしれないわよ」と、私の言うことがどうにも信じられない様子。

 ペットボトルに白湯を入れ、ベッドに横になって少しずつ白湯を飲んだところ、胃痛は胃痛、胸の吐き気は吐き気ときれいに分離して、いよいよ増してくる痛みにベッドでうめき続けました。
 朝の回診で主治医たちがやってきて、事態が本当に副作用の出現であることが認知され、それからばたばたと、心電図検査・血液検査・胸部レントゲンで、副作用以外の他臓器の異常でないかをチェック、やはり副作用以外に考えられないとの結論が出たお昼過ぎに、ようやく制吐剤グラニセトロンを点滴してもらい、午後3時ごろ、一番の痛みからはどうにか脱しました。






 翌日、目が覚めたときには昨日とほとんど変わらない吐き気がぶり返していましたが、主治医は他の患者のオペに行ったきり、看護師もかまってくれず、午後になってようやくもう一度、制吐剤グラニセトロンを点滴してもらうと、どうにか吐き気がおさまり、あとは上半身のしびれと頭痛を残すだけになりました。


 抗がん剤の副作用って、一体何なのでしょう。
 吐き気や頭痛そのものが副作用なのでしょうか? それらは生体の異常に対する反応でしかないのでは?
 具体的にそれとゆびさせないまでも、吐き気や頭痛を引き起こす生体内の正常細胞の大量破壊こそ、副作用というものの本体なのでしょう。
 その意味でいうなら、制吐剤や頭痛薬で吐き気や痛みを抑えることは、「副作用」を抑えることを何ら意味していません。

 抗がん剤の「副作用」というのは、「副」という語が現実を隠蔽してしまう欺瞞語なのであって、その実態は「殺人作用」以外のなにものでもないのだと思います。
 それは生体の正常細胞を大量に殺してしまいます。抗がん剤とは、裏返せば、そのままで強烈な「毒薬」なのであって、それを《薬》として認定する世界の薬務行政には、「絶対安全」という安全神話を身にまとった原発行政とどこかしら共通点の感じられる欺瞞があります。

 問題は、原発にかわる生態系エネルギーのような対抗療法が、がん治療の分野では出現していないことでしょう。有力な対抗療法が生まれない限り、現代医学によるがん治療の独占体制は揺らぎません。
 民間療法でがんを治す《いかがわしい》医者は、今日の世界にもっとたくさん出現してよいように思います。抗がん剤という殺人薬をこの世から駆逐するためには、健全な民間療法の蓄積が大いに必要でしょう。

 らちもない雑談はさておき、まずは、自分の体に投与されたオキサリプラチンや5FUといった薬がどういうものなのか、少し勉強したいと思います。次回はこれらの薬について書いてみます。

 きょうはまだ入院したまま、体調と食欲がようやく戻ってきたので、この日誌をいささか記してみましたが、来週月曜に採血して血液検査の結果を見ないことには、退院許可が出ません。
 でも、入院生活にはもうとことんウンザリしています。シャバの空気が恋しい!

 この入院中に読んだテキスト:樋口一葉「たけくらべ」





Android携帯からの投稿