意識が戻ったのは翌朝のICUでした。
予期せぬ脳内出血で緊急開頭術が行われたためか、数名の医師がICUのフロアーで仮眠をとっているのが見えました。
立会人の話では、深夜のオペ室から連絡があり緊急手術への同意を求められたとか。
手術部位以外からの大量出血でした。
結局、ICUには24時間程度の在室で、病室に戻されましたが、もちろん身体を動かすこともできない状態でした。
小脳の一部を切除された影響か、脳の混乱が原因だろうと思いますが、幻視が現れました。
実際には無いはずのものが動いて見えるのです。
目の前の牛乳パックから、突然に枝が伸び来て、花が咲くと云うファンシーな状況。
他人に言っても、とても信じてもらえないだろうな。
小脳は高次機能には影響がないと聞かされていましたが、出血の影響で大脳が壊れたのかなと、少し落ち込みました。
術後10年余りが過ぎた今でも、時々、無いものが見えてきます。
視覚というものは騙されやすいものだなと実感しました。
抜糸が終わるころには、ようやく、壁を伝って歩けるようになりました。
そして大変な違和感。
鉛直方向の感覚が壊れているようでした。
身体が鉛のように重い。
おまけに自分の姿勢がどうなっているのか判らないのです。
走れるようになるのに1年、水たまりを跳び越すのに3年ほどかかりました。
今でもバスや地下鉄が急停車すると倒れます。
小脳を切ったからしょうがないと言えばしょうがないことですが。
しばらくすればこの不具合も代償されるだろうと思っていましたが、違ったようです。