もう15年も前のこと、研究室に入る前の大学生だったわたしは、期待するほどの授業がなく、机上の学問より世界へ羽ばたいて現場主体に学ぶことを夢見ていた。ちょうど時を同じくして、後の指導教官になる教授が、学術協定で交換留学制度があることを授業で紹介していた。その日は留学センターまで一目散に走って説明を聞きに行ったことを今でも覚えている。進路を選択するときは、いつでも胸が躍るくらいワクワクするものである。
国は環境先進国と言われるドイツ、学部の協定校はドイツには5校あり、その中から環境分野で有名なフライブルク大学を希望し、その一年後、念願かなって渡航できることになった。フライブルク市は、ドイツの南西部に位置し、フランスまで電車で30分、スイスまで40分、シュバルツバルト(黒い森)の麓にある。
黒い森は、自動車の排ガスに含まれる窒素酸化物や、自動車工場や火力発電所から発生する硫黄酸化物に起因する酸性雨によって、1970年代から1980年代初めに森林が枯死したことで有名な森である。現在、酸性雨の問題は、排ガス規制をかけたり、工場に排煙脱硫装置をつけたりして、1970年代に比べれば緩和されてきたが、1990年からは世界規模で気候変動問題ととらえ直し、今もなお全世界で課題取組の最中である。
一方、1970年代初めに市郊外での原発建設反対を掲げる市民運動から、1980年には緑の党が発足し、チェルノブイリの原発事故が起きた翌年1987年には連邦議会に入党、現在ではフライブルク市だけではなく、その州の党も議席が一位となっている。市は環境首都フライブルクとして、エネルギー、交通、廃棄物など、国内外からの環境視察が後をたたない。
学生街であるフライブルク市は、研究機関や学生の動きも活発で、多くのワークショップに参加できる。環境問題をテーマにした情報共有の場である学生サークルにも週に一回参加した。サークルのリーダーは、フライブルク大学の森林環境学部を卒業し、現在鹿児島で再生可能エネルギーの一つである小水力発電のプロジェクトを実施している。数年前に鹿児島を訪問すると、夫婦で着物を身につけ古民家にて出迎えてくれた。