A. ゲルラッハ「丸亀俘虜収容所より」


青島における信号柱のドイツ国旗が日本の軍旗に屈服せざるを得なかった、あの11月の日(=1914117日)以来、既に2年余りの歳月が経過した。青島の勇士達はもう2年以上、俘虜として日出ずる国に留まっている。戦争し、苦闘している故郷から何千マイルも離れて無為の生活を宣告され、妻子と、人生を生きがいのあるものとする全ての事から切り離されて、今や3年目にして4,000名の勇士達に授けられているのは、真に、羨むべき運命などではない。

 しかしそれでも我々にとっては嬉しい事に、日本国内の全11俘虜収容所から出された多数の手紙から、我々の在日俘虜の運命をそう悪くはないと言えることが読み取れる。特にここでは、全収容所が南日本に、それ故に気候上健康に良い地域に位置していて、大抵は魅力的な風景を伴う場所にあるという事情も作用している。自然の美しいことで有名な(瀬戸)内海にある四国という島だけでも収容所が三つも設けられている。その一つの丸亀収容所を添付した写真が我々に一瞥させてくれる。

 かつては有力な大名の居所であった丸亀は現在、守備隊が駐屯する小都市であるが、天然の良港を有するが故に若干の重要性を獲得している。広大な寺院施設を伴う、手入れの行き届いた公園では1914年の11月以来、活気のある営みが盛んである。ここには青島海兵大隊の2中隊、後備中隊と現役中隊が俘虜として収容されている。

 快適な家庭と尊敬される地位を投げ捨てて軍旗の下に馳せ参じた後備兵達には大抵十分な金銭収入の自由が認められている。日本人は中国、並びに青島における預金・貸し金を俘虜達に対して封鎖していないからである。

 戦友精神が良好であるので、資産のない何人かの者は収容所内で援助されており、若年兵達は、靴磨きや継ぎ当て、靴下編みによって、タバコや果物等に使う小銭を稼ぐ機会も利用する。

 食事は十分で栄養があると言えるが、米と豆が頻繁に献立に上がるので、変化に乏しい。宿泊室として多数の別棟のある寺院が用いられているが、ここでは全く日本式に床の上に寝床がしつらえられる。器用な人々はビール箱から寝台や机、椅子、戸棚までも作り上げた。これらの家具は日本の家には知られていないからである。

 日本の当局の側から我々の同国人にはいかなる労働も要求されはしないそこで人々は体操や格闘技、こぶしバレーボール、打球技によって体を鍛え、そして英語やフランス語、日本語、中国語の外国語コース、並びに簿記、さらには演劇やコンサート、読書によって退屈しのぎをしようと試みている。

 収容所内では独自の新聞が発行されていて、人のよく集まる情報コーナーで各人は巨大な軍用地図によって当方の戦線の状況について知識を得ることができ、またそこでは戦争に関する最新の電信情報を知ることもできる。

 特に喜ばしい事として強調すべきは、検閲の点で日本人が非常に寛大なことである。ありとあらゆる日刊紙以外に戦争小説やスウェン・ヘディンの著書、『ユーゲント』と『ルスティゲ・ブレッター』の戦争特集号も、いやそれどころかゴットベルクの『青島の勇士達』さえも日本の検閲を無事に通過して俘虜達の手に届き、大喜びで迎えられ、受領が通知された。

 日本ではタバコに200%の関税がかかり、それ故に普通のタバコ1本の価格は既に平和時に50プフェニッヒに値上がりしていたが、日本人は慰問のタバコを完全に無税で通してくれる。あちらで歓喜をもって迎えられる、そのような発送物も速やかに到着する。

 俘虜達には月に2通の手紙と2通の葉書を出すことが許されている。しかし軽率な戦友達の逃亡の企てによって日本人の不信感が喚起された時には発信制限もなされた。

 他の10収容所における暮らしや営みも丸亀におけるのと似たようなものである。ただ比較的小さな収容所の俘虜達の方が大抵は多くの自由を享受している。大阪では2面のテニスコートが大いに喝采を受けたので、ボウリング愛好者達もそこでボウリング場の建設に着手し、そして大阪収容所の合唱団は既に大きな名声を手にしていて、最大の収容所である久留米の演劇によってのみしのがれるかも知れない。久留米では『アルト・ハイデルベルク』が数え切れない位何度も上演され、日本人自身もそれを心から喜んだのである。

 親類や友人があちらにいるのを知っている全ての人々の慰めとして、いずれにしても真に当然の事ながら主張できるのは、日本人は俘虜達を文明国の一員として扱うことを心掛けていて、このような処遇の点では、我々の青島戦士達にとっては幸いにも、日本人はその全てのキリスト教徒の同盟国を恥じ入らせるということである。


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A. ゲルラッハ「丸亀俘虜収容所より」