毎度ありがとうございます。

さてさて。

令和6年（2024）

7月5日のこと。

早朝の仕事を終えてから

もろもろの用事を済ませて

やってまいりましたのがココ。

はい。戸部。

おそらく20年ぶり。

なぜ

ここを訪れたかというと……

はいはい。

『すずきじゅんいち監督の映画祭』

の最終日を拝見するため。

最終日にしたのは

とくに理由はなく

スケジュールが

この日しか空いてなかったから。

すずきじゅんいち監督とは

とある演芸会の打ち上げの席で

いろいろと

貴重なお話をうかがい

その際に上掲のチラシをいただきました。

このところ

映画は年に一回見るかどうかで

「これはいかん」

と思っていたところでしたから

こういう機会を

逃してはいけません。

さっそくチケットを予約して

やってまいりました。

前掲の戸部駅から

裏道をくねくねして

雰囲気のいい商店街に

たどりつくと

その裏通りの住宅街に

会場がありました。

はいはいはい。

シネマノヴェチェント。

座席数28という

まるで小劇場のような映画館ですが

座席シートは本格ですから

この会場の小ささは

かえって

贅沢な空間を演出しています。

で、僕のお目当ては

『秋桜』（1997）。

1997年といえば

僕は大学2年生。

毎週火曜日の朝に

『ぴあ』を買い

2時限目の『哲学概論』の授業中に

めぼしい作品をチェックし

毎週のように

映画館に通っていた僕としては

『ぴあ』の誌上にあった

『秋桜』というタイトルと

このポスターがなつかしい。

当時は拝見しませんでしたが

「あ！そういえばこの作品の紹介を『ぴあ』で見たなぁ！」

ということで

さまざまな作品の中から

今回、『秋桜』を拝見することにしたのです。

で、見てみて……

社会性と

エンタメ性の

ギリギリのところを

ピンポイントでついてゆく

バランス感のある作品で

安心して泣くことができました。

当時17歳の小田茜と

15歳の松下恵を中心にして

展開していきますが

ふたりの素直な演技が

当時は「当たり前」だったのでしょうが

現在見ると実に「新鮮」でした。

最近では

10代になるやならずの子供が

オトナ顔負けの

ヒネた演技をしたりしますが

僕は感心しません。

その点

小田茜も松下恵も

教わったことを

教わったとおりにやる

いい意味での

「おしばい感」があり

この感覚は

現在ではあまり好まれないのでしょうが

僕は好感が持てました。

技術なんてそのうちついてくる。

10代ならば

これだけできれば十分です。

とくに

よくできたのは

当時15歳の松下恵。

感心したのは最終盤。

エイズによって

とうとう

死んでしまった明子（小田茜）

の遺体の前で視線を落としているときの表情。

この表情を見たときに

「あ！夏実（松下恵）は明子の死を以て大人になったんだ」

と思いました。

前のシーンとは

明らかに違う人間に

なっていました。

女の子は何も

色恋だけで大人の階段を

のぼるわけではない。

この表情を

スクリーンで見ることができただけでも

戸部までやってきた

甲斐はあったと思います。

総じて

この作品で

松下恵はよくやっていたと思います。

主人公の明子（小田茜）の

心情ならまだしも

その明子を見送らなければならない

夏実の心情を

15歳で理解するのは

大変ですよ。

その心情を

表現しやすいように書いた

脚本も見事なのでしょうが

役者も頑張ったと思います。

松下恵本人も

相当苦労したのではないでしょうか？

その苦労が

「山倉夏実」という役とリンクして

あの表情になったのではないでしょうか。

ともあれ

あの表情は

15歳のものとは思えない

見事なものでした。

その脇を固めるのが

山岡久乃、宍戸錠、藤田敏八、夏木マリ

といったビッグネーム。

この人たちだけでも

渋くてイイ映画が

一本撮れそうなメンバーですが

この人たちが

持ち前のアクの強さを封印して

出過ぎない、行儀のいい演技で

若いふたりを守り立てました。

さすがにみなさん

こういう映画の性質を

よくわきまえていらっしゃる。

ボードビルショーの石井愃一も

切ってはめたような仁でした。

内容としましては

「輸血によってエイズになってしまった少女」

をめぐるさまざまな人々の思惑。

主人公の園田明子（小田茜）が

エイズなので

そこを中心にして物語が

展開していくのは当然なのですが

極力、さまざまな立場の人間の

思惑を取り込んでいるのが

ただのエンタメでは

終わらなかった要因ですね。

いろいろな見方ができるでしょうし

実際にいろいろな見方があったでしょう。

それでいいのではないかと思います。

むしろ

そうでなければいけないと思います。

「問題提起」の作品だと

思いますので。

議論が起きれば

それで成功なのだと思います。

以上

感想はサラリと書く予定でしたが

1年半ぶりの映画館でしたので

丁寧に見ることができ

思わず長くなりました。

会場では

おなじみ田辺凌鶴先生と

偶然の遭遇。

都内ならともかく

このような場所で……

うれしい偶然でした。

次回もよろしくお願いします。

☆鶴　祥一郎作品上演のお知らせ★

◎電子書籍新刊販売中！

『歌舞伎脚本集』

『鎌倉山離愁赤橋』『二度の仇討』『松山城風流合戦』

の3作品を収録。

定価600円

以下は『歌舞伎脚本集』の分冊版です。

歌舞伎脚本『鎌倉山離愁赤橋』

（平成22年度国立劇場歌舞伎脚本募集佳作入選作品を再編集）

定価250円

歌舞伎脚本『二度の仇討』

（書き下ろし）

定価250円

歌舞伎脚本『松山城風流合戦』

（平成30年度国立劇場歌舞伎脚本募集優秀作入選作品を再編集）

定価250円

◎おかげさまで

視聴回数800突破！（令和4年6月7日公開/令和6年3月1日現在）

令和3年11月13日初演

浪曲『近藤勇のぼんやり女房』

（口演・東家志乃ぶ/三味線・伊丹秀敏）

がついにYou Tubeで公開！

志乃ぶさん前座時代の

貴重な映像ですよ！

以下のリンクから

ぜひぜひご覧くださいませ！

東家志乃ぶ『近藤勇のぼんやり女房』

◎鶴　祥一郎からのお願い◎

アメンバー申請を

される際には

コメント欄

もしくは

アメブロの

メッセージ機能で

必ず

メッセージをひとこと

お願いします。

無断でのアメンバー申請は

一切受け付けませんので

ご理解、ご協力の程よろしくお願いします。

（Twitterのメッセージ、Facebookのメッセンジャーでの「ひとこと」も歓迎です）

第2243回 すずきじゅんいち監督の映画祭

第2243回　すずきじゅんいち監督の映画祭